■■■■■ 2011.1.11 ■■■■■

 2011年最初から暗い話

〜 危機本だらけ。〜
 久しぶりに、書店の平積み本のタイトルを眺めたのだが、ビックリマークだらけ。2つマーク付きまである。危機大合唱の感。
   「史上最悪の大破綻 !!」
   「本当の危機が始まる !」
   「ソブリン恐慌の年になる !」
   「ユーロ大炎上 !」
   「金は暴落する !」
 もちろん、中国異変を扱ったものも。ただ、こちらはおとなしい。
   「チャイナクライシス」
 中国は国が大きすぎるし、余りに多様だから、本当のところはわからないということか。最重要貿易相手国なので、嫌な話など聞きたくない人が多そうなので、穏やかな表現にしたのかも。
 上海在住者から頂いた年賀状に社会不安感が吐露されていた位だから、矛盾が表面化しつつあるのは間違いなさそうだが、独裁国でそれがどの程度大きな問題に繋がるのかはよくわからないところ。もちろん、住宅バブルが破裂すれば大事だが、自由経済ではないから、その気になれば、無理矢理防ぐことも可能。ただ、その場合、無理な経済成長を続けることになり、世界の食糧需給切迫を引き起こすことになろう。そうなれば、中国も含め世界中の発展途上国で食糧暴動頻発は避けられまい。そうした反政府騒乱が何を引き起こすかは想像ががつきかねる。歴史の教訓では、軍事独裁政権の場合、徹底弾圧以外に手はないが、同時に問題を外に転嫁し延命を図ることになるもの。まあ、余り考えたくない展開だが、ありうる話。

 それはともかく、こうして題名を並べて見ていると、気になるのは、“米国一大事”型表現が下火という点。日本の安全保障は米国軍事力依存だから、米国には、なにがあろうと、なんとか切り抜けて欲しいという願望でそうなっているのでなければよいが。どう見ても、中国に比べ、米国経済が安泰ということでもなさそうだし。米国の状況は、冷静に眺めておく必要があろう。要注意はオバマ政治の行き詰づまり。“他国のことにかまうな”勢力が議会で力をもってしまったから、世界経済縮小に繋がる動きが起きない保証はないのだ。
 マネーが世界を巡っている時代である。一国の国民経済を前提とした施策が奏功することは稀。しかし、民主主義国家は、経済不調になれば、内政重視にならざるを得ないから、米国がおかしな方向に進んで自らの首を絞める可能性は否定できないということ。

 ともかく、バブルは世界のどこかで弾ける。それに直接関係していなくても、その余波は甚大。内政に力を入れたところで、その余波の影響の方が大きいという事でもある。 そういう意味で、世界はクライシス目前というのは確か。しかし、それだけの話でしかないともいえる。
     「The optimistic doomsayerに期待が集まる時代」 [2010.11.22]

 一方、国内危機モノも溢れかえっている。“破産”、“破綻”、“地獄”、“余命3年”といった用語が目にとまる。それぞれ何を意味しているのかはわからぬが。とうの昔、財政は破綻している訳で、それを改まって指摘したところで、今更感のみ。
 年金・保険の一人当たり支払額抑制、とりあえず1〜2割の消費税実現、無駄遣い阻止、といった提案がされるのだろうが、今やその程度で解決できる問題ではなかろう。もうガラガラポンでしか対応不能だと思われる。
 もともと、そうなることは、ずっと前からわかっていた。ただ、政権交代で超大型政府政策が始まり、早めにどうにもならなくなってきただけ。期待通り。
 -人口動態上、大きな政府路線は破綻する。
   ・急速な人口減少 (70万都市が毎年1つづつ消滅する勘定か)
   ・そのうち、助けが必要な層が早晩3割以上に (65才以上が3割以上に)
   ・若年労働人口減少で低賃金単純労働力不足の深刻化
   ・企業は国内投資を圧縮 (成長が期待できる海外投資を重視)
   ・国内雇用余力は低下一途 (税金浪費型雇用だけ急膨張)
   ・名目所得は減少し、個人貯蓄取り崩し段階に突入
 -新陳代謝阻止の産業政策続行で、経済は悪循環に落ち込む。
   ・資本コスト割れ中小企業続出
   ・早晩、中小企業貸出の不良債権化が表面化
   ・国内金融機関の商売は国債運用に傾斜 (貸金機能の不全化)
 これからの変化は速く、しかも加速すると思われる。従って、時間稼ぎ的な政策を打ったところで、無駄な努力。

