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オジサンのための料理講座 ←イラスト (C) SweetRoom 2008.11.19 |
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延暦寺修行僧の食事を想って…晩秋、根本中堂を訪れたことがある。秋の比叡山で感慨に浸ろうという趣旨。 しかし、現実は厳しかった。 冷たさで足の感覚がなくなってしまったのである。 拝観するなら、春がお勧め。 精進料理を学ぶと称し、勝手に仏教宗派の流儀を推定しているのだが、結構、特徴がありそうで面白かったので続けてみたくなった。 国家仏教の要だった南都の東大寺、山岳密教の高野山とくれば、次は、北嶺の天台密教延暦寺しかないかろう。 → 「結解料理から学ぶ」 [2008.10.22] 、 「 高野山の精進料理を考えてみた」 [ 2008.11.5] ここは山全体が宗教施設のようになっており、信徒の方は別だろうが、一般の人はお寺さんのホテルを利用することになるのだろう。従って、ここならではの食事がどんなものかは外部からはよくわからない。 ただ、ここは、「論湿寒貧」の世界。夏のモンスーン気候特有の蒸し暑さと、冬の大陸冷気による凍りつくような寒さをものともせず、清貧な生活を送って、宗論に打ち込みむと言うのである。多くの開祖がここから生まれた理由はここにありそうだ。 当然ながら、今のように、バスで観光客が大挙して押しかける場所ではなかったのは当然だが、覚悟を決めた人以外は訪れる場所ではなかったと思われる。 今でも荒行が行われており、「千日回峰」は有名。 聞くところによると、米の飯なしで、饂飩が主食らしい。これにじゃがいも(2個)の塩蒸し、豆腐(半丁)の胡麻味噌和え、といったものだとか。(1) ずいぶんカロリーが少ない食事だが、これで、山道を走るが如く毎日廻るのだから驚異的である。生活態度で代謝メカニズムが変わるということだろうか。 最澄は享年56(数え年)だが、60を超えた僧侶が里に下りたといわれているから皆長寿だったようである。硬水だからミネラルをしっかり摂取しているし、空気も澄んでいるので、体調を崩すことが少ないからかも。 ともあれ、修行僧は「山の坊ぼんさん 何食 くうて暮らす ゆばの付け焼き 定心房(坊)」程度の食事なのだという。(2)「定心房」とは「たくあん」のことだが、昔は白米は稀だから糠は無い。簡単な塩漬けだったのではないか。大根は麓に自生していたものを使ったに違いない。伊吹山(琵琶湖の北東:対岸)の大根のようなものだったかも。コレ、信州地大根の鼠大根である。(3) この大根、辛味が強いから、信州ではもっぱらうどん用だ。だが、おろして放置しておけば、辛味は飛んでいき、甘みがでるから、お寺向きだ。それに、ビタミンCと糖分が格段に多いそうで、なかなか優れた食材だ。 それに、大根は土中で長期貯蔵できる。多用していたと思う。 と言うことで、今回は饂飩、大豆製品、大根を使った「素食」でいこう。 饂飩は乾麺。 大豆製品としては、湯葉が妥当なところだが、清貧イメージには合わないので避けよう。と言うと、オカラにしたいところだが、ぼろぼろして箸で食べずらいし、販売しているパックの量が多すぎて食べきれないのでうまくない。まあ、生揚げということで妥協しよう。 調味料は、甘味料と出汁なしで、胡麻油と香りが強い再仕込み醤油だけというのはどうか。 メニューはこうなる。 ■冷饂飩大根おろしがけ ・茹でた饂飩を冷水でよく洗う。 ・大根おろしはたっぷり量とする。 ・大根の皮は捨てずに、食後にでも調理したら如何。 [ニンジン、ゴボウと一緒に、キンピラに使うことをお勧めする。] ■大根葉と厚揚げの炒めもの ・大根葉を塩をいれた湯で下茹で。 ・冷水ですぐに熱をとる。 ・水をよく切って、食べやすい長さに切る。 ・フライパンで胡麻油を熱し切った厚揚げを軽く炒める。 ・さらに、大根葉を加えて炒める。 ・醤油をかける。 ■食後の煎茶 間違えてはこまるが、これは寒さを感じる季節の食事である。 --- 参照 --- (1) “インタビュー酒井雄哉(天台宗大阿闍梨・82歳)”「サライ」21号 小学館 [2008.10.16発売] (2) 工藤秀和(天台宗出版室長): 「 鬼心仏心 精進料理」天台ジャーナル [2005.12.1] http://www.tendai.or.jp/journal/photo/A4-33.pdf (3) 「調べちゃいました<辛味大根>」県立長野図書館メールマガジン [2008.1.15] http://archive.mag2.com/0000179345/index.html?start=20 (比叡山と桜の写真) [Wikipedia] by Moja http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%BB%E5%83%8F:Sakura_MtHiei.jpg 「料理講座」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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