■■■ 「說文解字」「爾雅」検討[17p釋鳥]■■■
「爾雅」では雄雌の釋義を男女服飾規定に擬えているので、インテリ官僚爆笑では、と書いたが、それは儒教を揶揄している行為ではないので、補足説明。
反儒教的なのは、あくまでも個人精神まで統制しようとの動きに対して。サロンでインターナショナルな交流や、馬鹿話が自由にできればよいだけ。

それでは何が面白いかというと、古代は鳥信仰の社会との前提で、眺めているから。特定の鳥が祖との部族トーテム型宗教と、宗族第一主義の儒教とは本質的に違う信仰だが、対立は持ち込みたく無いから、トーテム観念の社会風俗化を推進するしかないのである。その辺りは、「古事記」の葬儀描写が示す通り。
本来的には、トーテム信仰全否定で臨みたいのだが、そこまで革命的には動けないので、中途半端に風習として取り込みを図らざるを得ない訳だ。そこで、苦労して編み出したのが、鳥の♂♀判定理論。イヤー、頑張るね、といったところ。
人間学的に熟慮して生まれた宗教とはいえ、そこまで配慮しなくても、という笑いである。

この鳥信仰状況だが、「山海經」を読めば状況がわかる。わかり易いので冒頭の山経だけで済ませがちだが
📖、神話的要素が色濃い"大荒"を眺めれば、たちどころ。
但し、体裁や書き方が揃っていないし、帝の系譜や伝承譚がちりばめられている上、いかにも削除されて残った様に映る神話断片まで挿入されているので、えらく読みずらい。トリミングしないとナンダカナで終わること請け合い。
この書は、精緻に編纂されていたに違いないと考えて整理すれば、八方構成像が見えてくる。・・・
        
 隅七隅   5←3東北隅
 七_七  6↓_↑2
 隅七隅   7→1東南隅
        
そして、おそらく、人面鳥身珥踐蛇の神が四方に控えるという状況。

「爾雅」編纂は、こうした状況を踏まえて、雅語をピックアップしたことになろう。
  📖鳥信仰@酉陽雑俎的に山海経を読む

---大荒東南隅---▲皮母地丘
[海神]@東海之渚・・・人面鳥身珥兩黄蛇踐兩黄蛇
---大荒中[1]---▲大言・・・日月所出
國】・・・黍食 使四鳥:虎、豹、熊、羆
---大荒中[2]---▲合虚・・・日月所出
【中容之國】人食獸・・・木實,使四鳥:豹、虎、熊、羆
【司幽之國】・・・食黍 食獸 使四鳥
---大荒中[3]---▲明星・・・日月所出
【白民之國】・・・黍食 使四鳥:虎、豹、熊、羆
【K齒之國】・・・黍食 使四鳥
---大荒中[4]---▲鞠陵于天 ▲東極 ▲離・・・日月所出
【玄股國】・・・黍食 使四鳥
【困民國】  [人]王亥・・・兩手操鳥 方食其頭
---大荒中[5]---
│  扶木@[谷]源谷・・・"載烏1太陽来→載烏1太陽出"
│  五采之鳥・・・相郷棄沙 [帝俊の下友で帝下兩壇を司る.]
---大荒中[6]---▲猗天蘇門・・・日月所出
民之國】
│  山 ▲搖山 ▲山 ▲門戸山 ▲盛山 ▲待山
│  五采之鳥
---大荒中[7]---▲壑明俊疾・・・日月所出
【中容之國】
│  3青鳥

---大荒東北隅---▲凶犁土丘
---南海之中---
│  -赤水之東-
│   文貝 離 𩿨久 鷹 賈 委維 熊 羆 象 虎 豹 狼 視肉
│  -K水之南-
│   黄鳥@西側・・・帝藥 八齋  黄鳥@巫山・・・司此玄蛇
---南海渚中---
│  [神]不廷胡余・・・人面__珥兩青蛇 踐兩赤蛇
---南海渚中---
民之國】
│  爰・・・歌舞之鳥
│  鸞鳥・・・自歌
│  鳳鳥・・・自舞
---大荒之中[1]---▲不庭之山
【三身之國】[姚姓]・・・黍食 使四鳥
【羽民之國】・・・生毛羽
【卵民之國】・・・生卵
---大荒之中[2]---▲不姜之山
---大荒之中[3]---▲去
---大荒之中[4]---▲融天
---大荒之中[5]---塗之山
│  【張弘之國】・・・[海中]食魚,使四鳥
│  [人]焉・・・鳥喙 有翼 方捕魚@海
---大荒之中[6]---
【驩頭之國】[人]
│     ・・・人面鳥喙有翼 食海中魚 杖翼行 維宜楊是食
│  文貝 離 𩿨久 鷹 賈 延維 〜
---大荒之中[7]---▲天臺

