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2010.4.28 |
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核戦争もありえる…〜 朝鮮半島の動きが世界を揺るがすかも。 〜4月20日、韓国で脱北者の暗殺組が検挙された。(1) そして、韓国Yonhap news(聯合ニュース)が、“46人が死亡した同国海軍の哨戒艦「天安(Cheonan)」(1200トン級)の爆発・沈没について韓国軍当局は、北朝鮮の潜水艦が発射した魚雷が原因だったと判断していたと報じた”。(2) 様子見策の第2段階ということで、軍高官が意図的にリークしたのだろうか。今更感。 → 「朝鮮半島がきな臭い」 (20010年4月5日) 韓国経済を牽引する巨大企業が絶好調だし、大統領支持率も極めて高いので、米国と協議しながら落ち着いて対応していくことができそうだ。 一方の北朝鮮だが、デノミと外貨規制で大失敗した上、先軍政治から経済重視路線への転換をにおわしたから、軍隊による統治力が極端に低下していると思われる。首領の威光が届いているうちはなんとかなろうが、それが何時まで持つかといった状況だろう。 そんななかで、朝鮮中央通信が2010年4月21日付けでイラン外務省の代表団の来訪を報じた。さらに、Kim Yong-Nam北朝鮮最高人民会議常任委員長もイランを訪問する予定とのこと。(3) ソ連と米国の瀬戸際外交気取りの発表と言えよう。力量を考えない反米強硬路線だが、これで大国感を味わえる上、組織に緊張感を通わせることができるから、 金一族支配のためには不可欠な施策。 それはイラン側も同じ。政権維持には、対米強硬姿勢を示し続けるしかないのである。 こうした挑発的な姿勢を続けることができるのは、安保理事会による追加的経済制裁がすんなり通りそうにないから。しかし、それは、イラン・北朝鮮を大国が支援しようと考えている訳ではなく、外交取引のカードとして使われているということ。 この両国での戦乱は、どの大国にとっても高くつくから、大事にならずにいるだけの話で、外交取引の決着如何ではどうなるかわからない恐ろしさを秘めている。 〜 イラン-北朝鮮同盟は戦乱の引き金になりかねない。 〜 特に危険なのは、イランと北朝鮮が同盟を結んだように映る動きを始めた点。両国の為政者は米国に対抗するための策と考えたのだろうが、力量を考えない冒険主義的な動きである。 すでに、世界の大国は、イランと北朝鮮には核兵器を所有させないという点で意思一致済みであり、なにをしても、これが覆ることはなかろう。そして、イランが核武装を狙っているという点でも、認識は一致しているのは間違いあるまい。 この状態で、対決姿勢を見せたところで、何も得るものはない。従って後に引けない。 そうなると、どうなるか。 どこまで本当かわからぬが、Robert Gates国防長官のメモなるものが報道されたが、結局はイランの核武装化と北朝鮮の核兵器増産しかないということ。・・・“the U.S. needed new strategies, including how to contain a nuclear Iran” イランと北朝鮮を核保有国として扱うことはできないが、その核兵器にどう対処するか検討しようということ。 これだけなら、そんなものかとなるが、それでは済むまい。 こんなメモの話がでるということは、安保理事会が、笊のような名目的なイラン制裁決議でお茶を濁すことを意味する。つまり、数年内には、イランが核武装に踏み切る力を持つことになる。 これは厄介な話。 イスラエルにとっては黙認する訳にはいかないからである。(4)すでにイランはイスラエルを射程距離に収める弾道ミサイルを保有しているから、核兵器小型化さえできれば、現実的な脅威に晒されるからだ。イラクやヒズボラのロケット攻撃に晒されている国からすれば、そんな脅威を座して眺めるなどあり得まい。 特に、イラン-北朝鮮の蜜月状態を見せつけられれば、その時間が差し迫っていると感じている訳で、イスラエルは単独イラン攻撃に踏み切るかも。その場合、同時ヒズボラ攻撃も必至。中東全面戦争に繋がる可能性大。 イスラエルは、国家消滅の危機感を覚えての動きであり、いくら米・イスラエル関係が磐石と喧伝しようが、米国には止める力はなかろう。 おわかりだろうか。 核心は、イスラエルのイラン攻撃を止めることができるか否かという点。・・・冷静に眺めて、これはかなり難しいというのが常識的なところではないか。 米国にしてみれば、中国に、制裁に加わりイランを抑えるか、イスラエルの攻撃による戦乱勃発のどちらにするか、二者択一を迫っているだけのこと。どちらにころぶかは、条件次第だろう。 これこそが、世界を牛じる大国外交の真の姿ではないかと思うが。 〜 核サミットでなんとかなればよいが。 〜 これを踏まえて、核安全保障サミットを見ておく必要があろう。 この会議、周到に準備されたもの。 話は外れるが、日本は米国の考え方を理解しようとしていなかったようだから、出番がある訳がない。しかも、議題とどう係わるのか、日本の首相は沖縄の基地問題で言葉を交わしたのである。このセンス、なんだかね。 要するに、このサミットで世界の枠組みを作りあげたということ。2009年のプラハ演説を踏まえて、米・露で核兵器数を減らす合意を示して(START)、この会合に臨んだことに意味がある。 つまり、他の核保有国も同じように動けということ。そして、非保有国は絶対に動くなと釘を刺したのである。 しかし、それに従う保証はないから、確認の会議を開いたようなもの。 当然だが、イランと北朝鮮はこの枠組みの外。 