■■■ 小篆文字検討@「說文解字」「爾雅」[隹]■■■
#109≪隹≫#119≪鳥≫🅱🆂
「說文解字」の<隹と鳥>の峻別字義は優れた説明だが、現代人はそれに気付くことは滅多になかろう。そう考えて、触れないで来たが、知らん顔も拙かろうということで。

まず、現状確認。・・・
現代のバードウオッチでは、家禽飼育舎や動物園ゲージでの観察を越えることはほぼ不可能。数万羽の群れの行状など全くわからないからだ。
かえって、都会在住でムクドリの群生棲息に気付いていたり、動物園でじっくりと特定の1羽と仲良くお付き合いした経験がある人の方が、トリの"概念的"観察眼が養われている可能性が高い。
細かな分類や、個々の特徴の博学は役に立たないと思った方がよい。

さて、この峻別だが、尾羽の長短というコンセプトを打ち出しているが、これは直外見で判断できるという主張ではない。
儒教思考が生み出した五行のトンデモ理屈と同じで、陰陽的2項分類と見なすならこうなると提示しただけ。

儒教の人間学は優れており、原因⇒結果というパターンでの説明を頭に叩き込めば、結果⇒恣意的に設定した原因という転倒した説得が奏功するという事実に早くから気付いていたのは間違いない。「說文解字」の著者はそこらをよくわきまえているからこそ、長尾 v.s. 短尾が原因として最適と判断しただけ。つまり、鳥 v.s. 隹がその結果という説明になっていると解説していることになる。
・・・これでは何が何やらの滅茶苦茶説明だが、何卒、ご容赦の程。

長短2項分類は、あくまでも理念。
実際には極めてバラけている筈。鳥 v.s. 隹のグループ分けをその視点でいくら鋭意敢行したところで、峻別が見えてくる訳ではない。
しかし、ケモノのtailの役割をご存じなら、その視点で眺め返すと、2グループの存在が朧気ながら見えてくる。
梃子の原理と同じで、尾羽の対照部位は嘴ということ。言うまでもなく、嘴形状は千差万別。その文字上の表記形状が鳥 v.s. 隹なのだ。

嘴部位の表記スタイルは、"隹"ではほとんど意味が無いが、"鳥"のは凄いと言ったらよいだろうか。
  長い━、下方曲がり、先尖、目立つ◁、大開口、有歯(Birdに歯は無い。)、etc.・・・
なかでも特筆モノは嘴を真上に向け、尾は真下という姿。

単に、これだけのこと。
もちろん、ここらは注意深く読む必要があるが。

それに、瞿の様に、行為を示す場合が典型だが、この分類通りに嘴を描いているとは限らない。隹は猛禽が狙っている対象だから、表記は隹であっても、鳥も含まれていておかしくないからだ。両者の総称は決まっていない以上いたしかたない。

ということで、"隹"文字で見落とせない表現についても書いておこう。
・・・大集団来訪時代だからこその、部首としての重畳文字の存在。
📖
  飛行衆羽 ▽3隹…甲骨タイプ
  散会衆羽 △3隹[雥]
  列的衆羽 □3隹[雦]
  樹木衆羽 △3隹+木[雧]  ⇒樹木内衆告 喿
  林内衆羽 木+隹+木
  淵域衆羽 𩁵

単なる集合ではなく、そこに意味を感じていた筈。
  臨雨告知 雨+隹(1隹[霍]→2隹[靃]→3隹[𱁫])
  1羽発告 唯 ≠鶏鳴
  1羽@梢 集(有リーダー) →𮦂(対抗)

尚、雔/雙/䨇は1対とか、雄雌の番の意。讎/讐は対抗的。

 𡕥─目─自─𪞶─習
  ┌───────┘
  羽
  │
  隹
  │
  ├┬┬┬┬┐
  奞雈瞿雔雥│  ⻀…角冠
   │   鳥
   𦫳   │
   │   烏

付け足し的に書いておくと、筆記に便利そうな"隹"文字より、書きにくい"鳥"文字の方が、birdの文字符としては好まれる傾向がある。無脚は怪奇となるので、できれば捨象している様に映らない字形にしたいからである。小篆創成官僚にしてみれば、できる限り天頂-地足の縦長長方形の外観で統一したい訳で。

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