→表紙
2013.12.9/17 + 人事追記
 
 

北朝鮮の権力闘争激化は必然…

張成沢 国防委員会副委員長が失脚とのニュースが流れ、騒がしいことおびただしい。火付け役は韓国政府筋なので、これまでの例から見て、あてにはならぬ。
もともとフェードアウト中という話ではないかと思うが。王朝の内部分裂にまで踏み込むことは考えにくいからだ。
ただ、そろそろ大粛清はあってしかるべき。

なにせ、停戦協定破棄宣言を行って全軍に緊張を強いたというのに、なんの理由も成果もなく、緊張緩和・外交会話路線へと大転換したのだから。ほとんどの識者は、最初から、いつも通りの瀬戸際路線のブラフでしかないと見ており、そのように推移しているように見えるが、そんな「敗北」路線がはたして可能だろうか。素人感覚では、とても信じられないのだが。
少なくとも、誰かがこの失敗の責任をとらされるのは必定ではなかろうか。

全軍に緊張を煽っておいて、結局のところなにごともなかったですよで手打ちできるものではなかろう。今迄は、首領様が大勝利と内部に宣言するなんらかの材料が必ずあった。それが、カリスマ性発揮の根源でもあった。ところが、今回はその常道から大きく外れてしまった。全軍に戦争前夜体制を命ずるなど、桁違いの強硬姿勢を見せたにもかかわらず、状況は何も変わらず、なし崩し的に矛を収めて穏便に済ますことにしたのである。少なくとも、軍首脳部の面子丸潰れは間違いなかろう。説明のしようがないからだ。
しかも、姿勢を転換して積極外交を仕掛けても、米国は無しの飛礫。一体、なにをやっているのかと軍部から批判の嵐が巻き起こるのは必定。それに、盟友ともいえる、ミャンマー、イラン、シリアの状況変化が加わり、キューバでの失敗も重なり、対外関係再構築不可避状況。すでに、特権階層たる外交官の締め付けを始めたことが知られていたが、路線闘争が発生しておかしくなかろう。それは、遠からず、腐敗摘発という名目での、粛清の嵐を呼ぶことになる。この手の政体の国では、首領様への絶対忠誠確認作業と並行しない限り、路線転換などできないからだ。

その切欠は中国が種を蒔いたとも言える。中国共産党主席自ら、崔竜海 軍総政治局長に対し、北朝鮮の核兵器保有を認めない旨、直接口頭で伝えたと報じられているからだ。これが本当なら、北朝鮮の対中国外交は失敗だったと総括する以外に手はなかろう。なにせ、若い首領様の"正当な"継承を象徴するのは、核兵器とミサイルなのは自明だからだ。これが否定されたら金王朝の基盤が揺らぎかねない訳である。
こうなると、金王朝への絶対忠誠を旨とする軍は、中国との対決もありうるとの決意を固めるしかあるまい。それは、対内的には、中国と組んで、開放経済を模索する勢力一掃の動きに繋がることになろう。
経済発展のために、自由経済に向かって歩を進めようとしたようだが、核兵器/ミサイルの軍事体制維持のために、軍部を切ることはできず、逆噴射せざるを得なくなったということか。軍事独裁体制強化の道を歩むことになるのだろう。
  → 朝鮮半島不安定化か(2013.10.6)

ということなら、「労働党指導」による、行政による経済立て直し路線から、以前の「先軍政治」への回帰を意味する訳だ。
といっても、これからの「先軍政治」の主体はパルチザン世代ではなく、核兵器・ミサイル主導の軍部若手。強硬派ほど英雄とされる風土が蔓延する可能性もありそう。ともあれ、この先、波乱なく済ませるのはとうてい無理である。

先ずは、中国人民解放軍(東北)の幹部とツーカーの仲を利用した経済利権で潤った層が槍玉にあげられる可能性が高かろう。それが済めば次がどうなるかは、容易に想像がつこうというもの。
その過程で、やむを得ず、張成沢 副委員長軟禁にまで踏み込むことはありえよう。

******よくわからない北朝鮮の政治組織******
【最高権力者】・・・金正恩 首領
 │ 「先軍政治」では、首領管轄の実質的最高権力機関だった。
【国防委員会】 (党政治局 常務委員会が最高権力機関化か。)
 [2013失脚の噂]---張成沢 副委員長
 呉克烈 副委員長

【朝鮮人民解放軍】
 崔竜海 総政治局長
 李永吉 総参謀長
 [2012〜の更迭]---李英鎬, 玄永哲, 金格植

【実質首領直轄】
<軍事指導部門>
 金元弘 国家安全保衛部長
 張正男 人民武力部長
 [2012〜の更迭]---金永春, 金正覚, (金格植↑)
 [2013解任]---禹東測 国家安全保衛部 第1副部長
<警察部門>
 崔富日 人民保安部長
 [2011〜の更迭]---朱相成, 李明秀
<諜報活動部門>
 −−− 作戦部
 [2012〜の更迭]---金明国, 崔富日, (李永吉↑)
 −−− 統一戦線部
 −−− 対外連絡部
 −−− 対外情報調査部
 −−− 宣伝扇動部

【朝鮮労働党】
---中央委員会---
<政治局 常務委員会>
<中央軍事委員会:"かつては名目的だった。">
<秘書(書記)局>
 金敬姫 秘書/軽工業部長(金正恩叔母,張成沢夫人)
   (前軽工業部長は現首相)
 [引退間近では]---金基南 秘書
 金養建 対南担当秘書(統一戦線部長)
 金英逸 国際担当秘書
 郭範基 経済担当秘書
 朴道春 軍需担当秘書
<思想人事部門>
 ファン・ビョンソ 組織指導部第1副部長
<行政部門>
 朱奎昌 機械工業部長
 金成男 中央委員会副部長
 −−− 計画財政部
 [2013粛清]---李龍河 第1副部長
 [2013粛清]---張秀吉 副部長
<不詳>
 パク・テソン 副部長
 ホン・ヨンチル 副部長
 ホン・スンム 副部長
<対外部門>
 金永日 国際部長

【行政府】・・・朴奉珠 首相(2013年4月1日〜)
 盧斗哲 副首相
<外交>
 姜錫柱
 朴義春
 金桂冠 第1外務次官
 李容浩 外務次官(6カ国協議)
 朴吉淵 外務次官(国連総会)
 全泳進 駐キューバ大使(張成沢義兄)
 張勇哲 駐マレーシア大使(張成沢甥)

【最高人民会議】・・・金永南 常任委員長
 ・形式上は国会である。名誉職的なものでは。
 [引退間近では]---崔泰福 最高人民会議議長

---人事の追記---
16日に平壌太陽宮広場で開催された「朝鮮人民軍誓師大会」では、崔竜海軍総政治局長がリーダーであることを公然化させた。表の行政上軍組織としては、張正男 人民武力部長(徐鴻賛 第1副部長、尹東玄 副部長)が支えていると見られる。李永吉 総参謀長がその下での実行部隊という組織編成のようだ。
金正日逝世両周年紀念日に当たっての弔問リストに登場する名称は、長老の金国泰、続いて、崔龍海、金己男、金元弘、金平海、李載、黄炳誓、馬元春。13日に金国泰逝去報道があったが。裏組織の統括者たる金元弘 国家安全保衛部長が重用されている。
尚、行政府では、盧斗哲 副首相は地位継続の模様。

 政治への発言の目次へ>>>    表紙へ>>>
 
(C) 1999-2013 RandDManagement.com