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2003.4.21
 
 


財政破綻(1:日銀だのみ)…

 2003年4月18日、自民党のデフレ対策特命委員会が株価低迷に歯止めを掛るための新経済対策の検討項目をまとめた。
 予想通りの施策が目白押しだ。(ブルームバーグ/相沢英之委員長記者会見 http://quote.bloomberg.com/apps/news?pid=80000004&sid=az0hZglgIDg4&refer=top_mof)

 なかでも、株価対策は圧巻だ。
 最初は、業界指導だ。厚生年金基金に、代行運用で保有している国内株式を「できるだけ売却しないよう」求める。
 次ぎは、恣意的な方針変更である。厚生労働省には返上を前倒しさせ、「代行返上売り」抑制を図らせるという。おそらく、現物株のまま、すぐに引き取れということだろう。
 さらに、国による株式市場への介入を図る。郵便貯金/簡易保険の資金を株式市場に注ぎ込む。日銀にもETF(指数連動型上場投資信託)等の購入や、銀行保有株式購入の増額を迫る。売り圧力になる政府保有株式(JT、NTTなど)は売却を凍結する。

 まさに、市場主義の対極ともいえる施策のオンパレードだ。国家が市場に介入して株価を支える。

 経済3団体の提言とは思想が違う。
 売り手は健在化しているのに、買い手は今のところ日銀と企業の自社株買い以外に見当たらない。そこで、一般人の株式保有インセンティブ税制を導入するように、経済界は政府に要求したのである。市場健全化に寄与する政策を急いで出すことが、市場の信頼感を高めることに繋がるとの発想だ。

 ところが、産業界との太いパイプを誇る政治側の思惑は全く違う。国の力を総動員して、ともかく株価低落を抑える。株式市場の健全化などどうでもよい。株価低迷による減益回避ができればよいのである。今まで繰り返してきた、「民の官へのぶらさがり政策」といえよう。

 同日、相沢英之議員は、衆院財務金融委員会で日本銀行の福井俊彦総裁に、銀行保有株買入額拡大、銀行株買入、ETF購入を求めた。これに対して、「日銀が株価を買い支えるために株の買い入れが可能かというと、かなり難しい問題を含んでいる」との回答がなされた。
 当然の対応だろう。日銀は金融システム安定の役割を担っているが、株価の番人ではない。銀行保有株買入は、銀行経営安定の緊急措置としてはあり得るが、銀行保有株銀行株の買い支えや、ETF購入は、全く別な目的の施策だ。

 とはいうものの、日銀はリスクが高い株式市場に直接かかわらない、と述べた訳ではない。
 別な議員の質問に対して、「伝統的に中央銀行が行うであろう範囲を超えて、・・・高いリスクを取って踏み込まなければならないだろうし、・・・現に相当程度そういう状況に直面しているのではないか」と語った。 (ブルームバーグ/衆院財務金融委員会議事 http://quote.bloomberg.com/apps/news?pid=80000004&sid=a9m9JMWI.A7w&refer=top_mof)

 いよいよ、日銀は、一線を越えるつもりのようだ。中央銀行が「ハイリスクな賭け」に出る。
 日銀もすでに無理を重ねており、自己資本比率は8%を切っている。ここで賭けに失敗すれば日銀券の信用は失なわれる。そうなれば、一挙に国家破綻だ。
 政治は変わりそうにないから、日銀の「ハイリスクな賭け」以外に手の打ちようがないのだ。 


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