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2010.6.14
 
 


岡田外交の不安感について…

〜 鳩山型外交姿勢は止めたらどうか。 〜
 菅政権が発足したが、岡田外相は続投。実に心配な人事である。能力が無い方だとは思えないが、政治手法を変えない可能性が高いからだ。

 別に、普天間基地や核密約の問題で大騒ぎを仕掛けた張本人だから責任を取れという話ではない。これらをどう問題視しようと、その後のシナリオがありそうなら、誰も心配などしない。不安感を掻き立てられるのは、“正論”だけで動いた気配が濃厚だからだ。
 アジアの軍事バランス感覚や、戦乱勃発のリスクについて、素人感覚とさえ相当遊離している人達の意見を聞くといっても、度が過ぎる。国内政治のために、安全保障を犠牲にされたのではたまったものではない。

 普天間問題でドタバタが繰り返されたにもかかわらず、日米外交が大混乱をきたさなかった理由は、オバマ政権のお蔭にすぎまい。政権交代ができる国になったことをプラス評価していたからだろう。しかし、それが何時までも続く訳がなかろう。
 新首相のもと、リアリズムとかけ離れた鳩山型外交を払拭する必要があるのではないか。

〜 岡田外交が危うい感じがするのは、余りに真面目な姿勢だから。 〜
 なんと言っても心配なのは、すぐにできることと、そうでないことを、仕訳して仕事を進めているように見えない点。これではわかりづらいか。
 真摯に皆で議論して、方針を決めて行きます型の姿勢を示すのは結構だが、その場合は、最優先事項をはっきり決め、議論は予め規定した掌中で行われるようにすべきだろう。それができなければ、日本だけが外交“取引”ができない状態に陥ってしまうのではないか。もっとわからなくなってしまったかな。説明は難しい。

 もともと、国論が割れているものをいくら議論しても結論など出る訳がない。ガス抜きとか、問題化させて動きをつくるという手法が奏功する時もあるが、こと安全保障については、そんなのんびりした動きを基調にしていたら危険この上ない。それなりの体制を敷かないとえらい目にあいかねないのでは。まあ、そういうこと。

 普天間移設の日米合意にしても、F-22の生産中止を反故にさせ、日本に輸出させる位の話でもしているのかと思いきや、やっていることといえば、国内政治への対処だけ。“国民生活優先”だからかも知れぬが、これではこまる。
 海外紙を読んでいると、日本がピント外れの方向に動いているように映るし。
 世界はどう見ても策士だらけ。そんな人達の目からみれば、これは利用し易い国ということになりかねない。気付かないうちに、冒険主義的な路線に乗せられかねないのである。

〜 韓国海軍艦船沈没問題は熟考して対処して欲しいもの。 〜
 素人がこんなことを書きたくなるのは、韓国海軍艦船沈没問題の動きで、以前と全く同じパターンで対処しているように映るから。
 原則論に則り、“真面目に”対処しているということ。間違えないで欲しいのは、今度の相手は同盟国ではないこと。考えに考え抜き、様々なシナリオを立てて、なにがあっても大丈夫という状況で臨まないと、大変なことになる。万一の事態に対応する気構えがあるならよいが、不安がよぎる。鳩山首相のように、気付きませんでしたでは、取り返しがつかない。
まあ、実際のところ、藪の中。 → 「朝鮮半島がきな臭い 」(2010.4.5), 「朝鮮半島がきな臭い [続]」(2010.6.7)

 何を問題視しているか、これだけでお分かりだと思う。韓国政府と協力し、北朝鮮に厳重に対処していく所存というのは、確かに正論。しかし、その後のシナリオがないなら、普天間基地問題と全く同じ姿勢。国民の声を大事にして動くといったものでしかない。
 1年前ならそれでもよかっただろうが。今はそんな時かよく考えて欲しいものだ。
 日本の場合、拉致問題があるから、国内対策として動かざるを得ぬが、リスクを十分評価して進めないと危険千万なのでは。

 日本からすれば、朝鮮総連の送金上限額を抑えるだけの施策は、効果が薄い象徴的なものとの扱いかも知れぬが、北朝鮮からすれば一大事だと思う。2009年の貨幣改革失敗で経済活動がどうにもならなくなっているところに、韓国貿易がゼロとなっているからだ。
 この国は食糧、燃料、電子部品、とすべてを輸入しないと動けない。日本の施策の影響力は小さなものではないだろう。

 それは、米韓大規模軍事演習が予定されているからでもある。軍が対応に出動するだけで、膨大な出費が必要となる。おそらく、その援助を中国に求めたのだろうが、どうも中国は巨大援助提供を見送ったようだ。
 この状態で、米国が再び金融資産凍結に踏み切ったりすれば、金政権はどうにもならない状態に陥るのは間違いない。
 言うまでもないが、財政破綻で物資の輸入が滞った瞬間に、この国家は崩壊する。それもありで動いているならよいが、後から、そんなこと考えていなかったと言われてもこまる。

〜 金王朝が権力維持に失敗した時のシナリオはあるのだろうね。心配になる。 〜
 ともあれ、北朝鮮は風雲急といったところ。この認識がなんといっても重要だと思う。
 開催されたばかりというのに、再度人民会議が召集され、首領自ら登壇して、新人事と「緊縮」生活移行方針を打ち出したという。
 そして、6月4日には、いかにも意図的な、中朝国境での北朝鮮軍の発砲事件。(1)思ったより早い展開である。

 ここまでくると、国家崩壊もあり得るが、それを促進させるか否かが問われているということ。それだけの覚悟での外交を進めているとは思えないから心配だ。普天間の二の舞だけはご勘弁である。
 米国は地理的に離れているからお気楽だし、イラクやアフガニスタンでわかるように、いい加減なシナリオしかなくても平然と国家崩壊に追い込む体質。何の準備もなしに、これに乗せられたらたまったものではなかろう。

