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2010.4.5
 
 


朝鮮半島がきな臭い。…

軍艦沈没事件は藪の中。
 2010年3月27日、韓国海軍の“Cheonan”が沈没した。(写真は同型)
 それから1週間経つが未だに原因不明とされたまま。
 これ小さな艦船ではないのだ。長さ88m 幅10m 1,2000tのフリゲート艦である。(1)

 記事のヘッドライン程度しか見ていなかったので、かえって冷静に状況が見える。
 まあ、一言で表現すれば“藪の中”状態。
  →  芥川龍之介: 「藪の中」 [1922年] 青空文庫

 今昔物語の方は、殺された当人が自殺と主張するのだが、韓国海軍の場合は原因がよくわからないと言い続けている。
 いかにも国際政治然。裏では様々な動きがありそうだ。残念ながら、それを読み取る力は無いが、大いに気になる。

徹底した情報管制下にありそうだ。
 はっきり覚えているのは、最初の報道。船体に穴が開いて沈没とされた。ところが、その後一転。船体が真っ二つに折れたというのだ。
 そんなことを間違える筈がなかろう。虚偽情報を流したというより、ほとんど情報を開示しなかったということであり、軍は即座に報道管制を敷いた訳だ。
 対応マニュアル通りに動いたと見るべきだろう。

 そして、その後、鋭意原因調査を進めると表明しておきながら、沈没した船尾部分の方は発見がえらく遅れた。どう見たところで、捜索が難しい地域ではないし、前後に切断されて沈没した船が遠くに流される訳がないから、急いで発見したくなかったのも間違いない。行方不明の多数の乗員がいたのだから、平時用のマニュアルなら、急いで捜索すべきもの。しかし、そのような対処はとらなかった。
 もちろん、意図的にそうした対処を行ったと感じさせるコメントは皆無である。

 その一方で、古い艦船だから疲労破壊が発生したのではないかとか、軍事訓練中だったから誤爆だろうといった噂がとびかっている。

 さあ、これをどう感じるかな。
 状況から見て、情報操作が行われたと見るのが妥当なところではないか。

 ・・・まあ、素人だから、この程度の見方しかできないが、それでも、どうしてこうなっているのか、なんとなく察しはつく。少し状況を整理してみようか。
  ・時期としては、韓国軍と米軍の大規模合同演習が行われた直後である。
    -北朝鮮軍は臨戦態勢をとっていた筈である。
  ・当該艦船がなんらかの訓練を行っていたとの話が流れている。
    -他の艦艇が実弾発砲をおこなったとの噂もある。
    -韓国海軍は普段通りの行動と表明した模様。
    -訓練や巡回場所としては不自然な感じもするが。
  ・報道される韓国海軍の話は錯綜している。
    -沈没状況についての情報はバラバラでよくわからない。
    -艦長は、すぐに沈没したと遺族に語ったとか。
    -救助活動が遅れた理由は曖昧。
    -船尾探索に即時大規模注力をしなかった理由もはっきりしない。
  ・米国大統領が対処方法について韓国と電話会談をおこなったようだ。
    -冷静に対処を確認した会談とされている。
    -米国は原因究明に協力との報道が一斉に流れた。
 これだけで、なんとなくわかってくるではないか。

孤立した特攻隊員に遭遇か。
 常識で判断してみよう。
 あっという間に船体が二つに分かれたのだから、キール(背骨)が一瞬にして折れたということ。こんな事故は滅多に発生するものではない。
 ミサイル攻撃で大破しようが、内部爆発で巨大な穴ができようが、キールは折れない設計になっており、キールさえあれば沈没しにくい隔壁構造で作られているからだ。
 しかし、それが通用しない例外がある。水中爆発する機雷や、キール折りを狙った魚雷や対艦ミサイル攻撃だ。これらだと一発でもやられる。
 この辺りで考えるのが自然。

