■■■ 「說文解字」「爾雅」検討[18ba釋獸]■■■
"なんだかわからぬ<〜屬>分類"で終えてしまうと、余りにつまらぬので、一言。

もともと「詩経」の詩作分類や、「六書」という字体分類が、論理性を欠く。その様な見方を金科玉条とする社会である限り、わからぬ分類だらけになりかねない訳だが、それは古代人の分類能力が低かったことを意味している訳ではないのでご注意あれ。社会安寧のために、思想上そうせざるを得ないだけ。
現代の学問的生物分類でも、社会の実情を思慮すれば、ガラポンのゼロベースで再構築はできかねるのだから、古代とてそこは同じこと。そこらに触れておこう。・・・

釋獸には、すでに奇蹄類と偶蹄類、イヌ目とネコ目的な分類観が示されている。この点だけで、乱暴に聞こえるかもしれぬが、現代の生物分類と比べて劣っているとは言い難い。ある意味、五本指類の存在を示唆している訳で、現代より、より直観的に分類を想起できるので、優れていると言えなくもないほど。

要するに、雅語を通じて、古代人の分類観に触れている訳である。そこらを眺めてみると、しっかりしたものの見方が確立していた可能性が高い。
現代で云えば、フィールドサイン分類ということになろうか。(分類されているかは定かではない。)

これは、殊の外重要だと思う。
「說文解字」叙の主張からすれば、字体分類にはこのセンスが必要と主張していそうだから。・・・
  黃帝史官 ≪倉頡≫
  見鳥獸蹄迒之
    知分理之可相別異也 初造書契

「爾雅」釋獸では6ッの違うパターンありとしている。
麋…其跡 躔[踐]
鹿…其跡 速[疾]
麕…其跡 解[判 or 𢊁 獸]
豕…其跡 刻[鏤]
---
狼…其跡 迒[獸迹]
貍 狐 貒 貈醜 其足 蹯 其跡 𠘯𠘯
        ↑番[獸足]≒釆(足爪部分)+田(足掌)
        [非収録]𠘯≒≪禸[厹 象形]≫禸[獸足蹂地]

・・・ほぼ自明な足跡パターン表現になっている。

偶蹄類の脚には、足部に主蹄一対と、後部に小さな付属一対がある。
イノシシの跡はこの4ッがはっきりわかるが、シカ系は後部が底ではなく脚の方にあるので、泥地でなければ、主蹄しか残らない。もちろん、それぞれの種の体重と移動の仕方で、蹄の形状と一対の並び方が違ってくる。単純で、狩猟生活者なら、間違えることなどあり得ない。

一方、食肉系足跡については、現代人でもネコとイヌの足跡で理解できる筈。4ッの指部と大きな掌であり、爪部が跡に残るか否かの違いとなる。

現代分類を、こうした足跡分類観に合わせるとこうなろう。・・・
 ┌────持手(齧)[鼠・兔]
┌┤
│└────握手/1+4指[猿]
真正獸
│┌────堀手
└┤
 │┌───翼手
 └┤
  │  ┌─偶(反芻系)
  │┌蹄┤脚(草食)
  ││ └─奇(走系)
  └┤
   │ ┌─蟻恆ホ応鋭利爪@前肢…穿山甲
   └爪┤足(食肉)
     │    ┌─イヌ的
     └─+肉球┤
          └─ネコ的
蜥蜴同様に4足であっても、非毛蟲なので、鱗蟲扱いもありうる。しかし、卵生ではないから獸と見なすことになろう。"驚くことに二足歩行"と記載されることが多いが、後足についての情報を伏せており、食性上、尾が重いという結果の姿だろう。
  
  "狼"
     

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