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2003.5.3
 
 


理解不能な特許調査報告(2:ナノテクノロジー)…

 ナノテクノロジーに関する特許調査報告概要も、理解し難い記述だ。(http://www.meti.go.jp/kohosys/press/0003959/0/030424gijutudoko.pdf)

 基礎と応用をまぜこぜにした議論がなされている。

 特許件数が意味を持つかどうかは、分野の特性で大きく変わる。基礎研究の段階では、件数でなく、基本特許を押さえるかが重要である。
 基礎研究前期なら、研究論文の数の方が重要である。学術分野での流れが、研究方向を左右しかねないからだ。一般に、たった一つの技術で産業応用を図ることはできないから、様々な技術分野からサポートを得るためには、技術展開で主流派として認知される必要がある。注目を浴びない技術は産業化が遅れてしまう。
 基礎研究後期になれば、基本特許とそれに付随した特許パッケージ群を所有できるかが、勝負の分かれ目になる。単純な数ではなく、包括性である。

 一方、応用開発段階に入っていると、こうした視点で競争力を判断すると読み間違いかねない。一端、技術の利用場面が決まれば、数々の新しい試みが始まる。当該分野の特許件数は応用進展の度合いとほぼ比例する。従って、特許数がトップなら、技術競争力も強いと見て間違いない。
 といっても、前期と後期では異なる。
 応用開発前期では、真っ先に開けそうな分野で先鞭をつけることが重要だ。散漫に広く特許を出すような動きは産業の勃興に繋がらない。
 応用開発後期になると、利用が広がるから、周辺特許を含めた特許件数を競争力の指標とした方が、実態を反映する。

 このように、対象とする技術の発展段階で、見方が違ってくるのである。

 ところが、報告書には、こうした観点が全く感じられない。

 誰が考えても、「量子効果マテリアル」は実用化にはほど遠い。基礎研究段階の前期である。特許出願件数で比較したところで意味があるとは思えない。基本特許といえそうなものがあるのか、の判断が最重要である。

 「ナノ微粒子」も基礎研究段階だろう。出願数で日本が劣位だから、特許出願しろと提言するが、正しい方針だろうか。基本特許の確立以後か、以前かの判断もせずに、このような主張ができるものだろうか。  この分野は、日本は論文数が多いという。それなら、もしかしたら、日本は基本特許を保有しているのかもしれない。基礎研究段階なら、出願数などどうでもよいではないか。

 一方、「ナノチューブ」では、次々と応用が始まっている。材料も市販されている状況だ。
 当然ながら、市場開発の競争が焦点になっている。基礎研究とは全く違うのである。
 このような場合、開けそうな分野での特許数がどうなっているかを知るっことが決定的に重要である。「ナノチューブ」全体での特許数を見ても意味は薄い。先に突破して、市場を創出できるかの競争に勝てなければ、この分野のポジションを失いかねないからだ。
 従って、日本が強いといっても、その根拠ははっきり記述しない限り、判定への信頼感は乏しい。基本特許を所有しているのか、市場が開けそうな分野で製造から適用方法まで広く特許が出されているのか、の記述が不可欠なのである。・・・「特許を見ると、全般的に欧米より先を進んでいるようだから、さらに頑張れ」とエールと送るだけでなければよいが。というより、この報告書を用いて、何をするつもりなのか、不安がよぎる。

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   ・「理解不能な特許調査報告(1:ライフサイエンス)…」へ (20030502)


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