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2008.7.30
 
 


日本の漁業は救えない[続]…

 日本の漁業については色々なご意見がある。
 改革提言もあるが、(1)小生は、その時期はとうに過ぎていると思う。農業とは状況が違うからだ。
  → 「日本の漁業は救えない 」 (2008年7月28日)

 別に、漁民の大半が高齢者になっているから、新しい動きどころではないということを言っているのではない。産業構造全体を変え、新技術体系に移行するような提言以外は意味が薄いと思うからだ。

 おそらく、現実認識が違うのである。(末尾に参考にまとめておいた。)
 小生は素人だが、その目から見れば、沿岸・沖合の漁業資源は、すでに漁業を支えるレベルに無いと見ている。魚屋によくいく人なら、小型が増え、中型は養殖が中心になっていることを知らない訳がない。マサバ、マイワシまでなかなか獲れないというし、食卓にはのぼらないカタクチイワシまでいなくなっていると魚屋さんが言いだす位なのだ。
 すでに悪循環の道に入ったと見てよいだろう。今後、好不漁の荒っぽい波があるかも知れないが、サバやイワシもいずれニシンの道をたどるに違いない。
 借金をかかえる漁業者も多いだろうから、現行の仕組みを変えない限り、漁獲を抑えることなど無理だからである。

 ただ、日本の漁場は、南国沖縄から北国北海道に至る海の道と、小笠原から続く海底地形上の優位性がある。低レベルの漁獲量なら確保できる可能性があり、すぐに枯渇することにはならないかも。しかし、現在の漁業者が食べていくことは、早晩、無理になろう。

 つまり、漁業者の経営が苦しいということで援助の手を差し伸べれば、資源の減少がより進み、事業撤退者が増えるだけのこと。補助金を出そうが出すまいが、政策的に見れば、たいした違いがある訳ではない。どの道、漁獲量が萎むことを止める訳にはいかないからである。

 そのうち、漁獲規制に意味がなくなるほど漁獲量が落ち込む。そうなれば、水産庁も消滅し、新たな産業の枠組みが生まれるに違いない。
 その転換のためだけに、国民は月1,000円程度の負担は覚悟しなければなるまい。しかし、日本の魚を食べ続けたいなら、容認するしかない。
 まあ、今でも、水産庁を通して、国民一人が毎月数百円を漁民に配っている勘定だろうし、2008年には、さらにそれに上乗せするのだから、そうたいした額ではない。

 もっとも、未だに、現行の漁業の壊滅を避けることができると考える人もいるから、日本の漁業を守ろうとの声は始終耳にする。
 気持ちはわかるが、いくら頑張ったところで、漁獲量に比して、漁民も船も桁違いに多すぎるから、なにをやったところで無理である。
 中途半端な改革に手を貸しても徒労に終わる可能性が高い。

 今やらなければならないのは、おそらく、そんな名目だけの改革ではなく、将来発生するガラガラポンに備えることだろう。新たな漁業の仕組みは、どんなものにすべきか、考え始める時期がついに来たと思う。
 言うまでもないが、そんなシンクタンク組織を作ったところで意味はない。新しい発想ができ、行動に移れる人材を育てるしかない。そんな人が生まれやすいように、がんじがらめの組織的規制を緩める方策が重要ということである。

     【参考】
 〜小生は日本の漁業をこう見ている。 (素人の見解)〜
 (1) 漁業用(ビジネス)とは思えない船が多い。
    ・極めて小さい船が矢鱈に多い。
      (9割減船しても影響はでないのではないか。)
    ・古い船が多く代替時期を迎えていそうだ。
    ・喫水が浅くキュウリ型なのに釣り船や観光用でもない。
    ・投資が回収できるか疑問な装備を施した船も少なくない。
      (借金があれば撤退はできまい。)
 (2) 漁場はかなり沖合らしいが、同じ漁場を対象にしていそうな漁港の数は極めて多い。
    ・どこの漁港も同じような設備で、同じような仕組みだ。
    ・沖合いで一網打尽型の巻き網漁法を行っているから、資源の取り合いである。
 (3) ひとつの漁港で見ると、事業規模の割りに総資産が過大である。
    ・船が多すぎる。
    ・遊休あるいは低稼働な資産らしきものが見受けられる。
    ・港湾整備工事が常に行われている。
 (4) 作業効率は全く考慮されていないようだ。
    ・施設運営や作業の効率性を考えた設計の港ではなさそうである。
    ・魚種選別作業を船上で行っているようで、このコスト負担は重い。
 (5) 大量捕獲型国内漁業は経営基盤が脆弱だと思われる。
    ・漁獲量変動は極めて大きい。
    ・参考になりそうな漁獲予測は皆無である。
    ・豊漁を前提とした労務体制を組んでいる。
    ・対象は冷凍魚市場だから熾烈な価格競争に巻き込まれている。
    ・漁撈の仕組みは硬直的であり、事業継続のためには、人員過剰状態が不可避である。
    ・おそらく自己資本過少であり無理な操業をしかねない。
 (6) 国策として乱獲を奨励し続けている。
    ・食糧難の時代の増産方針となんら変わらない施策を続けている。
      (基本スタンスは、漁獲量向上である。結果は逆だが。)
    ・膨大な予算枠があるため漁獲量減少対策に注力し続けている。
      (種苗放流事業とは資源保護ではなく乱獲続行策である。)
      (経産省と水産庁の予算枠を比べると誰でも愕然となる筈。)
    ・日本の養殖事業とは餌の乱獲事業でしかない。
      (すでにほとんどが輸入餌となってしまった。)
    ・赤字漁業でも漁民が食べていけるような施策を次々と考案してきた。
 (7) 漁獲規制は守られているとは思えない。
    ・ルール破りの存在はどこでもよく聞く話だ。
    ・監視の仕組みや罰則強化の動きは極めて弱い。
    ・県毎の規則だが、海は繋がっており意味は薄い。
    ・高度な装備の釣り船が続々と投入されている。
 (8) アクセスが簡単な浜や磯は、ほぼ護岸工事が完了してしまった。
    ・漁村としての魅力を消し去ってしまったので観光型への転換は無理である。
    ・海流も変わってしまったろうから、漁港周辺での漁業資源回復はあり得まい。
      (種の保存程度なら可能かも知れないが。)

 --- 参照 ---
(1) 「魚食をまもる水産業の戦略的な抜本改革を急げ」水産業改革木委員会 緊急提言(エグゼクティブサマリー)
   日本経済調査協議会 [2007.2.2]  http://www.nikkeicho.or.jp/report/takagi_teigen0702.pdf
(船のイラスト) (C) Free-Icon http://free-icon.org/index.html
  


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