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2006.4.24
 
 


素人が読む米国の戦略[続]…

 つい、米国が中東で政情不安定化を図っているのではないかという、珍説を語ってしまった。
   「素人が読む米国の戦略」 [2006年4月20日]

 何故、思わずこう考えてしまったのか、背景を説明しておこう。

 中東情勢の不透明感が増したので、ご存知の通り、非中東からの輸入を増やす動きが活発化している。

 アフリカ東海岸でも、資源の争奪戦が始まっている。(1)
 西海岸でも、ExxonMobilが、アフリカ最大の産油国ナイジェリアで原油増産投資を進めるそうだ。[2006年4月7日](2)
 掘削技術が進歩したから、かなり深い海底でも、現在の価格なら十分ペイするようになった訳である。

 しかし、アフリカが中東に比べて、格段に政情が安定している訳ではない。2006年1月11日、アルジェリアで最大の生産量を誇るShellの施設が襲われたばかりだ。(3)

 要するに、政情の安定性という点では、発展途上国ならどこでも同じようなものである。
 今まで、施設が襲われたとのニュースが余り流れなかったのは、民間の傭兵が警備していたり、表立っていないが政府軍の一部が防衛していたからである。

 ところが、その程度の対処では、最近の攻撃に対応できなくなってきた。そして、その傾向は益々強まっている。
 しかも、原油を輸出しながら、貧困から脱することができないことに業を煮やした勢力が、本気で攻撃をかけ始めている。そこに、イスラム原理主義運動がからみ始めたから厄介である。

 石油にしろ、天然ガスにしろ、採掘施設とコントロールセンターが破壊されると、再開には長時間かかる。もちろん、こうした心臓部の防衛に徹することができない訳ではない。しかし、それだけでは安定供給の保証はできない。
 かわりに、輸送パイプラインが狙われるだけだからだ。こちらの防衛はそう簡単ではない。
 さらに、長距離海上輸送も、本気で狙われれば安全とは言いがたい。

 要するに、強力な武器が簡単に手に入るようになったため、軍事的防衛体制を敷かない限り、原油の安定調達など無理な時代に入ったのだ。

 そんな時代になれば、採掘から、消費地に至るまで、一貫した防衛体制を敷く必要がでてくる。米国は、相当前から、そのような体制作りを考えてきたのだと思う。
 例えば、中東から日本までを見てみたらよい。
 ペルシャ湾岸各国(Kuwait、Saudi Arabia、UAW、Qatar、Oman、Bahrain)(4)には基地を構築済みだし、インド洋のDiego Garciaやシンガポールの基地も利用できる状態にある。そして、ついにインドとも提携できる体制をつくりあげたようだ。

 しかし、これほど大掛かりな防衛体制を、すべての地域に米国だけで構築し続けることは難しい。従って、おそらく、NATOを改編し、北欧、日、韓、豪を加えた組織を編成し、原油供給体制防衛の仕組みを作ろうとするだろう。

 もちろん簡単ではないと思うが、中東の政情が混乱を極めれば、これ以外に実践的な対処策などないのではなかろうか。
 これが、米国の考えているシナリオのような気がするのだが。

 このシナリオをスムースに進める上で一番の障害は、見かけ上の政情安定は実現できる独裁政権ということになる。こうした政権の打倒こそが、米国の最重要課題なのかも知れない。もしそうなら、中東における混乱はさらに続くことになる。

 IEA の「WORLD ENERGY OUTLOOK 2005」(5)の予測によれば、世界のエネルギー需要は2030年までに50%以上増加する。中東・北アフリカ地域の生産が増加し、シェアは35%から44%になるそうだ。ベースシナリオの予測価格は、
  ・2010年 35ドル
  ・2030年 39ドル

 しかし、本当の原油価格はそんなレベルではない。原油供給を防衛するための軍事費は鰻登りであり、これを加えた本当の価格は相当なものである。

 --- 参照 ---
(1) 石田聖(JOFMEC)「活発化する東アフリカの石油・天然ガス炭鉱・開発」
  http://oilresearch.jogmec.go.jp/information/pdf/2005/0602_out_g_tz_mz_mg_ke_et_explor_deep.pdf
(2) http://allafrica.com/stories/200604070126.html
(3) http://www.timesonline.co.uk/article/0,,3-1988746,00.html
(4) http://www.globalsecurity.org/military/facility/centcom.htm
(5) http://www.iea.org/Textbase/press/pressdetail.asp?PRESS_REL_ID=163


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