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2010.1.18
 
 


昨今の政治状況を眺めて[口が軽過ぎた発言]…

普天間問題では自由発言容認だが、武器三原則には触れるなということか。
 2010年1月12日、鳩山首相が、官邸記者団の質問に答えて、北沢防衛相を口が軽すぎると指摘したそうだ。・・・
  「断定的におっしゃっていないように私は思います。
  したがって発言自身もいろんな思いの中でね、話をされているんだと思いますけども、
   私は やはり武器三原則は 今、守らなければならない、
  日本としての平和国家の道を歩んでる姿だと思っていますから、
  そういう意味では、ああいう場であったとはいえ、
  多少、口が軽過ぎたかなと、そう思いますね」(1)

 なるほど。
 武器三原則だけは、勝手に意見を表明するなということか。

 マスコミのなかには、自民党時代のお気楽報道を相変わらず続けているところもある。未だに、閣内不一致とピント外れの批判である。こまったものである。
 新政権の姿勢は政治主導。しかもできるだけ議論はオープンにという姿勢。政策については様々な意見が飛び出して当然。連立政権なのだから。それに閣僚も含まれているというだけのこと。
 要するに、様々な意見に対する反応を見ながら、意思決定するスタイルということ。ボス政治家と組んだ官僚による根回し作業を無くせばこうなるという見本。

 何を主張したいのかさっぱりわからぬ竹下首相の手法を思い出せばわかるだろう。この手法に、政治主導・オープンな議論を接木したに過ぎない。

 これを相手がある外交関係にまで持ち込むから、どうにもならなくなるのである。米国の軍事戦略に係わることを、日本の閣僚が表立ってコメントするとしたら、どうかしている。
 しかし、こと、わが国の安全保障の基本方針の議論なら歓迎すべきかも知れぬ。根回しで誤魔化しながら進める政治では、どうにもならなくなってきたからだ。ところが、どうやらこちらの議論は止めるようだ。
 折角のチャンスを潰すのかね。

一方、自民党は安全保障問題で議論を仕掛ける気配さえない。
 この状態で、自民党の不甲斐なさには言葉もなし。安全保障問題では党内で意見が割れるから、議論をしかけることもできないのかな。
 防衛産業が食えなくなる道を決定したのは現政調会長辺りだろうから、そんな話は、だんまりが一番と見ているのかも知れぬ。

 それなら、深刻化する財政問題での解決の道を提起する位のことをするのかと思いきや、こちらも無視らしい。政治の焦点は、鳩山・小沢政治資金問題というのだから、その緊張感喪失状況には呆れる。
 政策のプライオリティなどなにもなく、ただただ権力闘争だけの発展途上国の政治集団を彷彿させる。
 野党になるということは、そういうことなのかも。

 しかも、ことのほか、状況は厳しい。
 小沢幹事長が主導する、サラミ戦術的な旧政権利権潰しが効いており、櫛の歯が欠けるように自民党支持団体が減っているからだ。兵糧を奪われれば家業の議員は離党するしかない。
 それに、自民・公明の連合体制を切るために、両党が対立せざるを得ない法案を登場させるのも目に見えている。
 このままでは、参議院選挙惨敗は避けられまい。
 それを防ぐには、ともかく小沢打倒しかないというのかも知れぬ。民主党とは、寄り合い所帯の政党だから、これさえできれば形成逆転に繋がるとの一縷の望みと言った方が正確か。
 だが、そんな方針では、支持率向上にはほとんど貢献しないのはわかりきったことでは。・・・利権政治と言われ続けた自民党竹下派の脱藩組が、懲りずに、同じことを繰り返しているとしか見られていないのだから。

 小沢政治資金問題については、検察は時効切れにはさせない決意を固めたようだが、発注元に捜査が入っていないようだし、職務権限が無い野党の一政治家を収賄罪で起訴するのは土台無理だからどうするつもりなのだろうか。マネーロンダリング染みた動きだから、無理しても、切り込む必要があるということかも知れぬが、今の法制度では難しいかろう。せいぜいのところ、“お騒がせしました”辞任で決着だろう。
 人事の盥回しでしのいできた自民党には、そんな対応になることは、わかりすぐるくらい、わかっていると思うが。

どの道、大再編というシナリオしか残されていないのかも。
 ここまでくると、参議院選挙後の政界再編は必至ではないか。願望を述べているのではなく、それ以外に道は残されていないというだけの話。

 35兆円の収入で、100兆円の支出という状況を続けられる訳がなかろう。
 単純な算数でも、10年弱で調達不能になろう。そんなことを市場が見逃す筈はなく、おそらく、あと数年ではないか。郵貯の資金など一時的なバッファーにしかならないし。
 いくら危機感が薄い政治家でも、こうなればまともに考えるのではないか。二大政党で税金のバラ撒き方法の違いで争っている場合ではなくなるからだ。財政再建のための大増税と予算大幅削減を始めるための緊急臨時政権樹立しか国家破綻を避ける手はない。代議制度だから、これは理屈では可能だが、国難意識が湧いて始めて動きがでるということ。

 逆に、もし、これができなければ、日本沈没。IMFにでも管理してもらうしかない。管理政治家の態度を見ていると、その可能性も否定できないが。

 ただ、この大再編を行うには、一つ問題があろう。それは安全保障での当座の政策を一致させておく必要がある点。
 このきっかけを作るという意味では、「武器三原則」論議は極めて重要だと思う。
 口は軽い方がよいのである。

武器輸出三原則問題こそ、連立新政権がまともに機能するかの試金石。
 ちなみに、防衛相の記者会見での回答を、勝手にまとめてみようか。

Q: “業界団体の新年の会合の場で武器輸出三原則についてのお考えを披露された・・・どのようにお考えになるか”。(1)

