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2008.2.15
 
 


期待するしかない討論会…

 2008年2月19日に、東国原宮崎県知事が出席して、道路財源に関する討論会が開催されるそうだ。(1)

 期待できそうにないが、期待するしかないといったところ。
 この結果が悪ければ、おそらく、日本はどうにもならないのではないか、という気もする。
 改革には、先ずは一点を突き*、流れを生む出す必要があるが、日本を変えるためにはどこら辺りを突くべきかは自明。それは、「道路特定財源の一般財源化」なのである。
 それに取り組む動きが、ようやく生まれた感じがするので、こうした討論会に期待せざるを得ないといったところ。

 別に、道路に限ったことではないが、特定財源的な政策慣行を無くさない限り変革は無理である。

 そもそも、用途を特定して、支出総額を先に決める仕組みを作れば、そのお金に人が群がるのはわかりきったこと。
 何に投資するかは、それぞれの主体が決めるべき問題なのに、そうさせないようになっているのが日本の仕組み。その結果が、森を切り開いて作った使わない道路や、田畑を潰して作った利用者がいない運動場、砂浜を意味なくコンクリートで固めた岸辺である。
 ともかくお金を求めて、際限なき工事誘致が続く。飯のタネが他に思いつかないのだから、可能性がある制度はすべて利用し尽くすのは当たり前。もっとも、これを見て、評価システムが機能していないから無駄が出てしまうと、本気で考えている人もいるようだが。
 国家も地方も財政は破綻しているのに、さらに悪化させる道を歩ませたい人は少なくないのである。

 この現象は、食べるためには大陸への拡張しかないと言っていた頃と全く変わらない。その頑迷さは、当時以上で、おそらく、神風でも吹いてすべてが解決すると考えているのだろう。
 「オープンな経済を実現し、地域に根をはるサービス産業の振興に力を入れ、人材の力を高める。」などと語る政治もそんな風土に合わせた姿勢そのもの。何から手をつけるか語らないのだから、変革回避の意志表明と見るべきである。
  → 「日本株さらなる低迷か 」 (2008年2月4日)

 このどん詰まり状態を突破するには、特定財源潰しに動くしかないのである。
 従って、これに繋がらない「暫定税率廃止」運動など全く無意味。つまらぬ政争の一頁にすぎない。どうなろうが、状況は悪化するだけ。
 しかし、暫定税率論議を、道路特定財源の一般財源化の論議にもっていけば話は違う。変革のきっかけになるかも知れないからだ。

 と言うのは、この動きは筋がよいからだ。
 これは、「消費者主体の政治」といった正論的なスローガン運動とは訳が違う。そんな運動は、頓挫するか、利用されるだけ。残念ながら、変革にプラスには働かない。
 ところが、「暫定税率廃止」運動は、スローガンでは終わらない。権力の主体を現場に移行させる動きを誘発してしまうからだ。ここがポイント。

 ともかく、変革がしたいなら、やるべきことは、現場への権力移行。これにつきる。それ以外は、単なる政争でしかない。
 現場が、自ら意思決定できると感じた瞬間、日本は変わり始める。
 そんなことは説明不要だろう。現場が、無目的に美しい砂浜を埋めるコンクリート工事を始めたい訳がなかろう。又、地元民に関心がない記念施設の建設にお金をかけるような計画がもちあがる筈もない。
 それでは、工事以外の、何で食べるか。何に投資したらよいのか。
 そんなことは、現場が自分で知恵を出すしかない。アイデアが出る地域だけが繁栄するのである。

 変革したいなら、自ら動こうとしている現場に権力を移行させる仕掛けを作っていくこと。支援ではない。権力移行が鍵なのである。

 権力移行に繋がらない、正論らしきスローガンにはなんの意味もない。そんな意見に耳を傾ける位なら、ロシア政治の大転換でも研究した方がましではないか。
 ロシアは、腐敗と混乱の政治と、政商が牛耳る経済の両輪で回っていた。これが、短期間のうちに、KGB型支配に変貌をとげたのである。この根拠を考えることは頭の整理にもなるのではないだろうか。
 ただ、マスコミ論調は全く参考にはならない。プーチンの強権発動面ばかり強調するからだ。大転換の本質を見定めることが重要である。
 なにが変わったといえば、実に単純な話である。財閥による投資決定の仕組みから、国家指針に基づく大規模地域開発投資の仕組みに移行しただけ。要するに、後者を取り仕切れる権力層はもともと存在していたということ。プーチンは、そこに、権力を移行しただけに過ぎない。

 日本の場合は、これとは逆で、国家指針に基づく投資の仕組みからの脱却が求められている。新しい仕組みを取り仕切る新しい権力が必要ということ。
 幸いなことに、その受け皿はありそうだ。ただ、それに気付くとは限らないが。そして、そうはさせたくない頑迷層を蹴散らかすことができるかという課題も残る。
 従って、簡単ではないが、チャンスはある。
 はたして、それを活かせるか。

 --- 参照 ---
(1) “民主党、19日に菅代表代行が東国原知事らと道路財源で討論会” 産経ニュース [2008.2.13]
  http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/080213/stt0802130056001-n1.htm
(*) Malcolm Gladwell: “The Tipping Point: How Little Things Can Make a Big Difference” (2000年)
  → free book summaries [WikiSummaries]
  → What is the Tipping Point? [GLADWELL.COM]
  邦訳版(高橋啓訳)はタイトル変更が続いている.
  2000年2月 『ティッピング・ポイント―いかにして「小さな変化」が「大きな変化」を生み出すか』 飛鳥新社 2000年
  2001年6月 「なぜあの商品は急に売れ出したのか」
  2007年6月 「急に売れ始めるにはワケがある」
(市政会館の写真) (C) 東京発フリー写真素材集 http://www.shihei.com/tokyo_001.html


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