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2004.6.23

   中小企業政策の抜本的見直し必至

地域発展策の欠点…

 工業集積が上手くいっていない例を示したが、このような例は至るところで見つけることができると思う。
  → 「空しい工業集積化策」 (2004年6月22日)

 このままでは、ジリ貧だ。
 と言うことで、地域クラスター構想がもちあがった。
 その後、この構想は、どのようになっているのだろうか。

 2004年4月26日に「地域イノベーションの成功要因及び促進政策に関する調査研究 ―「持続性」ある日本型クラスター形成・展開論 ―(最終報告) 」の概要がリリースされている。(1)
 地域クラスター構築の成功要因と促進政策に関する分析がなされたのである。

 ここでは、以下の成功要因が指摘されている。
 1 知的集積/世界的技術がある。(地元の大学に力があるということだ。)
 2 企業集積がある。(地場産業か、産業技術の蓄積がある。)
 3 核となる中堅企業/ベンチャーがある。
 4 経済的な危機感がある。

 それぞれの典型例は、香川(希少糖の大量生産技術)、福井(繊維産業とメッキ技術)、札幌(BUG、ハドソン、コンピュータランド)、神戸(震災)だ。

 その通りではあろうが、地域に活気が溢れるかどうかは、グローバルに見て著名な企業が存在するかどうかではないかと思う。もちろん、著名な企業は、大企業か、中堅企業か、ベンチャーのどれでもよい。
 核となる企業の周りに、事業に必要な知識や技術を得られるネットワークができあがれば、「地域クラスター」化が進むだけの話しではないだろうか。
 大学が沢山あるとか、数多くの地場企業が存在していること自体は、余り重要ではないと思う。保持している知識や技術が豊富でも、追求している事業に役立つとは限らないからである。

 実際、集積があっても、さっぱり伸びなかったり、衰退している地域が多いのではなかろうか。集積がプラスに働いているからといって、この効果を過大視すべきではない。
 必要な技術や企業は後から集めることもできるからだ。

 素直に考えれば、成功要因は単純である。
 世界の「No. 1」を目指して、「本気」で頑張る人達が力を合わせただけのことだと思う。

 核となる企業が存在すれば、そこには、必ず「本気」で事業を進めている人がいる。こうした強い意志に触れ、同じように考える人達が周囲に集まれば、ネットワークができる。それだけのことである。核となる企業が閉鎖的でなく、地域と共に発展したいと考えていれば、自然にクラスター化する筈だ。

 言葉では簡単だが、なかなか「本気」の企業が生まれないのが現実である。間違えてはいけないが、、朝から晩まで、一生懸命に働くことと、「本気」で動くこととは違う。かなり困難な目標を掲げ、これを実現するという使命感があることを、「本気」と呼んでいるのである。
 欧米の成功例からの教訓では、「ビジョナリーの存在」が重要とされているが、これこそ「本気」の源泉だろう。

 このように考えると、日本で、知的集積や企業集積を活用して、地域クラスター化を進めるとの目論みには盲点がありそうだ。
 というのは、いくら集積しても、人的流動性は実現されない可能性があるからだ。組織安定志向の「集積」では、「本気」にはなれまい。市場創出より、自らの組織の延命が重視されるからだ。

 このような集積は最悪である。優れた組織があっても、産業を牽引することはできない。全組織が参加し、地域の行く末を語り合うことで、訳のわからぬ折衷案がビジョンになりかねないのだ。このようなビジョンでは、地域の飛躍どころか、下手をすると沈滞化に進みかねない。

 低迷する地場産業を見ていると、伸びそうな企業が存在しているにもかかわらず、効果的な支援が行われていないように見える。支援はあるのだが、産業全体に行われるから、有望企業には意味が薄いものになってしまうのである。

 このような状況に陥っているのが、地場の現実ではないだろうか。

 ここには、2つの問題がある。
 1つ目は、業界構造を変える施策を打ちだせない点だ。
 2つ目は、官民の連携が出来にくくなっている点だ。

 前者だけならともかく、後者まで加わっているのだから、如何ともし難い。
 官民が結びつくと、腐敗が進むから、壁を作ろうという動きが進んでいるのだが、これを止めようとしないのである。驚くべき教条主義が蔓延している。

 このままなら、「核」となる企業が官の支援を受けて、地域発展を狙うこともできなくなる。

 → (2004年6月24日)
 --- 参照 ---
(1) http://www.nistep.go.jp/achiev/abs/jpn/pol009j/pdf/pol009aj.pdf

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