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2003.12.11 |
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***イラクに関する政策論議が盛んだが、大きな流れを見て対応を考える必要があろう。その場しのぎや、情緒的対応だけは避けて欲しい。*** 戦争の時代 3:アゼルバイジャンの火種…石油資源の争奪戦が内乱の引き金になると述べた。→ 2:資源争奪戦 カスピ海地区では、おそらく、内乱は避け難いと思われる。 海底に眠る原油の所有権を巡って、今後も、冷戦時代さながらの代理戦争が始まる雰囲気が濃厚である。 すでに、混乱のさなかにあるのが、原油生産国アゼルバイジャン(Azerbaijan)と、その隣国グルジア(Georgia)、アルメニア(Armenia)である。 これらはロシア赤軍が人工的に作ったコーカサス国家群である。スターリニズムの原則にのっとり、宗教活動と民族独立運動を徹底弾圧したから、その後遺症が残っている。しかも、グルジアがスターリンの出身地であることでもわかるように、軍事独裁体制を政治の基本原則と考える政権が多い。 お蔭で、この一体は、火薬庫そのものである。コーカサス山脈の南側の、アゼルバイジャン、グルジア、アルメニアの3つの独立国で戦乱が勃発しただけでなく、北側のロシア領のチェチェンも政情不安なままである。 (ロシア側にはスンニ派回教の共和国が並ぶ:タゲスタン、チェチェン・イングーシ、北オセチア、カバルジノ・バルカル、カラチャイ・チェルスク) ソ連崩壊にともない、変化したのは中央から地方に権力が移行しただけで、根本的に政権構造が変わった訳ではないから、矛盾が一気に噴出しているのだ。 スターリニズム国家では、イデオリギー政治が貫徹できるように、宗教と民族が混ざるように地方国家の線引きを行なってきた。そのため、元からの線引きを変えずに独立を図ると、国家としてのアイデンティティを欠くことになりかねない。しかし、地方権力者は権益保持のためには、独裁を保ちながら独立するしかない。その結果、民族ナショナリズムを煽ることになる。 ところが、国内には異質な民族や宗教が混ざっているから、必ず内紛を呼ぶ。旧ソ連の独立国の多くが、この問題を抱えている。 しかも、やっかいなのは、どの国もスターリニズム制度は温存したままで、基本的に軍事独裁体制を維持している点だ。旧KGB組織は温存されており、弾圧政治が消えることなどありえない。 その状態で、計画経済を廃止するのだから、特権階級に富が集中するだけで、経済は上手く回らなくなる。国内不安定必須である。 その典型がアゼルバイジャン(Azerbaijan)だ。 人口は780万人しかない。カスピ海沿岸の隣国は、北側がロシア、南側がイランである。西は、グルジアとアルメニアと接している。 人口の90%が回教(シーア派)のトルコ系アゼリ人(アゼルバイジャン人)だが、2%ほどキリスト教(アルメニア単性論派)のアルメニア人が存在する。 (http://www.cia.gov/cia/publications/factbook/geos/aj.html) 1988年ナゴルノ・カラバフ自治州(Nagorno-Karabakh)でアルメニア統合運動が勃発した。アルメニアは独立/併合運動を支援し、アゼルバイジャンは領土保全方針を強化し、ついにアルメニア人虐殺に至る。その後、一応停戦状態になったが、解決に向かって動いてはいない。 経済的には、バクー(Baku)油田があるため、原油輸出収入があるのだが、驚くほど経済状況は悪い。 1997年から、AIOC(Azerbaijan International Operating Consortium)が動き始め、ようやく生産が増え、軌道に乗り始めたたと言われている。 さらなる生産増強は先進国の投資と技術支援なくしては実現できない。しかし、独裁国であるが故に、この関係は必ずしも安定しているとはいえない。 その上、生産量が伸びても、陸封国家なので輸送という難問が立ちはだかる。
米国の影響下にあるから、ロシアを経由しない西ルート重視が進むことになる。 さらに、2002年からはグルジア(Tbilisi)/トルコ(地中海側Ceyhan)ルートの建設も始まった。アゼルバイジャン、グルジア、トルコを米国影響下に収める意味を持つ動きといえる。 このような動きがスムースにいく保証はない。国情を考えれば、何時なにが発生してもおかしくない。 政治への発言の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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