トップ頁へ>>> |
オジサンのための料理講座 ←イラスト (C) SweetRoom 2008.6.11 |
「料理講座」の目次へ>>> |
|
お味噌汁作りの学び方…初心者は、ナメコと豆腐の味噌汁作りから始めたがるが、止めた方がよい。 出汁のとり方ばかり練習したりして、肝心なことを忘れてしまうからだ。 以下の質問に答えられるだろうか。できない勉強なら、実用性ゼロである。 ・どんなお椀でも、同じ出汁のとり方でよいのか? ・ナメコ単品では駄目なのか? 合わせるなら豆腐がベストなのか? ・もし、そうなら、どんな豆腐がよいのか? 細かな調理技術ではなく、設計力がつく“学び”を追求すべきだと思う。 オジサンが学ぶべき料理技術とは何かが理解できるように、様々なお話をしてきたつもりだが、周辺の話が増えてしまったので、そろそろ核心部分に入ろう。一汁三菜の「汁」である、お味噌汁の自習方法をご提案しよう。 ただ、学ぶ前提として、「味」の鍛錬がある程度できている必要がある。これだけは忘れないで欲しい。 → 「自炊成功の鍵とは 」 (2008年2月21日) 味がだいたいわかるとの自信ができてきたら、段階を踏まえながら「お椀」料理の「第一歩」を学ぶのがよいと思う。多種類の「お椀」を頂くことになるが、どれも簡単な調理だし、最高峰を目指す必要もないから、そう面倒な勉強ではない。どれも、それなりに美味しいものができるから、愉しんで学んで欲しい。 (「お椀」としているのは、お澄ましも含まれるという意味もあるが、一汁三菜の「汁」でない料理も学ぶことになるという意味である。) ともあれ、初心者の「第一歩」という謙虚さで臨もう。従って、出汁作りに注力する必要はないし、味噌選びに薀蓄を傾ける必要もない。 なにがなんでも全ステップを経験して欲しい。これ無しには、美味しい味噌汁作りへと進むことができないからだ。 【第0ステップは、具沢山の野菜の味噌汁。】 出汁昆布と煮干かそれに類した干し魚の類が必要。なければ、購入すること。他は、できる限りあるものですます。 従って、色々な野菜が揃っている時に挑戦すべきである。 尚、野菜は、しなびたような古いもので一向にかまわない。その方が向いている。味噌も、普段使っているもので結構。 重要なのは、出汁作りから始めない点。要するに、ただ煮るだけの料理だ。手順を記載したが、覚えるようなものではない。 ・適当な大きさに鋏で切った出汁昆布と数匹の煮干、適当に切った硬い野菜を水に入れ火をつける。 ・実が柔らかくなったと見計らったら、すぐ柔らかくなる葉野菜等を投入する。 ・煮えたようなら火を止め、少量の味噌を溶く。量は適当。 ・お椀に盛り上がるような体裁で盛る。 ・薬味は使わない方がよいが、万能ネギの刻みをかける程度ならよいだろう。 ただ、以下の点は遵守して欲しい。ここが肝。 ・出汁用に使った昆布と煮干は取り出さず、「椀」に入れ、すべて食す。 (煮干の頭や腸が嫌いなら、水に入れる前に取り去っておくこと。) ・作った汁すべてを暖かいうちに食べきる。 (使う野菜の量をよく考えてから作ること。) ・水の量はできる限り少なめにする。 (味噌は風味付けなので煮ないこと。量も、極く僅かに留める。) ・実に使うのは野菜と茸に限定。5種類は欲しい。 (例えば、大根、人参、ジャガイモ、ぶなしめじ、レタス) ・先ず、実でなく、汁を味わう。 (雑味と野菜エキス分を感じることができれば成功である。) ・・・健康に関心がある人なら、お勧めの味噌汁と言ってよいだろう。この味を家庭の基本形と考え、これより美味しい味噌汁を作ってみればよいのである。比較相手は、プロの作った味噌汁ではない。そこで第0ステップとした。 【第1ステップは、しじみの味噌汁。】 最初から、本格的な味噌汁である。使うのは蜆(シジミ)と味噌だけ。薬味は使わないこと。 出汁は不要。実そのものが出汁になる。 