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■■■ 上野動物園の見所 ■■■
2015.8.11

「クマたちの丘」の印象

上野動物園には、「クマたちの丘」と名付けられた区画がある。他の動物園の状況は知らぬが、おそらく、熊用としてはかなり立派な施設と言えるのではないか。もちろん、猫を被った熊を除外しての話。
しかし、この場所を取り上げるのを躊躇してきた。熊だからである。
多摩の超立派な「アジアの平原」の狼一族を見て、益々そうなってしまった。 [→2013.5.3]

ただ、アルビノではない白熊君について書いてみたことがある。
  「雪夫翁逝く」[2014.11.27]

この感覚おわかり頂けるだろうか。

施設がどうのこうのという観点では、雪夫翁の棲家は世界標準からするとたいしたものではないというか、今、そのレベルの施設を造ったりすれば批判される可能性の方が高かろう。
しかし、そんなことはどうでもよいのである。どう見ても、愛情に囲まれた生活を送ってきたように映るから、見物人としても楽しいということ。

一方、多摩の狼は、名前は付けてもらってはいるが、そのような境遇にいないことを目が訴えている。これは種の違いによる話ではない。
古くて狭い施設に住んでいた頃は、始終喧嘩をしていたが、生き生きと感じさせる視線を乾物人に浴びせかけたりしたもの。その誇りが生活を支えているナと感じさせていた。
多摩動物公園の魅力は、敷地の広さと丘陵的な地形によるところが大きいが、それを活かして、動物たちのそんな姿を引き出した点にある。ところが、残念ながら、狼だけは違ってしまったのである。
今や、小生にとっては、眺めに行くこと自体が苦痛な、"立派な"施設でしかない。そこには、狭いコンクリートの檻に閉じ込められ、二本足で立ち上がって鉄柵の棒を必死になって掻き殴る姿があるからだ。情けなさそうな声をあげるから、つい見てしまう訳だが、そうすると、訴えるような眼でこちらを見つめる。とても直視できるものではない。

言うまでもないが、これはあくまでも、小生が受けた印象に基づいた、勝手な判断。実態はわからない。

実は、クマの場合、この多摩の狼のように生気のなさそうな姿を見せることが多いのである。かわいそうで、とても書く気にもなれない。
ご存知だろうと思うが、同じところの行ったり来たりを延々と繰り返すのである。猫族のテリトリー巡回臭い付け行動とは違って、いかにも精神的に病んでいるように映るので見ているのがえらく辛い。
一般には、クマは餌を探しながら長距離を歩く習性があるため、どうしてもそのようになると理解されている訳だ。従って、上野動物園のクマ達もそのような行動を見せることはある。しかし、それほど目立たないのである。何故かと言えば、それ以外の動きが多いからだ。それは施設が立派だからということではない。おそらく愛情。
ここのクマは日々愉しみを発見しながら、誇りをもって生活しているように映るのだ。明らかに、生活に張りを持たせる工夫がされているということ。それは大変な労力が伴うに違いないが、それこそが伝統なのだろう。

まあ、こんなことを書きたくなったのは、ニュースで上野のツキノワグマが取り上げられたから。
もちろん、動物園話は好まれるから、今迄も時々報道されてきた訳だが、異常事態でもない限り、クマが対象になるのことは滅多にない。日本では珍しい動物というより、そこらの山々に大勢棲んでいるのだから当然だろう。
なにせ、奥多摩ならJRの駅から徒歩数分の道を早朝歩いていておかしくない状況。裏山に近い農家だと、いかにコヤツラから作物を荒らされないようにするか頭を悩まされているのが実情。(本来なら、里に出てくる熊は有無を言わさず射殺が礼儀であり、山で増えすぎたら狩猟で減らすのが鉄則。それが可能でこそ両者は平和共存できると思うが、そのような合理主義が通る社会ではない。)

長々と前段話が続いてしまったが、そのニュースの元ネタは以下。
  上野動物園[公式]Twitter@UenoZooGardens 2015年7月19日
中身は、木を枕に大の字になり腹丸出しで爆睡中のツキノワグマの写真。大いに笑わせてくれる一枚。