米国政府の説明によれば、「the wording of the nuclear review was “deliberately crafted” to exclude Iran and North Korea from the security guarantee, creating an incentive for both countries to come into compliance with the treaty.」(5)ということらしいが、たいした意味はない。重要なのは、Obama-胡錦濤会談でのイラン制裁方針の詰めと北朝鮮政権崩壊時の核の処理だろう。態度から見るに、オバマ路線は成功したのかも知れぬ。(6) 〜 長期的に見ると、米国の方針はいい加減なもの。 〜 この核安全保障サミットだが、そのシナリオの根底にあるのが、「核戦略見直し報告書(Nuclear Posture Review)」(7)である。 94年、01年(ラムズフェルド版)に続いて、2010年4月6日に公開された。遅れたのは、サミットに合わせたかったのか、練り上げたかったのか定かではないが、プラグマティック色が強いものになっており、そのポイントは2点。 ・核拡散防止と核テロリズムへの取り組みを今後の優先課題と位置づける。 ・核拡散防止条約の順守を条件に、 非核保有国に対しては核兵器を使用しないことを明確にした。 前者については深刻に考えているようだ。北朝鮮やパキスタンが保有する核物質・兵器をテロリストが入手し、米国を攻撃する危険があると判断した訳だ。 換言すれば、これらの国を管理する“宗主国”を大国間で決め、政権転覆をみだりに画策したりしないという合意を取り付けるということか。 一方後者はわかったようで、わからぬロジック。(長文なのでこちらの頭が働かなくなるせいもあるが。)・・・核兵器を削減するとともに、その役割を限定し、核兵器攻撃に対抗するだけのものとするという主旨。新型核兵器開発や核実験も止めるというのだ。 核の均衡論は捨てたのかね。その一方で、核戦力は維持するというのは、素人には以下のように映るが。 ・老朽化した核兵器は新品代替をせず廃棄する。 ・使用しそうにない巡航ミサイル系核兵器は全廃する。 要するに、精密誘導爆弾のような、通常兵器配備に注力するということでしかなかろう。 使えない兵器を揃えるのは無駄という現状追認。 だいたい、中・印が互いに核兵器増産を始めたらどうするつもりなのだろうか。そんなことはありえ無いと考えているのだろうか。それとも、アジアは勝手にというつもりか。 もう一つ大きな問題になりそうなのは、核拡散防止条約に参加している国に対しては、核による第一撃を放棄という方針。これが未加盟国への圧力として有効なのかは疑問。もともと、反米国家は核攻撃されることを前提としており、文章化されて状況が変わる訳ではなかろう。 逆に、核の傘を頼っていた国々は、米国が核による安全保障体制体制を捨てると読むかも知れぬ。自分の身は自分の力でとなるから、一番安上がりな核武装化の魅力は高まる。核拡散の動きを誘発する可能性もなきにしもあらず。 冷戦型とは違う、地域核戦争があり得る時代に入るのかも。 --- 参照 --- (1) “北偵察総局所属の‘黄長Y暗殺組’2人を検挙” 中央日報 [2010.04.21] http://jpadm.joins.com/article/article.php?aid=128438&servcode=300 (2) “「哨戒艦沈没の原因は北朝鮮の魚雷攻撃」、沈没直後に大統領府に報告” AFP [2010年04月22日] http://www.afpbb.com/article/war-unrest/2720532/5651995 (3) “イラン代表団が北朝鮮訪問” 日本経済新聞 [2010/4/22] [朝鮮通信(東京) Eng.] http://www.kcna.co.jp/item/2010/201004/news21/20100421-21ee.html [IRIB 日本語] http://japanese.irib.ir/index.php?option=com_content&task=view&id=11863&Itemid=54 (4) CHARLES LEVINSON: “Israel Weighs Merits of Solo Attack on Iran Officials, Seeing Impending Policy” WallStreetJournal [APRIL 21, 2010] http://online.wsj.com/article/SB10001424052748703757504575194223689622084.html (5) NAZILA FATHI & DAVID E. SANGER: “Decrying U.S., Iran Begins War Games” NewYorkTimes [Decrying U.S., Iran Begins War Games] http://www.nytimes.com/2010/04/22/world/middleeast/22iran.html (6) “Obama presses Iran, gains nuclear summit pledges” Reuters http://www.reuters.com/article/politicsNews/idUSTRE63B0PZ20100413 (7) [関連文書リンク] “核戦略見直し報告書 (4/7/10)” 米国大使館 http://tokyo.usembassy.gov/j/irc/ircj-select-security.html#04-07-10 政治への発言の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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