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オジサンのための料理講座 ←イラスト (C) SweetRoom 2008.8.20 |
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ロシア料理の何を作るか…ロシア料理とは寄せ集めにすぎないと言う人もいる。ウクライナ料理が源流のものが多いからだろう。 それに、各地の貴族が仏人コックに洗練させたものも少なくない。 仲が悪いグルジアの料理が入っている可能性さえある。 ただ、それらをコース料理に高めた功績は認められているようだ。 ←グルジアの国旗 そういえば中村屋本店で食事をしなくなった。本を買いに新宿に出向かなくなったからだ。といっても食べていた のはカレーライスだが。 ただ、時々は食べていた他の料理があった。それがボルシチである。どこが魅力かといえば、答えに窮するが、カレー同様に洋食だからということかも。・・・“ボルシチはビーツを使用していません。スープの赤色はじっくり煮込んだトマトの色です。”(1)というものなのである。 だが、この手のボルシチと言えば、なんといっても圧巻は、昭和の雰囲気を残す日本橋の「たいめいけん」のもの。野菜が沢山入って“ボリウム満点”で\50(2)なのだから。これに、ハムライスに卵焼が乗ったようなオムライスでも食べれば、昔の日本を堪能できよう。 どういう訳か、ロシア料理は、いかにも、欧州文化の原点といった味わいがあり、その洋食版は海外文化を積極的に生活に取り入れようとの意気込がありそうだ。そんな意気に感じて、好きになるのかも知れない。 そんな感覚は日本だけではなさそうだ。上海では、“Russian soup的中文音譯”の「羅宋湯」(3)が人気だというのだから。 と言うことで、今回は、その手のロシア料理に挑戦してみたい。 そうなると、どの料理店を参考にするかということになるが、よく行くのは渋谷の「ロゴスキー」(1)。こういった店のロシア料理は、前菜に始まり、デザートで閉めるコースが基本だとは思うが、小生には重すぎる。 たいていは、簡素なもの。 瓶ビールで、野菜の酢漬けかにしんの酢漬け。そして、ピロシキとペリメニーが来て、田舎の家庭風ボルシチ止まり。要するに、お昼すぎに行くので、あまりお腹が空いてなく、つぼ焼き、ビーフストロガノフ、あるいはカツレツといった主菜まで届かないのである。従って、ロシア紅茶やデザートも遠慮する、えらく変則的なもの。たまには簡易版コースにすることもあるが、食べきるのがやっと。 さて、こんな食事をしていると、一体何をつくるべきか考えてしまう。 まあ順当なのは、ボルシチだろう。しかし、何を目指しているかよくわからない料理なので、正直のところ、どう作ってよいのかよくわからない。ロゴスキー版はビーツ入りで正統派だし、美味しいが、具を細かく切ってはいない。家庭用なら、早く熱を通そうとする筈だと思うのだが。大振りの具を入れる意味があるのかないのかも、判定できないから、これは避けた方がよさそうだ。 次の候補は、ピロシキ。揚げたては美味しいが、パン屋の定番商品カレーパンを想起させる。そのため、わざわざ作る気分になれない。 そうなると、残るのはペリメニ。ロシア風水餃子である。 ロゴスキー版ペリメニはバター味が効いた酸っぱい白色のスープででてくる。 これは何がポイントの料理なのだろうか、少し考えてみた。 思うに、沢山作って食べることに意味がある料理なのではないか。そう感じて、ウエブを見たのだが、食べ方が多岐に渡っているようだ。分類すると以下のようなるかも。と言っても、第二外国語はロシア語だったが、「Пельмени」をどうやら読める程度の能力しかないので、真面目に調べることは不可能。大胆な推定と冗談にすぎないから、決して信じないように。 ・発祥タイプは、茹でて、香草のディルとバターで和えたもの。 ・強い酒でだらだら飲むのにあわせるため、サワークリームがけも取り入れる。 ・しかしながら、寒いので、スープに浮かべたものが嬉しい。 ・と言っても作るのに時間がかかるのはかなわない。茹でてワインビネガーが一番簡便だ。 (好景気に湧くロシアであるから、ペリメニの主流は冷凍に違いない。) ・茹で汁ごとサーブして、高級調味料「醤油」を垂らして食べるのもお洒落かも。[日本が好きな人は] こんなことを考えていくと、ペリメニは見かけは水餃子だが、全く違うものに見えてくる。焼餃子の楽しみ方を振り返れば、皮の食感が結構重要だと思うが、ペリメニはそれとは違う感じがするからだ。 → 「餃子モドキで紹興酒を楽しむ 」 (2008年7月9日) それに、スープに入れることは要件ではなさそうだから、具沢山の厚皮ワンタンでもないのだ。 だからと言って、英語表現のような、ロシア風ラビオリという見方では、さらに離れてしまう感じがする。 他国の料理で似たものは、モンゴル辺りにありそうだが、全く土地勘がないのでわからぬ。そうなると、中華で一番似ているものとなるが、それは水餃子ではなく、小龍包なのでは。 こんなことを言うと、エ〜、という声があがろう。 いくらなんでも、蒸かして作る饅頭は全く違うものだろうということ。 確かに、それはそうだが、楽しみのポイントは一番似ている。 ペリメニは、皮そのものや、中身についての出来具合より、皮と中身の量的バランスが重要だからだ。どうしてかと言えば、旨さの本質は皮で閉じ込められた肉汁にあるから。染み出た肉汁が漏れ出したり、肉汁が少なければば、失敗作になってしまうのだ。この料理のポイントはこれに尽きる。 そして、この肉汁を酢味で頂くから旨みが引き立つ。 これって、小龍包の楽しみかたでは。 それでは、具体的に、ペリメニをどのように作るべきか、その手順を解説しておこう。