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■■■ 「日本の樹木」出鱈目解説 2014.9.1 ■■■

白色乳液を出す聖なる樹木

枝や葉を傷つけると,白色乳液がでるのはクワ科イチジク属の特徴だという。800種もあるそうだが、熱帯/亜熱帯系の植物のようだ。

もちろん、イチジクも日本国外産である。
日本は気候上、乾燥させるのは難しいからもっぱら生食。このため歴史は浅い。
   無花果の話[2008.7.29]

そんなこともあって、日本語の種名が用意されているものは少ないようだ。
 イチジク[無花果]/Fig tree
 大葉イチジク[大果榕]/Indian big leaf tree
 −[高山榕]/Lofty fig tree
 −[鷄子榕]/Drooping fig tree
 −[硬皮榕]/Calloused fig tree
 −[対叶榕]

谷中のレトロなお店で知られるゼリー菓子の原料である、オーギョーチ(愛玉子)も、似たような果実らしいが、もちろん台湾産。日本産の蔓性イタビカズラのお仲間らしい。
 木蓮子蔓
 大木蓮子/Creeping fig tree
 姫木蓮子
 寒天木蓮子[オーギョーチ:愛玉子]@台湾

日本産は、もっぱらイヌ枇杷系統だらけで、実が食用になるものもあるようだが、わざわざ栽培する人もいまい。
 狗枇杷[天師果]
 大葉狗枇杷[稜果榕]
 浜狗枇杷[島榕]
 細葉狗枇杷[菲律賓榕]
 無垢狗枇杷[澁叶榕]
尚、小生は初耳だが、アコウという、日本変種(var. japonica)もあるそうだ。てっきり赤穂という地名かと思いきや、中国の属名【Ficus 薔薇目桑科無花果族属】の赤色バージョンということのようだ。
 アコウ[華麗榕]/Sea fig tree

まあ、日本におけるイチジク類は栽培品「無花果」と観葉植物といったところか。
インドゴムノキ、ベンジャミン、ガジュマルは室内装飾の定番に近い地位を獲得していると見てよさそうだから。
 印度ゴムの木[印度膠樹]/Indian rubber tree
 ベンジャミン[垂榕]/Java willow
 ガジュマル[細葉榕]/Chinese banyan
どれも、いかにも南の樹木の様相を呈しているが、奇妙な形に成形されているものもあるのが一大特徴である。

何故、そんなことができるかと言えば、気根があるから。それを整形しながら伸ばせば、幾何学的な幹ができる訳である。

小生は、そのような飾りモノは好かないが、特別な由来があるのかも。
と言うのは、ガーデニングショップに、ベンジャミンはインドとネパールでは聖樹であり、観葉植物として部屋に置くと幸運を呼び込むという宣伝文句が書いてあったから。

おそらく、このような整形が可能であることが、聖なる樹木たる由縁でもあろう。もちろん、成形した観葉樹が聖木と言う訳ではなく、大きく育った自然木の方だと思うが、木が発する「力」という観点では同じことが言えるからだ。
ベンジャミンやガジュマルは見かけからして異様感を与えることがあるのだが、それは気根の存在。その気根だが、幹に絡まりつくと、絡まれた方は枯れてしまう。それが自分自身のこともあるが、それでもしぶとく生きていけるのが、この木の一大特徴。・・・つまり、蛇の狩猟方法と同じで、強く巻き付いて息を止めてしまうのだ。そうなると、蛇神信仰篤き地での長寿の樹木は、蛇神の表象としては最良ということになろう。
それに、白い乳液を出すことも、尊崇にとって重要なこと。こちらは、母なる大地信仰の表象となりうるからだ。そのような植物としては、イチジク属以外では、稲と椰子の実くらいだろう。実際、インドにおいては、神棚に、注連縄にぶる下げた稲の穂と椰子の実が供えられるとか。詳しいことはわからぬが、麦文化のアーリア系ではなく、土着のドラヴィダ系の古代から連綿と続いている習俗だろう。

言うまでもないが、イチジク属の聖木はベンジャミンが代表という訳ではない。
釈迦牟尼が悟りを開いた木は真っ先に上がる筈だ。
 印度菩提樹/Bodhi tree or Pipal
英語名から見て、以下も聖木扱いされている可能性は高かろう。
 菩提樹/Mock Bodhi tree
 コップ菩提樹/Krishna's cup tree
ヒンズー教では、"Banyan"は、ヴィシュヌ神の化身クリシュナ神[黒天]の休息の地でもあり、ヒンズー教徒はお供えを欠かさない。それに、大蔵経にもしばしば登場するそうだ。どちらの宗派とも無関係そうな、香港新界の天后廟側にある「林村許願樹」も信仰対象となっており、木霊が住んでいる感じがするのだと思われる。フィリピン神話でも、悪霊を含め、様々な神霊が存在する樹木とされているそうだ。グアムのチャモロにとっても聖樹だというから、海の交流がありそうな感じがする。
 ベンガル菩提樹/Indian banyan tree

菩提樹以外では、忘れてならないのが優曇華。三千年に一度開花し金輪王が現世に出現するという伝説的な樹木である。比定されている木には立派な名称はついていない。
 房成りイチジク/Red river fig tree
それと、もう一つありそう。共産党の拠点都市だから、信仰の背景はさっぱりわからぬが、"Ficus lacor"が重慶市の市木となっている。北魏の地理書「水経注」に銅鑼峡の景観として記載されているという。

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