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2007.6.25
 
 


暑い夏になるのか?

 暑い夏といっても、梅雨なしに一挙に夏に入るといった気候の話ではない。
 ついに、中東全域で戦乱が始まるかも知れぬと言った意味。

 イラクの手詰まり打開のため、米国がイラン戦争の火蓋を切る可能性はあったが、この戦争を始めたら泥沼化必至だから、躊躇したというのが実態だと思う。
 しかし、今回はその抑えがきかないかも知れない。しかも、以前より、事態が複雑化しているから、米国の思惑通りには進まない。避けたくても、戦争に引き込まれてしまうかも知れない。

 そんな気になったのは、2007年6月19日に、イスラエルのOlmert首相-Bush大統領会談が開催されたから。
 今更、意見交換が必要とは思えないから、なにか相互確認を要する事項があったに違いない。近い将来とんでもない事態が発生したときの話をしたのではなかろうか。

 ただ、記者会見記(1)を読む限りは、パレスチナでの新展開を受けた会談という印象だ。だが、こうなることは見えていた筈である。
 原理主義者を浮き上がらせ、親欧米パレスチナ政権を樹立することを目論んでいたのは明らか。ガザのファタファに援助すれば、ハマスがどう対応するかなど、素人でも読める。
   →  「中東大乱は防げるか」 (2007年5月29日)

 要するに、米・イスラエルは、ハマスをガザに押し込めて、エジプトにまかせる算段なのだろう。一方、レバノン側からの脅威に対しては、シリアと和平を結んで、原理主義勢力を潰すつもりだ。(Yedioth Ahronot紙がイスラエル-シリア和平交渉開始を指摘)
 原理主義勢力を隔離してしまえば、外交的解決で、イスラエルとパレスチナが共存できると考えているのかも知れぬ。(2)
 こまったものだ。
 こんなことを追求していると、中東大戦争になりかねないからだ。

 中東は複雑である。
 シリア政権とヒズボラは一体ではないし、イラン政権とシリア政権は安全保障で同盟関係にあるからといって、蜜月状態ではない。ハマスとイランにしても、宗教基盤は違う。
 どれを見ても、自分の組織の生存と発展を考えての、同盟関係だ。突如、敵対関係に一変してもなんら驚きではない。それが現実。

 そんな複雑な世界で、単純な力学を当てはめた和平策など画餅以前。
 と言うより、こんなやり方を続けていれば、大動乱に行き着きかねない。
 どうも、米国とイスラエルは、危険な道を歩み始めたようだ。

 今まで、大動乱にならなかったのは、どの組織にとっても、大動乱は自分の組織の消滅につながりかねないから避けてきただけのこと。反イスラエルの大言壮語は概ね口だけ。どの組織も力関係を考え、動いてきた。
 これが今後も続くならよいが、そうはいかない。

 米国がイランを追いつめているからだ。
 イランと会話を始めてはいるが、イランへの経済制裁を強めている。このまま進めば、イランの国内経済は破綻する。
 Bush政権は、そうなれば、政権交代が発生するとでも思っているのだろうか。

 一般に、追い詰められた政権が権力を無血で譲ることなど有り得まい。普通は、矛盾の転嫁を図る。つまり戦争の道を模索するということ。
 今のままなら、そうならざるを得まい。

 一番ありそうなのは、レバノンからのイスラエルへのロケット弾攻撃。もちろん、ヒズボラはその行為を否定する。しかし、イスラエルはヒズボラ叩きに動かざるを得なくなる。この騒乱にシリアが巻き込まれ、イランは義勇軍派遣。
 中東一帯は難民移動で大混乱をきたす。
 問題は、この動きを待ち望んでいる勢力の存在だ。親米国での、反主流派クーデター勃発の可能性はかなり高い。なかでも恐ろしいのは、核兵器保有国のパキスタンが原理主義国家に変わること。
 こんな話が危惧で終わればよいのだが。

 --- 参照 ---
(1) http://www.whitehouse.gov/news/releases/2007/06/20070619.html
(2) Dror Ze'evi: “A new Road Map - Gaza reality presents golden opportunity to turn new leaf in West Bank” Ynet [2007.6.19]
  Ynet: イスラエルYedioth Ahronot紙[ヘブライ語]系
  http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-3414371,00.html
(参考) Patrick Seale: “Will it be War or Peace in the Middle East this summer?” ヨルダンAl-Hayat [2007.6.15]
  http://english.daralhayat.com/opinion/contributors/06-2007/Article-20070615-2eb05469-c0a8-10ed-01b1-6996c15d3b08/story.html


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