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2004.11.18
 
 


神道の見方(4:八幡神)

 部族信仰対象でもある古代神話の神と、土着霊の融合の話をした。
 さらに、氏族神が地域鎮護することになり神社の基本形ができた、と見なした。
  → 「神道の見方(1:土着霊)」 (2004年11月15日)
  → 「神道の見方(2:祖先神)」 (2004年11月16日)
  → 「神道の見方(3:鎮守様)」 (2004年11月17日)

 しかし、現実には、このような古代の氏族神を祀る神社だけではない。
 このため、神道はよくわからなくなるのである。

 八幡神社がこうした代表例だ。

 文字通り、全国津々浦々に、鎮守様となっている八幡神社を見かける。(1)膨大な氏子を抱えている訳だ。
 ところが、ご祭神は、古事記に登場する古い神ではない。氏族の系譜はよくわから無いのである。
 祀られているのは、応神天皇である。

 日本の神話の中心となっている、天照皇大神をお祀りする神明神社(天祖神社)より、浸透しているから驚く。

 例えば、鎌倉といえば鎌倉八幡宮が代表という感じだが、鎌倉最古の神社は実は甘縄神明神社の方である。由緒正しき神社なのだが、長谷の鎮守様でしかない。(2)
 新興勢力、八幡神社の力は圧倒的なのだ。

 よく知られるように、八幡神社の総本社は、宇佐八幡神宮だ。(3)
 大分県にあるが、平安京の裏鬼門に位置する岩清水八幡宮や、鎌倉の鶴岡八幡宮など、政治の中心地で強い力を発揮しているのが特徴である。

 実際、宇佐八幡は、政争と繋がる生臭い話に登場してくる。

 最初は、伝統勢力と仏教勢力が争っていた時代に、東大寺建立を後押ししたことが有名である。大陸からの仏教系渡来人達が、日本土着の神道と融合を図ったことは間違いなさそうである。神仏習合の先駆けである。

 さらに、弓削の道鏡を追い落とすきっかけをつくったことでも有名である。

 その後、八幡太郎義家と呼ばれることでもわかるように、源氏と深く結びついた。

 こうした歴史を見ると、中国の動向を睨みながら、思想潮流を読んで、普及活動を進めた新興神道、と言えそうである。

 瀬戸内海の西端という位置を考えれば、おそらく、九州を平定する武力勢力の後ろ盾役も兼ねていたに違いない。「1の神殿」は移築されたことがないそうだから、九州の隼人殲滅の際の、敵勢力の霊を封じ込める役割も担っている、と思われる。

 どう見ても、武力、金力、文力といった実利に対応してきた、神社である。

 しかし、この実利は、現代の実利とは違うと思う。
 というのは、八幡神社には、綿々と受け継がれている「方生会(ほうじょうえ)」があるからだ。

 言うまでもなく、仏教では殺生は大罪である。しかし、氏族神はかならずしも、そのような思想に同調しているとは言いがたい。部族抗争を戦い抜いてきたのだから当然である。
 そのままなら、神仏習合は難しい。

 ところが、「方生会」が、この問題を解決するのだ。貝を海に返すことで、罪を逃れることができるのである。
 つまり、殲滅した敵勢力の悪霊を鎮めることができる訳だ。殺生の「報い」を逃れることができる神社なのである。
 仏教の教えにそむかないで済む、軍神を祀っていると見ることもできると思う。

 軍事が、生活に大きな影響を与えるようになれば、それに対応する神が力を持つのは、それまでの流れと同じである。

 八幡様とは違い、軍神でない神道も庶民の信仰を集めている。

 例えば、神話の神をお祀りしていて、日本一数が多いと言われる稲荷神社はその典型だろう。
 そもそも、「赤い鳥居」が、伊勢神宮との、思想の違いを如実に示している。自然への畏敬ではなく、魔力に抗して、豊穣をもたらそうという考え方だろう。
 祭神は秦氏の祖先神であるが、秦氏は様々な産業を興したため、商売繁盛の神として今でも人気がある訳だ。(4)

 お稲荷様や、八幡様ほどの広がりはないが、他にも、よく知られている神道がある。

 天神様である。(5)ご祭神は、文道の大祖、菅原道真公である。

 このように見ると、神道とは、自然霊と実利を与える人の霊が様々な形で合体しているだけで、その根底には霊信仰が流れており、決してわかりずらいものではない。

 例えば、仏様にしても、木彫りのご本尊や、崖の彫像は例外的なものではない。山、森、川と、そこに住む生物に、霊気を感じる生活をしてきたから、木や岩で作られた仏像が多いのだと思う。

 --- 参照 ---
(1) 「全国八幡神社名鑑」別冊歴史読本99号(2004年10月)新人物往来社
(2) http://www.kcn-net.org/kamakura/yuigahama/m2amanaw.html
(3) http://www.usajinguu.com/Frame.html
(4) http://www.inari.jp/b_shinko/index.html
(5) http://www.dazaifutenmangu.or.jp/shiru/kankou.htm


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