 まず機雷だが、可能性ゼロとはいえないものの、考えにくい。
 訓練用に撒いた機雷に接触するなどおよそありえそうにないし、固定してあったものが流れたというのはもっと考えにくい。実戦配備の軍隊がそこまで能力が低かったら張子の虎だからだ。
 そうそう、お話としては、大昔の残存機雷というものもある。徹底的に掃海した上で、何十年も訓練を続けている海域で、そんなものにぶち当たる確率がどの程度か考えてみればわかりそうなもの。
 もっとおもわせぶりなのが、北朝鮮側から流れてきたという説だ。漁業領域でもある海に場所のコントロールができない浮遊機雷を流してどうする。

 そうなると魚雷。
 普通は、この大きさの実戦配備艦船はレーダーとソナーを装備し魚雷攻撃対策がされているもの。敵の存在に気付かずに攻撃され沈没するなどとても考えられまい。
 しかし、盲点が無い訳ではない。1発の魚雷か爆弾を搭載した小型の半潜水艦という超旧式兵器があるからだ。たいしたことはできない代物だが、厄介なのは余程用心していないと探知できないという点。それに、いくら旧式といっても、まともに当てられればひとたまりもない。

 これなら、ありえそうだ。
 例えば、ソナーによくわからぬ反応があり、不用意に巡視し、孤立して立ち往生していた特攻半潜水艦の自爆攻撃に会っただけのことかも。
 もしそうだとすれば、上記の流れは納得できる。

 米国にしてみれば、今、朝鮮半島で問題をおこされ不安定化されるのは大いにこまる。金一族の権力基盤が急速に弱体化しているまさにその時に、北朝鮮軍の攻撃があったと騒いで緊張を煽ることなど冒険主義でしかないからだ。
 北朝鮮軍には神話に拘泥しない若手将校が存在するに違いなく、その層に動きだされたらどうなるか皆目検討もつくまい。
  →  「北朝鮮が崩壊前夜だとしたらどうするのか」 [2010年1月20日]

 どう考えても、原因不明ということで有耶無耶にして様子見が一番。韓国海軍もそれを了解しただけのことではないのか。

素人を惑わす話が多いので、こういう時は要注意。
 ただ、こうした見方が、“常識的”とみなされることはなかろう。“素人の目”からはそう思えないものが、“常識的”とされたりするのが世の中というもの。

 これではよくわからないだろうから例をあげようか。沖縄基地問題の視点での記事だし、話がとぶが、折角だから、触れておこう。“常識的”判断から、米軍高官の本音発言があったと指摘した2010年4月2日付けの記事である。(米太平洋海兵隊司令官が、2月17日の1時間の“極秘会合”で、「沖縄の米海兵隊、主任務は北朝鮮の核兵器の除去」との趣旨の発言をしたという内容。(2))
 情景描写が面白い。・・・“司令官の口から出たのは「抑止力」よりは「朝鮮有事対処」。中台有事に比べ、北朝鮮崩壊時の核が日本に差し迫った問題であることを利用したきらいもあるが初めて本音を明かした瞬間だった。出席者の間に沈黙が流れた。”
 世間の常識で考えると、そうなるものらしい。

 もちろん、ことあれば、韓国外から朝鮮半島に進駐するのは当たり前。この記事はそういう話ではないのである。朝鮮半島対策のために、わざわざ沖縄駐留にするのは何故かを示さずに、それを本音と決め付けるから素人にはさっぱりわからないのだ。
 素人からすれば、緊急対処部隊なら韓国駐留がベストとなる。韓国内駐留では危険というなら、そもそも対処どころの話ではないし。
 ただ、ビジネスマン的に考えれば、至極当然の結論である。韓国は居づらいしお金もかかるが、沖縄は便利でお金もいらない。こんな良いところはないぜとなるからだ。しかし、それは軍隊の考える論理ではなかろう。