 【基本姿勢】
  ・内閣の継続性も含めて、「守るべきだ」と言わざるを得ない。
  ・国際紛争などを助長することを回避するために必要である。
  ・それこそが、我が国の平和国家としての基本理念堅持を意味する。
 【業界が直面する問題】
  ・装備の調達や技術開発を行っている企業に、活動上の支障がでている。
  ・ライセンス生産部品を海外供給できないと、当該装備が廃版になりかねない。
 【考え方】
  ・軍事に直結しない部分にまで適用されていることについては、議論も良いのでは。
  ・BMDのように、個別案件の例外扱いは、検討に値する仕組みだ。

 実にわかりにくい表明である。

 事態をはっきり言ったらよさそうに思うが。
  ・防衛産業の規模が縮小している。
  ・戦車のように、潰れる軍事産業分野もでてくる。
  ・次期戦闘機を国内生産しないとなれば、軍需航空産業は崩壊する。

 常識で考えればわかるが、自国で生産できない兵器は防衛用にはならない。部品調達と大規模修理ができなくなる可能性があるからだ。発展途上国の政権によくある話。張子の虎か、国内治安用だからそれでかまわないのである。どうしても防衛用にしたいなら、調達先を複数にして、稼動を保証できる仕組みを工夫する必要がある。インフラが重複するから膨大な費用がかかる。かえって高くつくと思われる。

 つまらぬ話に聞こえるかも知れぬが、これ、日本の安全保障に関しては、重大問題である。次期戦闘機問題が係わるからだ。
 開発に参加して、分担生産スキームに乗っていれば、安価に調達できたが、「武器三原則」遵守のためそうなっていない。当たり前だが、開発に参加しないで、国内生産を要求すれば、要求される金額は膨大。

 おそらく、驚異的なスティルス性を持ち、何百機かかっても太刀打ちできない戦闘機調達を前提にしていたのだろうが、その目が消えた。それなら、どうするのか問われているのである。

 常に汚職がからんできた分野だが、素人が見ても、戦闘機機種選定自体は妥当なものだった。それを国内生産できたのだから、優れた采配だったと言えよう。
 しかし、それは過去の話。
 “タダ乗り”ができなくなっており、安価にしたいなら輸出解禁しかないのは自明である。

ただ、この問題を表立っては議論しにくいのは確かだ。
 日本の安全保障に関する議論が必要ということ。ただ、盛り上げると言っても、難しい問題があるのは確かである。防衛は仮想的敵国を考えることにならざるを得ないからだ。
 こんな話を無神経に話すことは危険そのものである。挑発行為と受け取られる可能性もあるからだ。
 だが、どんな脅威に晒されているかの認識を一致させなければ方針が立たない。このバランス感覚を保ちながら議論を活発化させるのは極めて難しい。

 少し、周囲の国々の状況についても触れておこうか。
 台湾海峡のリスクについては若干書いたので、それ以外をまとめておこう。
   → 「普天間問題の先送り」 (2009.12.29)
 おことわりしておくが、まったくの素人が、米軍の見方を推定しただけのもの。ご自分でお考えになるのが一番。

【ロシア】
米軍は、その兵力配置や、訓練状況(寒冷地向け)からみて、潜水艦以外は脅威とは見なしていない。緊急突発事態に備え、自衛隊基地が使えればよいという程度のようである。
【北朝鮮】
軍事独裁政権だが、金一族支配の身分制社会の国家であることの意味を、オバマ政権は理解したようである。要するに、一族メンバーが以下の役割を分担して動いているだけ。
  ・治安/諜報活動機関: 政権転覆を画策する芽を摘む。
  ・作戦指令部: 将軍絶対服従のため緊張感を煽る。
  ・貿易統制/軍事外交: 外貨獲得で一族の財政基盤を作る。
つまり、この政権は、軍備強化と軍事挑発行為はやめることはできないのである。これなくしては、金一族支配体制が崩れかねないからだ。瀬戸際外交はその結果でしかない。瀬戸際は外交ではなく内政の方である。軍隊を煽っておきながら、暴発させぬように動くのだから簡単なことではない。
逆に言えば、金一族支配が崩れた時、軍隊の暴発のリスクは極めて高い。それに備えた展開を図るしかなかろう。米韓合同演習を繰り返し、暴発対応を怠らないようにする以外に手はない。
【韓国】
韓国世論の動きから見て、日本との軍事的衝突のリスクありと見ているのではないか。経済規模を考えると、対北朝鮮とは直接関係ない、無理な軍備強化を進めているからだ。
国民の生活向上より、なんであろうと大国化を嬉しがるという点では、北朝鮮と似た体質である。

 この状態だとしたら、米国の姿勢は言わずもがな。
 「武器三原則」例外条項を設定し、開発に遅れがでている戦闘機共同開発プロジェクトに、日本が参加して欲しいにきまっている。安価で高品質な生産実現のために、日本企業の力を使いたいということもありそうだし。なにせ、無人飛行機増産に多忙なのだから。
 それに、ソフトは別だが、ハード面では米国企業はからきし弱いし。

 --- 参照 ---
(1) “【鳩山ぶら下がり】武器輸出三原則見直し論「口が軽過ぎ」(12日夕)” 産経新聞-msn [2010年1月12日]
   http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100112/plc1001122013013-n3.htm
(2) “大臣会見概要” 防衛省・自衛隊 [2010年1月12日]
   http://www.mod.go.jp/j/kisha/2010/01/12.html


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