言うまでも無いが、現代版ロシア風洋食のレシピであることを忘れずに。 【1: サワークリームを自分で作る。】 自作するなら、軽く茹でて皿に盛り、サワークリームをかけて食べる方法を採用するのが一番だ。サワークリームは、生クリームとプレーンヨーグルトをだいたい等量混ぜるだけでよかろう。配分量に決まりなどないから、好きな酸っぱさにすればよいだけのこと。もし、口に合わないと感じたら、レモン果汁でもいれたらよかろう。 【2: 生地には牛乳と卵を加える。】 肝心のペリメニだが、焼餃子の皮は作るのが難しいが、ペリメニの生地作りは適当でかまわない。というか、勝手に設計するということ。強力粉に水、牛乳、卵を加えて練るだけ。 液体全部の重さが、小麦粉より若干少なめ程度が一応のガイドラインか。強力粉ではパンに近い食感で余り好かないというなら、一部薄力粉に置きかえてもかまわない。ただ、多すぎるとダラダラになってしまうから注意した方がよい。 小麦粉だから、腰を出すために、塩を少々加え、生地をよく練った方がよい。当然、冷蔵庫で少し寝かせることになる。 そして、西洋料理だから、練るに当たっては、油をほんの少々加え、胡椒も軽く振りるのことも忘れずに。 あとは、これを板状に延ばすだけ。中身を二枚の板で挟めばよい。厚さはお好み次第。家庭料理とはそういうもの。 【3: 具から水分がでるように、十分な量の牛乳を加える。】 中身の具だが、これは、ひき肉と玉葱の微塵切りが基本具材である。ただ、肉は、牛豚の合い挽きとする。もちろん、ニンニクを入れる必要がある。味付けは塩、胡椒でよい。これで揉めばできあがりと言いたいところだが、そうはいかない。これでは肉汁が不足するから、水分を加えておく必要があるのだ。水かブイヨンスープでもよいが、牛乳がよかろう。 【4: 皮で具をしっかり閉じ込める。】 具ができたら、生地に一個分の中身を乗せて、上から生地をかぶせ、切断すればよいだけ。 これが一番難しい。「一個分」の量をどの程度にするかで勝負が決まるからだ。多すぎても、少なすぎても、今一歩。料理店で食べる時、このバランスを注意して見ておくこと。自家製が最高となるように、考えてやってみるしかない。 常識的には、生地と中身が重さで等量になる程度で、軽く一口で食べるのに向いた量となるが、これは好みの問題。 それに、くどいが、汁が漏れないことが大事。そのため、一個一個丁寧に生地の端を処理する必要がある。それには、余分そうな生地は切り落とした方がよい。もしも、ここで凝りたいなら、形を考えるのも手かも。 【5; 茹でたらすぐに食べよう。】 作業が終わったら、すぐに片付けて、食べる準備をする。茹でるのはそれから。 湯で茹でてかまわない。どうしてもスープにしたいなら、ブイヨンの素をいれるだけ。 ともかく、茹でたらすぐに皿にとって、サワークリームをつけて食べよう。のんびり食事をしたいのなら、何回も茹でればよいだけのこと。 ここまでお読みになれば、それほど難しくないことはお分かり頂けたのでは。 ただ、労力はかかる。一個一個に切り分けて、端を処理するには、かなりの「工数」を要するからだ。本場だと、なにか道具があるのかも。 尚、このロシア料理は、ビールなどでなく、お店ではなかなか見かけないが、グルジア産ワインでいきたい。 日本で、グルジアと言えば、カスピ海ヨーグルトの本家だが、シルクロードの西端に位置するワイン王国である。 と言うとロシアでもない国のワインを何故勧めるのか、怪訝な顔をする人が多いかも知れぬが、ロシア皇帝の時代も、スターリンも、そしてどこまで本当かは知らないがクレオパトラまでもが、ワインといえばグルジア産を愛していたという位のもの。知る人ぞ知る、ワインの故郷。ホモ・エレクトスが飲んでいたかはわからぬが。 もっとも、ソ連の政策で地域自立が難しい単品依存型経済にされ、量のノルマのお陰でワインの質は落ちるところまで落ちた。しかも、民族独立がしにくいようにしたから、火種だらけ。 → 「グルジア政変 」 (2003年12月12日) まあそれは別として、もう一言。こちらは、小生の推定。 ペリメニの起源はグルジア料理のヒンカリー(5)ではないか。ハーブ入りの、合い挽き肉を包んだ茹で饅頭である。中に閉じ込められた肉汁を楽しむ料理だ。 --- 参照 --- (1) 「中村屋伝統の“菓史”」 http://www.nakamuraya.co.jp/history/hist_06.html (2) たいめいけん 御料理メニュー(1F) http://www.taimeiken.co.jp/menu/index1.html (3) [維基百科] http://zh.wikipedia.org/wiki/%E7%BD%97%E5%AE%8B%E6%B1%A4 (4) 渋谷ロゴスキー お食事メニュー アラカルト http://www.rogovski.co.jp/oshokuji3.htm (5) David A. Mchedlishvili: “ABOUT GEORGIA: Georgian Cuisine --- Khinkali” http://www.aboutgeorgia.net/cuisine/meats.html?page=10 http://www.aboutgeorgia.net/cuisine/meats.html?page=11 (国旗のイラスト) (C) National flag & Road sign Mt. http://nflagrsign.xrea.jp/ 「料理講座」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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