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2006.2.7
 
 


フランス民族主義がもたらす災い…

 フランスが主導する「普遍的な民族主義」は極めて危険だと思う。
  → 「フランス政治の危険性」 (2006年2月6日)

 そう考えた本当の理由は、実は、2006年1月19日のChirac大統領演説にある。

 核兵器搭載潜水艦基地[BASE OPERARIONNELLE DE L'ILE LONGUE]での長時間演説で核攻撃能力維持方針を明らかにしたのだが、わざわざこんな時期を選んで核戦略を発表するのだから、とんでもない外交センスだ。
 これこそが、フランス的民族主義の発露そのものだと思う。

 イラン、北朝鮮の核武装化阻止のための外交交渉を進めている真っ最中に、わざわざ核武装が不可欠だと発表したのである。しかも、テロ国家へ対抗するための武器と明確に言い放った。

 当然ながら、その理屈はいい加減そのもの。
 大国 v.s. 大国なら、抑止力という話もそれなりの納得性はあろうが、冷戦構造は消滅したのである。なにせ、就任早々に核実験を行った大統領であり、核保有でしか大国意識を維持できなくなってきたということかも知れぬが。

 まさか、細分化しているテロ集団に対して核攻撃が有効という訳でもあるまい。

 にもかかわらず、悪辣なテロ国家に対して核攻撃を浴びせるとの脅しが効くというのだ。狂信的な国家の指導者が、国民の大量殺戮を気にかけることなどあり得ないと思うのだが。

 テロリストには、Chirac大統領の発言は、まさに千載一隅のチャンス到来に映ろう。世俗の垢にまみれた国々との全面対決を望む狂信者にとっては、政教一致を標榜せざるを得ない国家への核攻撃引き出しは望むところだろう。

 ・・・。

 実は、こんな発想でよいのか、ずっと、気になっている。

 と言うのは、米国の核の傘の下でヌクヌクしている人達には理解できまい、と言われれば、その通りかもしれないからである。

 そこで、大統領発言に関する的確な解説の登場を期待していたのだが、どうした訳か余り見かけない。米国ではなく、フランスのことだから、日本にとっては、余り重要では無いということなのだろうか。

 そこで、Financial Times のコラム(1)を眺めてみた。
 どうも、偏狭なフランス型民族主義をベースにした、選挙に絡む演説との印象は拭えないようだ。

 三色旗を掲げて出陣するナポレオン軍の指揮官イメージを振り撒いて、国民からの支持を得ようとしているのかも知れぬが、実質的には偏狭な民族主義を鼓舞するだけの政治に陥っているようだ。

 愚かな指導者がもたらす悲惨な結末だけは勘弁してもらいたいものだ。

 --- 参照 ---
(1) Wolfgang Munchau「Chirac’s strategic mess」Financial Times, 2006-1-22 (有料)


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