 そもそも、安保理事会で制裁への歩をいくら進めたところで、封建的身分制度に立脚する王朝国家だとしたら、姿勢変更などおよそ不可能だ。姿勢を変更すれば国体が維持できないからである。その点では、実りがなくても六カ国交渉一辺倒で、親北朝鮮的に動く中国政府の姿勢は一理ある。王朝崩壊後の政権樹立母体を探るには、交渉しか手がないからだ。もちろん今の手法では、何十年かかるかわからぬ、しかし、直近の国家崩壊だけは断固阻止ということ。それに、人民解放軍には朝鮮戦争での戦友意識が残っているだろうから、国内政治上、北朝鮮の国家崩壊を黙って見過ごすことは無理そうだし。
 もっとも、金一族はそんな中国の考え方は百も承知だろう。

〜 北朝鮮の動きを冷徹に分析することが出発点。適当にではこまるぜ。 〜
 どうあれ、リアリズムに立脚して、北朝鮮の動きをじっくり分析して欲しいと思う。日本にはシンクタンクがないに等しいようだから、簡単ではないとは思うが。
 特にそう感じさせられるのは、報道の主流が、相変わらず、権力継承がらみの話だから。そのことに意味が無いとは言えないが、ピンとこない説明だらけなのには閉口する。
 素人でも知っている、当たり前のことを確認しておこうか。・・・
一般に、独裁者は、執務できなくなった状態に陥らない限りは、ナンバー2をつくらない。というか、出た釘は打つ。血族であろうが、粛清が普通。後継者とされたからといって地位が保証されているものではない。従って、後継者は、既存の権力構造を利用しながら、周到に権力奪取を図っていくことになる。その力がなさそうな後継者が登場したなら、実質的な権力者が別に存在しており、単なる操り人形。禅譲とは、そう見られる方が好都合ということで、作られたイメージと見た方がよい。

 要するに、独裁者のスムースな引継ぎは極めて難しいのである。
 一族メンバーは、独裁者の指示のもと、それぞれが与えられた役割を果たす。それが王朝を安定させるもと。安定していれば、一族外も、独裁者の一族を尊重しながら、体制の維持強化に貢献できる。しかし、ナンバー2が登場すると、乱れが発生するのが普通。どちらを向いて動くべきか、よくわからないから、独裁体制にヒビが入るのである。
 特に、一族内では、地位の変動が生まれるから、一波乱あってもおかしくない。
 だが、それより深刻なのは、権力維持の切り札たる軍事組織の統制が緩まざるを得ない点。組織に不満が溜まっていると、独裁者とナンバー2の微妙な方針のズレにつけこんで、独自に動く勢力が登場しておかしくないからだ。これを外部からみれば、独裁者派v.s.ナンバー2派の抗争となる。しかし、その内実は、王朝の方針を糺そうとの動きが始まったということ。始まってしまえば、どう転んだところで、粛清必至。皆、それがわかっているから、熾烈な抗争に突入する可能性もある。

 そんな目で、北朝鮮の新人事を眺めると、波乱の始まりを告げるものとしか言いようがない。

 2009年の貨幣改革の失敗を謝罪した首相と、副首相3名が解任された。新首相は5月30日の、フレームアップ「糾弾10万人集会」での報告者。さもありなん。
 軍の統制下、現場の政府・党組織が一糸乱れず動く体制へと、さらに強化したということ。その流れに邪魔な勢力は消されていくだろう。
 そして、最高権力機関の国防委員会の人事が波乱の時代突入を物語る。1年ほど前にメンバーになったばかりの、独裁者の義理の弟が、副委員長に就任したからだ。これで、軍内部のパワーバランスが崩れる。早晩、粛清の嵐では。しかし、金一族の資金が底をついていると、逆に潰されることもありえないでもない。不安定化は避けられまい。

〜 “真面目で正直”な外相イメージは願い下げ。 〜
 これだけ語れば、おわかりだと思うが、こんなことを気楽に書けるのは、素人だから。たとえ、これが当たっていれも、外相がこんなこともありえそうなどとは、口が裂けても言える筈がない。それが掟である。
 つまり、“真摯な態度で”、“正直に語ろう”、といっても無理な世界もあるということ。
 深刻な話の最中に、冗談を飛ばせば顰蹙モノかも知れぬが、外相には、その位の姿勢で臨んで欲しいと思う。

 --- 参照 ---
(1) “北朝鮮が中朝国境で中国人3人射殺、外務省が抗議” ロイター [2010年6月9日]
   http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15736620100609
(北朝鮮人事報道) 朝鮮日報日本語版
   “北朝鮮、張成沢氏を国防委副委員長に” 朝鮮日報日本語版 [2010/06/08]
   http://www.chosunonline.com/news/20100608000016
   “北朝鮮人事:「ジョンウン氏の後見人」が前面に” 朝鮮日報日本語版 [2010/06/08]
   http://www.chosunonline.com/news/20100608000017
   http://www.chosunonline.com/news/20100608000018
   “北朝鮮人事:幹部交代、住民の不満をそらすためか” 朝鮮日報日本語版 [2010/06/08]
   http://www.chosunonline.com/news/20100608000020 “北朝鮮人事:忠誠心引き出し「後継体制」固め” 朝鮮日報日本語版 [2010/06/08]
   http://www.chosunonline.com/news/20100608000021
   “北朝鮮人事:「北朝鮮のナンバー2は呉克烈氏」” 朝鮮日報日本語版 [2010/06/08]
   http://www.chosunonline.com/news/20100609000021


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