■■■■■ 2013.6.4 ■■■■■

  生物多様性話なら先ずは貝からでは

書店で生物系の本のコーナーに行ってみたら、生物多様性の本だらけ。似たようなものがズラリ。おそらく、並べなかった本や返本も数多いだろうから、ただならぬ数の出版点数に達しているのではなかろうか。
パラパラとどんな内容か、目次を眺めてみたが、対象はかなり偏っている。魚や貝についての記述はほとんど見つからないのだ。

小生は、日本で、生物多様性研究が貢献できる一番の分野は「貝」ではないかと見ているが、そんな感覚を持つ方は稀なのだろう。
と言うか、環境がズタズタだから、今から力を入れてももう遅すぎるということか。・・・以前、貝ではない貝という不可思議な生物、シャミセンガイ [→2006年9月8日]について書いたことがあるが、こんな珍しい生物を食用にできるほど、日本の浜は多種多様な生物の宝庫だったのだが、今やその面影もない。
それが、今、どうやら生き延びている種は、せいぜいが養殖アサリ程度では。他は、どれもいつ絶滅してもおかしくない状態ではないかと思う。ただ、在来種消滅の後を外来種が埋めていたりするから、貝の姿も見えずとはならないが。

よく知られるように、熱帯では、昆虫が樹種毎に種が分かれているだけでなく、樹木の天辺から根の先までの様々な場所毎にも棲み分けていることが知られている。従って、生物多様性維持のために、熱帯雨林を維持しようと声は至るところで聞く。だが、日本の貝も似たところがある筈。本来はとてともなく多種多様な筈なのでは。
おそらく、漁村毎に、異なる貝が少なからず存在していて、様々な名称の貝が棲息していたに違いない。と言っても、今になっては、もう確認のしようもないだろうが。

ただ、貝の場合は、昆虫と違って、絶滅しても貝殻を残してくれる。これが、年月に耐える丈夫なものとくる。従って、年代さえわかれば、過去の状況を推定可能。地域毎の貝殻コレクションは貴重なデータ源である。ところが、それも急速に散逸しつつあるのが実態では。

ミドリシャミセンガイのために来日したようなモースによって、1877年に発見された大森貝塚にしても、その後、1984年に品川区が発掘して古代の環境変化を想定できたくらいで、貝殻は貴重な資料ともなる。
 3300〜3000年前: ハイガイ、サルボウガイ(泥性貝)
 3500〜3300年前: ハマグリ、アサリ(砂泥性貝)
 この他の二枚貝としてはオキシジミ。
これらは、アサリ以外は消滅し、バカガイやイソシジミに変わる。
そして、それらも消滅。
今では、ホンビノスガイなる得体の知れぬ貝が勢力をふるう状況に。

大森は漁業権を放棄した地だが、東京湾には浜を復活させた公園が整備されている。そこらが生息地を提供しようということなのであろうが、どうなのかネ。ピクニックやバーベキュー用の公園で、生物多様性が図れるとはとても思えないが。
もっとも、大井埠頭中央海浜公園では、たまには、オキシジミやイソシジミ、ハマグリが見つかったりするらしい。

【ウエブリソーシス】 大森貝塚と縄文時代の地球環境 品川区環境情報活動センター 2010年07月22日
【青野良平氏HP】 「東京 品川区 京浜運河の貝」 (東京湾奥の京浜運河に出現する貝を1975年から2013年2月3日まで、1500回を越える定点観察から追ったもの)---2013年5月26日中央公園へ
【東京湾浜辺施設紹介】 東京湾に行ってみよう(砂浜で遊ぼう) 東京湾環境情報センター


(C) 2013 RandDManagement.com    HOME  INDEX