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観光業を考える 2005年12月12日
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表参道のビル探訪…

 汐留にはガラスビルが目立つが、そんな流れがあるのだろうか。
  → 「汐留ビル街探訪 」 (2005年12月5日)

 などと考えていて、ふと南青山の新しいビルを思いだした。

 「プラダ・ブティック青山店」(1)のことである。
 見た瞬間、これは何だという感覚に襲われる。
 但し、周囲に植えた草が踏まれて、すぐに剥げたりして、地域の状況を余りわかっていない建築家が設計した感じがする。そんな欠陥はあるが、これは間違いなく現代建築の逸物といえよう。

 ブランドショップだから、こんな挑戦ができたといえるが、南青山という土地柄だから映えるという面もある。

 ここは、業界人なら知っている。電話番号03-34xx-xxxxの世界である。クリエーティブ性が好まれる土地柄である。住民もそうだが、働く人もそうした嗜好の人が多い。個性を愉しみたい人が歩き回っていると見てよいだろう。
 なんでも品物を揃えようとする、デパートは嫌われる街だ。当然ながら、新陳代謝も激しい。

 日本は、こうした街の息吹を広げていく必要があると思う。

 話はとんでしまったが、「プラダ・ブティック青山店」以外もガラスを重視したビルが次々と登場している。

 お薦めは、「ディオール表参道ビル」(2)
 夜の照明が素敵なのだ。これぞ都会といった感じがする。
 隣が日本風中国調の「オリエンタルバザー」の奇妙な建物なので、昼間は違和感が気になるが、夜ならそんなこともない。気分に浸れる。

 そうそう、こんなブランド訴求ビルに対抗したビルもある。
 「日本看護協会ビル」だ。
 黒川紀章氏の設計ということで知られている。
 ガラスのとんがり帽子のような形が目立つが、なんといっても驚きは、ビルの中間が吹き抜けており、広い階段があり、その上に空が見える点。恐ろしく贅沢な空間の使い方である。
 町並みの平板化に反旗を翻したコンセプトなのだろうが、「プラダ・ブティック青山店」のようなグサリと突き刺さる感覚ではない。正直なところ、この建築だけ見てもちっとも面白くない。
 面白さは、街で様々な主張のビルが並ぶ点にある。

 表参道には、もともと、石垣のような「ポールスチュワート」や、四角な硝子箱を積み重ねたような「ハナエ モリ」といったビルが並んでいた。こうした個性が嬉しいかった。これが原点だろう。
 デパートのテナントスタイルの店が並んだら、それだけで台無しである。
 常に、新しい息吹を導入してこそ、街が保てる。
 その点では、「日本看護協会ビル」(3)は間違いなく喝を与えてくれた。

 もっとも、安藤忠雄氏設計の同潤会アパート跡(4)の「表参道ヒルズ」(5)が、この流れを受け継ぐものと言えるかはまだ未知数である。
 延々と続くガラスの壁のビルが、クリエーティブ性を鼓舞するものになればよいのだが。

 老舗を呼びこんで、青山が銀座のようにならないことを願う。

 銀座もファッションブランドが集まっているし、新しいビルもできているから、同じような流れと見る人もいるが、根本から違うと思う。
 銀座通りを眺めるとよい。思わず、その貧困さを感じてしまう。ビルが雑然と並ぶだけの街並みとしか言いようがない。銀座らしさを感じるのは、4丁目角の和光位のものではないか。
 この街が日本を代表する商店街らしいが、そんな説明は勘弁して欲しいものだ。
 ちなみに、筆者は、海外からの訪問者には、銀座とは“金をばら撒く”場所で、欧米の商店街とはコンセプトが違うと話すことにしている。

 資生堂が入っている汐留のビルは素敵だが、8丁目の「東京銀座資生堂ビル」(6)の方は残念ながら期待外れだった。外壁の材料が凄いのかもしれぬが。それだけ。
 狭すぎて人が溢れるため、どうしても貧弱感を感じてしまうのだ。重々しい外装に比べて、アンバランスすぎ、ちっとも愉しくない。
 もっとも、そんなところが銀座の本質かもしれない。常に、商業資本的な発想であり、資生堂のような贅沢なお金の使い方は嫌う風土がありそうだ。当然ながら、ここは青山のような創造性を愉しむ場所ではない。

 もっともそのお陰で、異端児が街を引き締めている。

 3丁目の「アップルストア」(7)のことである。外見を眺めるより、まずはエレベーターに乗るとよい。
 メーカーの商品陳列ビルではないし、広告のロゴを掲げるビルでもないことを実感させられる筈だ。企業のアイデンティティを伝えるビルなのである。
 そんな時代が来ている。

 --- 参照 ---
(1) http://arch.cside.com/f-pradaaoyama.html
  http://homepage.mac.com/hayashu/pra/body.html
(2) http://homepage.mac.com/hayashu/dio/body.html
(3) http://www.rs.noda.sut.ac.jp/~masato/ca_g/review_35/
(4) 旧同潤会アパート http://homepage.mac.com/hayashu/dou/body.html
(5) http://www.omote-sando.com/Default.aspx?ID=5615
(6) http://www.shiseido.co.jp/ginzabld/html/
(7) http://www.apple.com/jp/retail/ginza/week/20051113.html


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