 そもそも、海兵隊は、救出作戦のような、特定スポットにヘリコプターで降下する任務を除けば、戦闘地域に近い場所に駐留する意味は薄い。これが素人の常識である。
 開戦したら即時に制空権を確立し、次に、空軍の徹底的な爆撃と巡航ミサイル攻撃により陸上軍事力を壊滅させる。ここが決め手である。陸上侵攻はその後の話。従って、派遣まで数ヶ月かけてもかまわないのである。急派の必然性は皆無。
 これは戦争娯楽映画の世界ではない。戦争遂行のプロが、何の情報も無い北朝鮮に、推測だけで兵員を急送して、拠点作りを敢行するとは思えまい。そこには、いくら貧弱な装備とはいえ、徹底的な思想教育を施された100万人もの正規兵が待ち構えているのである。

 だいたい、対北朝鮮の軍事演習の元締めはSharp韓米連合軍司令官。
 北朝鮮対処に沖縄がどのような意義があるのか検討したいなら、こちらの話を読み込む方が重要では。(3)  (3月の大規模軍事演習に“北朝鮮の大量破壊兵器をとり除くための専門部隊”が参加と表明。(4))
 米太平洋海兵隊司令官の北朝鮮対応話にたいした意味があるとは思えない。有事には沖縄駐留軍がかりだされるという当たり前の話にすぎまい。

 この話は、北朝鮮の体制崩壊の混乱を収めるために、近々在沖縄海兵隊が進駐せざるを得なくなる可能性が高いことを示唆したにすぎまい。

ところで、米軍の沖縄駐留だが、その狙いは自明では。
 話が外れたから、沖縄の話で〆ることにしようか。

 要するに、素人の見方では、北朝鮮対応のために海兵隊が沖縄に駐留する必要は無いということ。北朝鮮有事には、アジア・パシフィックのどこだろうが急遣されるにすぎない。費用の問題を別にすれば、どこに駐留したところでたいした違いはない。

 だいたい、本気で北朝鮮に進駐する気があるなら、寒い北海道での訓練が向いている。亜熱帯に近い沖縄駐留の部隊を、極寒の地にいの一番に投入したいものかね。

 沖縄駐留海兵隊の一番の役割は、台北へのヘリコプター急派だろう。人民解放軍の大挙上陸作戦でも敢行されたら厄介であり、米国は台湾防衛のためにこの備えを怠る訳にはいかない。
  →  「昨今の政治状況を眺めて [普天間問題の先送り]」 [2010年12月29日]

 ただ、視点をもう少し広げると、沖縄の重要性はそれに留まるまい。
 朝鮮半島で一息ついた後の、米軍にとって太平洋地域での望ましい軍事配置とは、ハワイ〜グアム〜沖縄ラインでは。これを完璧なものに、一歩づつ進めることが米国の基本姿勢だと思う。
 将来的には横須賀や厚木も沖縄に集約したいのかも。もちろん日本のお金で。
 片務的な日米安保体制を堅持するため、日本政府はこの暗黙の方針を認めるしかあるまいと見透かされているということ。・・・これが、素人の見方。

 --- 参照 ---
(1) PCC http://www.navy.mil.kr/sub_guide/pds_before/weapon/pcc.jsp
(2) 岩下幸一郎: “米海兵隊:なぜ沖縄に−米軍高官の「本音」 「北朝鮮核が狙い」” 毎日新聞 [2010年4月1日]
  http://mainichi.jp/select/world/news/20100401ddm001010008000c.html
  <上記の引用>
  「沖縄の米海兵隊、主任務は北朝鮮の核兵器の除去」 スタルダー太平洋海兵隊司令官が語る 朝鮮日報 [2010/04/02]
  http://www.chosunonline.com/news/20100402000012
(3) Sharp韓米連合軍司令官の下院サブコミティーでのステートメント [24 MARCH 2010]
   http://appropriations.house.gov/Witness_testimony/MC/Walter_Sharp.3.24.10.pdf
(4) “「北大量破壊兵器除去専門部隊、韓米連合キーリゾルブ訓練参加中」” 中央日報 [2010.03.12]
   http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=127121&servcode=A00§code=A00
(PCC-783の写真) http://en.wikipedia.org/wiki/File:PCC-783.jpg



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