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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.12.2 ■■■

書事連句

【平康坊東五条菩薩寺】[續集卷五 寺塔記上][→]については、玄宗の宮廷画家である超有名人の呉道玄作寺院壁画の話を取り上げた。[→]

その続きでもないのだが、直後に収載されている連句を紹介しよう、と簡単に言えればよいのだが。

実は、コレ、さっぱりわからぬのだ。従って、ホッタラカシにするしかあるまいと思っていたが、考え直し、滅茶苦茶でも読み取ってみるか、といったところ。・・・

辭。
書事連句:

"寺院内での衆徒群議の決議文"の「コト書」風に詠んでみようではないか。

悉為無事者,任被俗流憎。(夢復)
悉く、コトに係わらぬ者になりはててしまった。
俗の流れを被る輩とみなされ、
 …在俗10年
憎まれ者にされたのだが、
言わせておけと、放任。
 …"譬喩如臭泥中生蓮花。"
客異幹時客,僧非出院僧。
(柯古)
寺の客であるが、勝手な時にやって来る客とは異なる。 …俘
寺の僧であるが、寺院から外出できる僧でもない。

遠聞疏磬,曉辯密龕燈。
(善繼)
遠くから聞こえるのは、粗末な窓から流れてくる声明。
暁に弁ずるは、密教の世界。
仏像をおさめた厨子に燈を灯して。

歩觸珠幡響,吟窺水澄。
(夢復)
歩き回っては、数珠や幡旗の響きに触れ、
吟じては、鉢の澄んだ水を窺う。

句饒方外趣,遊社中朋。
(柯古)
句を詠めば、異国の趣きが有り余るほど。 …亀茲国文化の香
遊べば、教徒たる朋友達を大いに満足させる。

靜裏已馴鴿,齋中亦好鷹。
(善繼)
静粛な庫裡では、鳩の馴練に没頭。
齋の最中でも、鷹と過ごすのを好んだ。

金塗筆是,彩溜紙非潤B
(升上人)
使っていたのは金泥塗りの筆だが、軽妙な衣のようなもの。
彩色した溜め作りの紙は、まさに絹生地の雰囲気。

錫杖已克鍛,田衣從壞
(柯古)
錫杖は、鍛造がなされ、ほとんど完成していた。
袈裟は、田圃模様だが、畔を破壊したように作られた。

占床慚一脅,卷箔ョ長肱。
(善繼)
寝床に於いては片脇を下に横になり、自分を見つめる。
簾を巻きあげ、伸ばした腕を枕にして。
 …"卷箔嵐煙潤"[全唐詩]
佛日初開照,魔天破幾層。
(柯古)
仏陀の言葉たる陽光が初めて世の中を照らし、
魔が支配していた天も、幾層に渡り次々と破られていく。

咒中陳秘計,論處正先登。
(善繼)
咒に於いては、密教ならではの秘計を陳述。
論処では、正に先に登った師と言えよう。

勇帶綻針石,危防丘井藤。
(升上人)
"勇"なるかな、ほころびた針石の携行。 …鍼灸用石製針
"危"なるかな、丘井における龍の上昇防止。
 …"是身如丘井,為老所逼。"[維摩經方便品] 藤=艸+滕[=水+朕]

上記のように記述すると、この連句の意図をどうとらえたかがおわかりになれると思う。
これは、中国に仏教を"まともな形"で経典漢訳を行った印度中觀派の鳩摩羅什の遺徳を偲んで詠み合った詩と見たのである。(その後の玄奘の貢献で影が薄いとはいえ、仏教徒にとっては偉大なる恩師そのもの。)

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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