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2014.3.19

米国はウクライナで何をしたいのか…

Googleニュースの「テクノロジー」の項目に、IT業界オタクしかわからないような表題が並ぶことは珍しくない。もちろん、大多数の一般人にはどうでもよさそうな瑣末な情報の記事。まあ、Googleの編集方針とはそんなものということで諦めるしかない訳である。

しかし、この手の発想で政治記事も扱われているのだろうから、コリャ、たまらぬ。しかし、こちらも、どうにもならない。
と言っても、日本の新聞社のニュースをピックアップするだけだから、質はほとんどかわらぬかも知れぬが。

小生がいささか気になったのは、以下のような記事を読むように仕向けられていそうな感じがした点。
  「ハンガリー動乱・プラハの春…
    露の介入でよみがえる記憶

     (2014年3月18日07時17分 読売新聞)

言うまでも無いが、冷戦時代になぞらえた記事。読むまでもなく中身が想像できる。この内容がウケそうということなのだろう。しかし、この手の手法はいい加減止めにして欲しいもの。
国際感覚を失わせかねないからだ。
それは一般大衆だけではすまない。自国民の評判ばかり気にしているような政治家は、この手の報道が多いと、そうした見方に従って動くしかなくなるからだ。オバマ大統領など、その典型かも。ウクライナ問題では、原則論的発言と、曖昧なスタンスの制裁をちらつかせるだけ。リーダーシップ発揮どころではないから、今のままなら無策の大統領とされかねまい。

プーチン政権の権力基盤は旧KGB。その組織力で、エネルギー産業を手中に収めた。その結果、ヒト・モノ・カネを動かせる力を獲得したので、権力の座に座っていられるということ。それ以上でも、以下でもなかろう。
しかし、安定政権なのは間違いない。代替勢力が存在しないからだ。と言うのは、この国は、共産党の仕組みが津々浦々まで染み込んでしまったため、仲間内での利権配分機能による統治以外に、治める方法がないからである。海外資本流入を認めているものの、利権の温床である産業に拡大することはない。そういう国である。
見かけ上、普通選挙が行われてはいるものの、西欧的な民主主義国家の構造とはほど遠いことは押さえておくべきだろう。
当然ながら、反ロシアの動きが旧ソ連圏で発生したとなれば、「国体護持」のために、即時、軍事侵攻となる。流石に、米国との直接の戦乱だけは避けるが、そうでなければ武力行使に何の躊躇もなかろう。西欧的民主主義国家とは感覚が違うのである。
そもそも、ソ連邦崩壊と、この姿勢はなんの関係もない。ロシアは大国病から脱した訳ではないし、国家社会主義の残滓はそのまま抱え込んでいるのだから。もしも、動きを静観しているとしたら、それは単に無い袖は振れないというだけ。

繰り返すが、米国がどうこう言おうが、武力侵攻に躊躇するなどあり得ない。

バルト3国が、反ロシアに映らないように、重々注意を払って動いて、ソ連邦からの独立を果たしたのを知らない訳でもなかろうに。・・・言うまでもないが、こうした国々でもロシア住民は少なくないのである。ロシア人が抑圧されているとなれば、軍事侵攻もあり得たということ。
にもかかわらず、ウクライナはそういう配慮が全くできないのである。そうなるのは、親露だろうが、反露だろうが、支配層は、ソ連時代の文化をそのまま引き継いでいるから。西欧的感覚では利権漁りの腐敗しきった人達だらけ。しかし、それが当たり前の社会であり、すぐに方向転換は無理。いくら西欧が梃入れしたところで、ポーランドのようには絶対になれないのである。だからこそ発展途上国のまま。

おわかりになれるだろうか。ロシアが冷戦時代の対応に戻り始めたとの指摘は不毛という意味が。
言ってみれば、冷戦時代の、単純な敵味方発想に戻ったのは、オバマ政権の方では。それを後押しするのがマスコミの報道という図式。こまったものである。
  → 「米国の狙いは世界不安定化か」 [2014.3.12]

こんなことを言われてもさっぱりピンとこないなら、オセチアを思い出すとよかろう。
その後、どうなったのかネ。マスコミは無関心を装っているから、情報が乏しいが、おそらくロシアのパスポートが発行される地域ができている筈である。ロシアが後に引くことはありえない。

まず押さえておくべきは、冷戦体制は完璧に崩壊している点。鉄のカーテンは無くなったのである。
今やロシアの輸出の過半は「自由主義圏」たる欧州であり、ロシアが欧州にガス禁輸でも始めれば、欧州経済はガタつく訳だが、ロシア経済も即メタメタになるのは必定。相互依存はことのほか進んでいるのである。米欧が金融制裁でもすれば、英米金融機関に膨大な資産を抱えているロシア支配層は力を喪失するが、それ以上ではない。その結果、プーチン政権が倒れでもすれば、より国粋主義的な勢力が力を持つようになるだけだろう。米国はそれを望んでいるのか。

ロシアはその風土上、大国路線で行かなければ政権は持たない。米国は、それを踏まえて、現実主義的に対応して欲しいもの。

米国もかつては、世界の安定を考えて動いていた。と言うか、大統領が冷静に判断を下していたのだと思われる。
ウクライナ問題が昔はどう報じられていたか、見返してみるとよかろう。
小生の記憶では、ブッシュ(親爺)大統領はウクライナの政治家に対して、ロシアを刺激するようなことはヨセと言い放ったことがあった筈。大混乱になるから、民族主義を持ち出すなと、釘を刺したのである。もちろん評判悪しである。
皆さんご存知なのは、イラクのフセイン打倒方針拒否だろう。こちらも、ブッシュ大統領支持者に矢鱈に評判悪し。政権打倒に立ち上がったシーア派を見捨て、フセインの餌食にしたということで。
だが、これこそが、現実を直視する、まともな大統領の仕事とはいえまいか。

これに対して、オバマ流政治とは、ポーランドやプラハの春を持ち上げて、民衆から喝采を受ける流儀に映る。そんなもので、社会を変えられると思っていなければよいのだが。それに、このやり方は、マスコミ受け狙いに堕す可能性が高い点も要注意である。下手をすれば現実世界とは遊離した施策を打ち出しかねないからだ。
米国の政治家達が幻想の政治に陥っていなければよいが。
そう思うのは、ソ連圏崩壊を導いたのは、プラハの春ではなく、ハンガリーの指導者の卓越した能力と見ているからでもある。
革命的動きで高い代償を払わされた苦い歴史から学び、外交「力」で時代を転換したのである。言うまでもなく、ゴルバチョフとのトップ会談で軍事侵攻無しとの確約を得たこと。これが結節点だった。当たり前だが、民衆の前で、それを誇って演説するような真似をする訳がない。


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