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2017.4.27

耳目集めしかできない大統領

"いよいよ"と言えば、日本だと"ゴールデンウイーク"と続けたくなるが、米国政治だと29日がトランプ政権発足100日目となる。恒例の評価話満載の日。

しかし、その前の28日で、評価がはっきりする。

その日が、暫定予算の期限日だからだ。共和党内の反対者ゼロでも、民主党議員の一部から賛同を得なければどうにもならない。
今後も、実質的にはなにも動けない状況が続く訳である。未だに、政府高官の承認もさっぱり進まない。例外は、空席だった最高裁判事選任のみだが、この結果、さらに混迷が続くことが約束されたようなもの。

結局、行動力ありに映ったのは、簡単にできる"TPP離脱"位のもの。米中首脳会談に至っては、長時間を潰して、なんの成果も発表できずである。
移民規制はできないし、大々的に掲げた国境障壁策も進まず。オバマケアの見直しは掛け声だけで終わったし、中国は為替操作国ではないと認定とくる。
言っていたことと違うことだらけで、支持者以外から見れば、お笑い芸人の瞬間芸を見ているかのような気分であろう。

それに、大幅減税を約束したところで、財政的に手品はきかない訳で、これもどうなるか。

マ、ともあれ、ワシントン・ポストとABCニュースが、先週、世論調査結果を報じている。["Nearing 100 days, Trump’s approval at record lows but his base is holding"WP By Dan Balz and Scott Clement April 23]
識者が言っていた通りの社会分断状況が確認された。・・・Approval rating:42%、Disapproval:53%である。これは合計数字であり、実は、トランプ支持者は94%が評価しているのだ。投票を後悔している人など、2%に過ぎず、新大統領を熱烈に応援している訳だ。ともあれ、既存政治打破に繋がるなら、それで結構ということであろう。

ただ、"分断"状況を知るなら、PEW RESEARCH CENTERの数字の方が見易い。・・・
[Early job approval ratings for recent presidents]
【オバマ_】
 _合_計__ 61%
 共和党支持者 28%
 民主党支持者 86%
【トランプ】
 _合_計__ 39%
 共和党支持者 82%
 民主党支持者 _7%
[Demographic differences in views of Trump's job performance] approval v.s. dis.
 白_人 50%・・・44%
 黒_人 14%・・・81%
 Hispanic 17%・・・78%
[Widespread belief that Trump is too impulsive in making decisions]
 _合_計__ 63%
 共和党支持者 30%
 民主党支持者 87%
[Majority says GOP is ‘mostly divided’; nearly half say the same of Democrats]
 共和党支持者 68%
 民主党支持者 48%

[Party favorability 2016⇒2017]
 共和党支持者の共和党評価 58% ⇒ 74%
 民主党支持者の民主党評価 80% ⇒ 70%
[Congress favorability 2016⇒2017]
 共和党支持者の議会評価 31% ⇒ 44%
 民主党支持者の議会評価 32% ⇒ 27%
(source) "Public Dissatisfaction With Washington Weighs on the GOP─Ryan job rating at 29%; Republicans view their party as divided" PEW RESEARCH CENTER APRIL 17, 2017

この状況では、民主党議員も、おいそれとトランプの動きを承認する訳にもいくまい。
そうなると、オバマ政権以上に、綱渡りが続く政権かも。

結局のところ、耳目を浴びるような事項で、大統領が勝手にできそうなことといえば、外交と軍事だけとなる。内政志向で行きたいのに、一歩進むことさえ多大な困難に遭遇する訳で、支持者を繋ぎとめておくためには、この分野で注目される動きをし続ける以外に手はなかろう。

そういう文脈で、シリアに関与せずのトーンを180度転換して、シリア直接攻撃を行ったと見ておく必要があろう。
しかし、結局失敗。[→]
と言うより、大失敗。
なにせ、米露関係に決定的な亀裂をもたらしたことを自ら認めたのだから、お話にならない。この先、延々と内乱が続くことになろう。もっとも、それを大いに喜ぶ国もある訳で。その観点なら、大成功ということになる。

この結果、背に腹を替えられずになり、「時代遅れ」と見なしていたNATOを、突然、"そんなことはない"と180度転換する発言になるのだから、呆れかえる。

とは言え、トランプ政権の、いかにも"米国的な"国家安全保障会議メンバー達はシリア攻撃に雀躍したであろう。言うまでもないが、マクマスター安保担当補佐官、ダンフォード統合参謀本部議長とコーツ国家情報長官である。オバマ前大統領は、越えてはいけない一線を明示しておきながら、結局、何もしなかったからである。覇権国を任じ、世界の安定に少しでも責任を感じているなら、絶対にとってはならぬ姿勢を見せたトンデモ司令官だった訳だが、新司令官は違うことをどうしても示したかったのであろう。
(尚、5日に、議会と波長が合う筈がない、既存組織打破を掲げる異端的右派のスティーブ・バノン首席戦略官が外された。)

北朝鮮にしても、軍事圧力をかけ続けないと危険なのは当たり前。(パルチザンによって独立を果たした国家であり、勝てるチャンスが見えたら即侵攻だからだ。)
しかし、いくら圧力を強めたところで、軍による南朝鮮の解放が目標なのだからどうにもならない。(パルチザン戦法とは、負け戦はせずに逃亡。いつまでもゲリラ戦が続くのである。)
アメリカ単独でも問題解決などと強がりを言ったところで、なにもできない。いずれ、北朝鮮は核実験も行うだろうが、それは米国対応という訳ではなく、北朝鮮内部の事情で決まるだけのこと。米軍に戦争遂行能力はないから、どうにもならないのである。もっとも、朝鮮半島がアフガニスタンのようになれば大成功と言うなら別だが。オバマ政権のお蔭で、ドン詰まりで、手の打ちようがないのである。

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