 ・・・本屋に並ぶ“危機”本が、なにを主張したいのかは知らぬが、“大変だ”と叫んでなんとかなる時代は終わったと見た方がよいのでは。

〜 最大のリスクは政治。〜
 こんな時は、個々の危機的状況を眺めるより、全体感をつかむ方が重要。どこで問題が発生しようと、連鎖的に問題が拡大し、一大事になるのは明らかなのだから。

 そう考えると、今、我々が抱えているリスクが今までとは大きく違うことがわかるのでは。
 本来は、こういう状況なら、国際協調が進みそうなものだが、実態は真逆なのである。米国にリーダーシップを発揮できる力がなくなりつつあり、まとまらなくなってしまったのである。G7→G8→G20と拡大すればするほど、支離滅裂化。ラウンドテーブル外交は、今や、体裁を整えるためのショウでしかなくなってしまった。
 次の荒波が発生しても、国際協調は望み薄。それが怖い。底が抜けかねないからだ。非常事態対応策の練り直しが必要な時期に突入したということでもあろう。もちろん、こんな話を、表立って議論はできないが。

 そんな状況というのに、日本の政権に危機感は微塵も感じられない。

 「“既得権益層に担がれた信頼感ゼロの無定見な宰相” + “経済沈滞からくる閉塞感蔓延” + “国際情勢音痴の素人外交(自分の実力もわからず大国に敵対・シナリオなき軍事同盟強化)”・・・歴史を鑑みると、そんな三拍子揃った時代があった。現状とまさに瓜二つ。悲惨な結末が予想される」
 コレ、年末に思わず書いてしまった言葉だが、これこそが日本最大のリスクでは。
     「日本の黄昏化が進展した一年だった。」 [2010.12.26]
 このままでは、日本は藻屑のように漂うことになりかねまい。

 特に危険なのが、無定見な政治屋を上手く使って、“一見”合理性ありそうな施策を実施させようとの動き。
 政治屋を操れると考えるのは浅知恵。よく考えて欲しいものだ。
 開国宣言の一方で、“企業の内部留保を給与に回せば、個人消費が増えて経済活性化”と経営者に講釈するようなトンデモ見識の持ち主である。利用したつもりは大間違いで、真逆。政治的動物を利用できる訳がないのだ。ここを間違うと、とんでもなく危険。

 インチキ論で世間ウケを狙う輩だろうが、バラマキ集票屋だろうが、黄昏路線推進者だろうが、安全保障上の危機をいち早く察知し、的確に対応する能力のある政治家を首相にしてもらわねばこまる。
 日本の政治はどうかしている。
 世界が動揺しているだけではなく、東アジアは戦争準備体制に入りつつあるのだから。・・・2011年上半期の米軍の沖縄配備は、実戦展開を前提にしているとしか思えまい。(海兵隊は垂直離着陸攻撃機。空軍は世界最強ステルス戦闘機だけでなく、低空飛行向軽量戦闘機も。)
 こうした時は、危機対応能力がある指導者をトップに選ぶことが、民主主義国として生き延びる最低限の条件。それを担保できるからこそ二大政党制が機能する。ところが、今、これが根本から揺らいでおり、実に危険極まりない。泥船に乗っているようなもの。
 一体、どうなることやら。
 ともかく、とてつもなくハイリスク。

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