砂をよく出したシジミを水から煮て、口があいたら、火を止め、味噌を入れるだけ。 「具沢山の野菜の味噌汁」同様に、味噌は風味付けと考えること。普段使っている味噌で味わう。間違っても、赤だし味噌にするとか、薀蓄を傾けないこと。それは、一通り勉強してからの話。 もし美味しくないなら、煮すぎか、貝の質が悪いと考えよう。もう一度挑戦してみること。できれば、シジミの身も食べてみよう。 【第2ステップは、あさりの潮汁。】 シジミの次は、実を浅蜊(アサリ)に変える。これも出汁不要。 シジミと違うのは、味噌汁にしないこと。 砂をよく出したアサリを水から煮て、熱くなってきたら、酒を少々いれ、口が開いたら一煮し、塩で味を調整。面倒なら酒なしでもよい。 塩は良質なものを使うこと。 身は食べよう。硬くなっていたら、煮すぎ。気をつけてもう一度。味がわかったら、今後は、味噌汁にしてもよい。 【第3ステップは、はまぐりの澄まし汁。】 ここまでくればおわかりだと思うが、貝の「お椀」料理を追求しているのである。これが勉強になる。アサリに続いては蛤(ハマグリ)。アサリ同様の手順でよいが、作り方で一つだけ違う点がある。水に出汁昆布を一切れ入れるのだ。昆布は汁が沸騰したら捨てる。そして、酒は必ず使う。アルコール分がとんでいないと失敗作になるから要注意。 この「お椀」だが、ご飯と汁の「汁」料理ではない。一品モノであり、「一菜」に位置付けてよい。従って、貝の身が美味しくなかったら大失敗である。アサリで成功していれば、失敗することはなかろう。 【第4ステップは、貝づくしの漁師汁。】 ここまでくると、貝のエキスの嬉しさがわかったと思う。これこそ、和風出汁の原点である。 その究極を味わっておこう。それが漁師汁。磯臭さがある一品モノ。 文字通りの貝尽くし。ただ、昆布は入れない。その代わり、海胆(ウニ)を加える。アワビ、ホタテ、ホッキ貝、ツブ貝といった様々な貝をウニで煮るだけ。当然ながら、都会で試みると、とんでもない出費になる。 そこで、缶詰の「いちご煮」でどんなものか確認するに留めよう。暖めて少量頂き、味がわかれば十分。 (缶詰なので、「お椀」でなく、炊き込みご飯にお使いになるのがベストだと思う。) 【第5ステップは、実を無視した海鮮味噌汁。】 漁師汁の後は、貝を使わない魚介類の味噌汁で決めよう。使うのは伊勢海老か蟹がお勧め。磯なら、これに類したものなら何でもよい。と言っても、今度は、一品モノ「貝づくしの漁師汁」ではなく、ご飯に味噌汁の「一汁」である。 エ〜、と驚くことはない。 使うのは、身がほとんど無いもの。つまり、伊勢海老だったら、刺身に使った残り。食べるのが面倒な小さな蟹もよかろう。前者は手に入らないだろうから、後者がよかろう。常に店に並ばないかも知れないが、手に入ったら是非食べて欲しい。 つまり、海老や蟹だけの出汁を味わって欲しいということ。実を食べるのではないから、お気軽。火を止めたら、風味付けに味噌を少量。磯臭さが気になるなら、味噌を多くし、ひと煮たちする必要はあるかも。 この味が好きなら、以後は、この味噌汁に、長葱などいれてもよいだろう。 実は、ここで、第5.5ステップがある。魚の骨と頭の部分だけで出汁を味わおうというのである。この味を知っておくことは結構重要である。ただ、鯵の生き作りを購入するとか、魚を3枚に卸すのが好きな人しかできないのが難点。 おわかりだと思うが、これは、シジミを他の魚介類に置き換えただけである。 これで、ようやく第1ステップに戻ったのである。 ここまでで、基本は終了。ポイントを整理しておこう。 ・魚介エキスを含んだ湯を塩で調整すれば「お椀」料理になる。 -魚介類を使うときは、出汁は必要ではない。 -魚介類を使う時でも、淡い味の時は昆布出汁味を加えると美味しくなる。 -魚介類以外の実を食べる時は、昆布と魚介類の出汁を使う。 ・「お椀」料理には、一品ものの「オカズ」と、ご飯と対の「汁」の2種類がある。 -「汁」としての「お椀」の主眼は、魚介エキス分を味わうこと。「実」は付けたし。 -「オカズ」としての「お椀」の主眼は、たとえ少量であっても、蛋白質の「実」を美味しく食べること。 ・酒を加えると、蛋白質の「実」は美味しくなる。 ・味噌等は、美味しくするための添加物にすぎない。 -泥臭さや、雑味がキツイ場合は、味噌等の調味料を加えることで、嫌な味や香りをカバーできる。 -魚介エキスだけだと単調と感じるなら、味噌等の調味料の風味を加えるとよい。 さあ、ここから応用編と行きたいところだが、そうはいかない。 ここまでは、「お椀」の本質を知るための基礎であって、「一汁」の基礎ではないからだ。 先は長いが、日常的にご飯と味噌汁を食べているなら、たいした苦労ではない。 【第6ステップは、生海苔の味噌汁。】 ここから、ようやく一般的な「汁」を作ることになる。つまり、出汁をとってから、「実」を出汁で煮て、調味料で味をつけるという、普通の作り方に入る訳だ。しかし、初心者は、まずは、海藻の「実」で「汁」をどう作ると美味しくなるのか、勉強すべきだと思う。 最初は生海苔。前処理は、軽く水洗いして、網で水を切るだけ。網につくので、予め網から容器に移しておく必要がある。 作り方は自明だろう。 昆布と鰹節の出汁をとったら、お椀の量だけとり、沸騰させたら、一気に適量の生海苔を入れる。再度沸騰しそうになる直前で火を止めて味噌を入れる。 海苔の風味が出れば成功。入れるタイミングが悪かったり、沸騰させてしまうと海苔の味が弱くなる。 味噌味も利かせないと、余り美味しくなくなる。味噌の量も重要なのがわかる筈。 簡単そうに見えて、そうでもないのである。これがわかれば十分。 【第7ステップは、乾燥緑色海藻の味噌汁。】 生海苔の次は、乾燥アオサか、類似の緑色の乾燥海藻を使ってみよう。生と乾物の差を知るためだ。 乾物だから、水で戻してから使ってもよいが、そんな手間は不要。出汁に直接入れて戻った感じがしてから加熱すれば十分。生海苔と違って、調理でそう大きな差はでない。余り気にしないこと。 ただ、生海苔とは違って、香りが薄いから、もの足りなさ感じるかも。そうなると豆腐などを入れたくなるが、止めて欲しい。どうしてもというのなら、小町麩がよい。発泡麩だから、汁を吸うだけで、余計な味が加わらないからだ。 こんなことにこだわるのは、自分の好きな味噌の濃さと、実の分量の目安をつける力を、この味噌汁作りで養って欲しいから。 要するに、できあがった味噌汁の味見をしながら、出汁、味噌、海藻を適宜足して調整するということ。この練習は思った以上に重要である。 【第8ステップは、とろろ昆布のお澄まし。】 同じく、乾燥海藻だが、今度はとろろ昆布。とろろ昆布を適量いれた椀に熱い出汁を注ぐ。 こちらは、乾燥品といっても、多少酢臭を感じさせる。そこで、醤油を数滴垂らし、その香りを消す必要がある。 要するに、出汁の味と、醤油の香りを愉しむことになる。 尚、とろろ昆布から出る旨味には期待しない方がよい。そう簡単に出汁はでないからだ。 とろろ昆布の味噌汁はドロドロになるので避けたいが、これがお好きな方もいる。そんな方も、勉強と思って、一度は醤油で試して欲しい。 これでようやく、「第一歩」は終了。 海産物の「実」の「汁」が美味しくできるようになれば、いよいよ非海産物の「実」の味噌汁だ。これは別途解説しよう。 --- 参照 --- (味噌汁の写真) (C) ポケットの中のアルバム http://sweets.cafe.coocan.jp/ 「料理講座」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
|
(C) 1999-2008 RandDManagement.com |