そう、観客が少ないとこういうことはある。餌を取りに人工的な2階にやってきて、食べ終わったらしばしリラックスということはあるのだ。そこは、地上のガラス窓から見にくいから人目が届かずのんびりできるのだと思う。但し、丁度その高さからオープンに見えるような構造。
但し、そこは広い割に観客がいないことも多い。そんな時に一人で静かに眺めていたりすると、必ずといってよいほど、熊と目が合う。それは気分悪しのようで離れていってしまうが。
しかし、そこなことがなければ、2階で寛ぐ姿を見ることができる。

ここのクマ君達は、結構、リラックスする時間をもっているということ。それに遊んでいることもある。ツキノワグマ君の場合はこんな感じ。
 よじ登る時は嬉しそうである。
  ただ、見物人が多いと目立つので避ける。
 ヒトの視線にはかなり敏感。
  見物人が多いと、できるだけ遠ざかるようだ。
 しかし、特定のヒトを凝視する癖がある。
  おそらく、飼育員さん的ヒトの到来期待から。
  目が合う。
 稀だが、観客をのんびり観察していることがある。
  気にかかる子供を発見したと思われる。
  幼稚園児の団体が好きな訳ではなさそう。
 ゴロゴロして休息するのは好きである。
  但し、それは人目に触れぬ静なところ。
 餌探しは一番の遊びでもある。
  犬より高度かも知れない。
  二本足立ちも楽しそう。
  多分、餌あっての、玩具。
 お定まりの徘徊行動の場所は決まっている。
  一番見にくい所。そのうち止める。
【ニホンツキノワグマ】♀ウタ,♀クー,[♂ソウ,♀タロコ→多摩@2015年4月]
尚、近隣住居者<ホンドタヌキ>は姿を見かけないから人気薄である。

お隣のヒグマも印象を書いておこうか。
 大型で黒茶糸の深い毛で覆われていて
  いかにも強そう。
  体の大きさを誇示するかのように、
  時々、二本足立ちを見せる。
 凶暴な性格の可能性が高い。
  突然やってきて、
  眼前のカラスを猛然と叩き始めたことがある。
  じっと見つめるのが不快なのだろうか。
 ヒトを直視することがある。
  なにに関心があるのかはよくわからない。
 森林棲息と言われるが、
  その特徴がどこに現れるのかわからず。
  寝ていることが多そう。
 食べっぷりは雑である。
【エゾヒグマ/蝦夷羆】♂ポン&♂ポロ

せっかくだから、マレーグマも。
毛並みの良い大型黒犬を丸々と肥らせて首なしにしたような体躯。ツキノワグマの子供と間違いかねない。
 敏捷性がなく、しょうがなく起きているといった風情。
  もちろん、美味しい餌にありつけるから。
 観客、同居者、烏には無関心。
  餌の争奪意識は皆無。
  ただ、それとなく視線を送ったりするようだ。
 一見、「なにがなんでも食べ物」体質ではなさそう。
  見かけ、やる気がなさそうだが、
  結構、探索を兼ねた散策を楽しんでいそう。
  餌の存在に気付くと必ず食べに行く。
  かなり無理な姿勢が必要でもとことん頑張る。
  食事の仕方にはこだわりがありそう。
  明らかに果物好き。
  果物の美味しい部分だけ食べるから、美食家かも。
  なにせ、旨味を、瞼を閉じて味わっているのだ。
  ペレットは今一歩のようだが、一応食べる。
  器用である。ボソーとしているが頭はよさそう。
  気分が乗らないと、
  餌がなくなり次第室内に帰りたがる。
【マレーグマ】 ♀モモコ+♂アズマ [♂フジ→熊本2014年11月][♂ウメキチ→円山2011年]
同居者(樹上)<ハクビシン>は時々しか地上に登場しない。柵でしきられている同居者(お隣)<コツメカワウソ>の方は、餌があったりすると活発に動くので人気者。両者ともに、別な場所で見ることができる。

泳ぐ白色巨大熊は別格である。こちらにも触れておこう。
白いので、顔形は見易いのだが、10頭身なので特徴をつかむのは難しい。一部の毛の色で個体識別できそうにも思えるが、毛が生え変わるとそうもいくまい。
 視力と認識能力は抜群であるのは間違いない。
 気が向けば、一人遊びに興じるし、ヒトに関心も示す。
  おそらく、飼育員さん好きなのである。
 日課となっている餌やり時間はえらく楽し気。
  水中観察の人達をからかいに来たりする。
【ホッキョクグマ】♀デア+♂イコロ(←帯広@2015年4月)

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