---大荒之隅---▲不周
【淑士國】
  狂鳥・・・五采有冠
---西海中---
│  [人面神]・・・人面鳥身珥兩青蛇踐兩赤蛇
---大荒之中[1]---▲方山  [青樹]櫃格之松@山上・・・日月所出入
---西北海之外 赤水之西---
【天民之國】・・・食 使四鳥
【北狄之國】
│  皇鳥, 鸞鳥 or 鳳鳥[=五采鳥]
---大荒之中[2]---▲豐沮玉門・・・日月所入
【沃民之國】
│   [鳳鳥の卵を食べ、甘露を飲む。欲しいものは存在し、味わい尽くせる。]
│  鸞鳥・・・自歌
│  鳳鳥・・・自舞
│  , 少, 青鳥・・・3青鳥 赤首黒目
---大荒之中[3]---▲龍山・・・日月所入
【丈夫之國】
│  州之山
│  鳴鳥・・・五采之鳥仰天
---大荒之中[4]---▲日月山・・・天樞 呉天門 日月所入
│    ▲玄丹之山
│  五色之鳥・・・人面有髮
│   青鳥 黄鳥・・・集まると國亡
---大荒之中[5]---▲鏖・・・日月所入
│    ▲巫山者 ▲壑山 ▲金門之山
│  比翼之鳥
│  白鳥 青翼 黄尾 玄喙
---西海之南 流沙之濱 赤水之後 黒水之前---▲大山:崑崙之丘
│  ▲炎火之山
│  [人]西王母・・・戴勝虎齒豹尾 穴住居 [萬物盡存在する山である。]
---大荒之中[6]---▲常陽之山・・・日月所入
---大荒之中[7]---▲大荒之山・・・日月所入
---西南海之外 赤水之南 流沙之西---
人之國】
│  青鳥𪇆鳥・・・身黄赤足六首

---西南 大荒之隅---▲偏句常羊之山
---東北海之外 大荒之中[0] 河水之---▲附禺之山
│  (この山での産) 𩿨久 文貝 離 鸞鳥 鳳鳥 大物 小物 青鳥 琅鳥 玄鳥 黄鳥〜
---北海之渚中--
│  [神]禺彊・・・人面鳥身 珥兩青蛇 踐兩赤蛇
---大荒之中[1]---▲不咸
【肅慎氏之國】
│  蜚蛭・・・四翼
---大荒之中[2]---▲衡天
│  ▲先民之山
【叔國】・・・黍食 使四鳥 虎、豹、熊、羆
---大荒之中[3]---▲先檻大逢之山
【始州之國】
│  羣鳥・・・解く所
【毛民之國】[依姓]・・・食黍 使四鳥
---大荒之中[4]---▲北極天櫃
│  [神]九鳳・・・九首人面鳥身
---大荒之中[5]---▲成都載天
---大荒之中[6]---▲不句
---大荒之中[7]---▲融父山
---西北海外 流沙之東---
---西北海外 黒水之北---
│  [人]苗民[釐姓]・・・有翼 食肉
---大荒之中[8]---


【附-1】<狂鳥 歌舞之鳥 自歌 自舞>は一部の鳥に見られる習性の表現としては妥当。五色極彩色姿の鳥も実在している。両方に該当する鳥も。
【附-2】民俗学では、現存する各地の鳥舞を鳥信仰残渣とする。…鴝鵒舞 斑鳩舞 比翼舞 孔雀舞 etc.。
【附-3】「山海經」は儒教ベースの書ではないにもかかわらず、儒教的記載部分があるから、削除挿入等々があることを前提に眺める必要がある。鳳凰は儒教の鳥として認定されているので、特に注意が必要。唐代になると、白楽天が「山海經」の鳥を題材に使っているが、仏教のガルーダを被せている筈。
【附-4】<使四鳥>の対象に鳳凰とか、毒鳥が入っているとの証拠は無い。使には指令的なニュアンスがあり、特定機能利用のための飼育鳥かも。
【附-5】采[捋取]を色[顔气]に替えた"五色"之鳥記載には要注意。字義が全く異なるからだ。
尚、采≠彩。
五彩は金代の用語で、すぐに五色とされがちだが、陶磁器の絵付け技法を意味しているので、語義上は多色と考えた方がよいだろう。赤・藍・黄・緑・紫が選ばれることが多い。釉薬かけ流しは三彩と呼ぶ。後漢発祥で、唐代流行タイプは褐・緑・藍。黒・白を地色にしたものも指すので、見かけ3色以上だったり、2色の場合もある。
もともとは、色の概念としては、五綵ということになろう。芽/実/葉/皮を取って糸の染色を行ったところから来た文字である訳で、色名としては原材料名称で示す以外にありえまい。鳥の場合は、羽をピックアップしたということかもしれない。
  參差荇菜 左右采之 [「詩経」國風 周南 關雎]
  
     

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