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2008.11.26
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報恩講料理を見て…


 親鸞[1173〜1263]の評価は今でも様々。
 革命家と見ることもできるが、
 一歩間違えれば、肉食妻帯の破戒僧とされてしまう。
 形式だけの精進料理に意義を認めなかった訳だが、
 その精神は伝わっただろうか。

  → 「歎異抄の世界」 (C) 大谷大学
  → 倉田百三: 「出家とその弟子」
 1917年 [青空文庫]

 仏教の歴史をたどって「食」を考えて来た。そうなると、密教の次は念仏教ということになろう。
  → 「高野山の精進料理を考えてみた」 [ 2008.11.5]、 「延暦寺修行僧の食事を想って」 [2008.11.19]

 国家平安を僧侶が祈祷する山岳宗教から、在家宗教への革命的変化が発生したのは、戦乱の世。戦乱で苦しむ民衆を救うのは、個々人の信心のみというコペルニクス的転回が発生した訳だ。当然ながら、南都・北嶺と対立。
 開祖は比叡山から下りた法然聖人(浄土宗)。だが、余りに普及しすぎたようで、親鸞聖人(浄土真宗)が「真」を唱えることになる。それこそ、お寺、お経、などなくてもかまわないし、戒律さえ大事に考えないという、反在来仏教が生まれたのである。

 そんな経緯を考えると、お寺公認の精進料理でなく、在家信徒の料理が本筋な気がする。(黒漆と金箔の部屋が続く西本願寺の賓客用料理を真似できるとも思えないということもあるが。)
 それに当たりそうなものとしては、親鸞聖人忌「報恩講」の、一汁三菜の「お齋」と呼ばれる昼食があげられよう。福井の伝統行事食でもある。(1)もちろん、お勤め[法要]と説教[法話]が終わってから庫裡で頂くことになる。歓談しながらの食事だ。
(福井県には、親鸞直系の西本願寺・東本願寺とは別に、門弟の流れをくむ宗派がある。[毫摂寺、誠照寺、専照寺、證誠寺](2))

 こうした真宗信徒のコミュニティには、阿弥陀仏のもとでは、命あるものは平等という思想が今も受け継がれていることだろう。信長が目の敵にした、一向“衆”が今も残っていると言えかも。(門徒1,000万人と言われている。)

 当然ながら、この料理に使う素材は、収穫されたばかりの野菜(カボチャ、ジャガイモ、ナス、ウリ類、ダイコン、カブ、等だろう。)。もちろん、信徒が持ち寄ることになる。そして、当日、数名の門徒が、受け継がれたメニュー通りに調理する。
 モドキを狙ったような精進料理とは対極的で、細工やお飾りを排したもの。薬味も不要。余計なことに一切神経を使わない、こだわりが無い料理と言えよう。
 大きめに切った野菜の煮物が中心で、油を余り使わないのが特徴である。
 蛋白質食材としては、大豆製品や麩となる。

 ちなみに、東本願寺の行事食を見ると、“一ノ膳では、汁はけんちん汁、 三菜は焚物・合物・風呂吹き大根、ご飯と香の物”、“二ノ膳は、 白麦饅頭つぶあん入り2個1組・お酒「五環正宗」・みか ん2個”(3)
 各地の“講”から届けられた野菜を使って作る慣わしだそうである。

 一方、西本願寺の行事では、小豆粥接待が慣わしになっているようだ。(4)法要や法話の合間や、夜食に頂く習慣から来ているのだろうか。
 聖人の好物という謂れがあるらしいが、ハレ料理に使う小豆の伝統が組み込まれていそうな気もする。

 そうなると、メニューとしては、こんなところか。

■ご飯■
■打ち豆汁■
「打ち豆」は本来は、家庭で乾燥大豆を叩いて潰していたのだろうが、そんなことは現実的ではないから、ローラーで潰したのだと思われる市販品を購入しよう。どこにでも売っている商品ではないが、珍しいというほどではなさそうである。
・本来は、うち豆を洗い上皮をとって、水に漬けるらしい。
 (市販品はその手間は不要と記載されている。)
・里芋の皮を剥く。大きいものは、大振りに切る。
 (下茹でしない。)
・味噌を少量溶いた昆布出汁に打ち豆と里芋を入れる。
・柔らかくなるまでよく煮込む。
・大振りに切った大根、人参、舞茸を入れさらに煮込む。
・味噌で味をつける。
■いとこ煮■
いとこ煮の由来は諸説あるようだが、納得性が薄いものばかり。小豆と野菜を煮るものを指すらしいが、南瓜が入ることが多い。
・カボチャを準備する。
   -食べやすい大きさに切る。
 ▼!!!▼硬いので切る時に大怪我をしないように注意
   -皮は適当に切る。(斑模様でかまわない。)
   -切ったカボチャを洗い、鍋に入れ半日放置する。(水分を出しきる。)
・ゆで小豆をつくる。    -洗ってから水に入れ半日放置。
   -新しい水に入れじっくり茹でる。
   -茹で汁を捨て、再度新しい水を入れ、さらにじっくり茹でる。
   -差し水して、小豆が柔らかくなるまで煮る。
・カボチャに直接砂糖をすり込み、少々放置する。
 (砂糖が湿気を吸ってべたつくようになる。)
・少量の出汁に一つまみの塩と醤油を入れ、カボチャを煮る。    -沸騰したら、弱火にしてことこと煮る。
    (蓋をして蒸すことが肝心。)
   -カボチャが柔らかくなったことを確認する。
・ゆで小豆を入れて、味を整える。
・煮汁がなくなるまで煮詰める。
  (参考) 「東海編いとこ煮―愛知県宝飯郡御津町 大恩寺―」 浄土宗 “かるな”  http://www.jodo.or.jp/cuisine/05.html
■春菊とエノキ茸のお浸し■
・春菊とエノキ茸をそれぞれさっと茹で、水でさらし、水をよく搾る。
・ポン酢醤油で合える。
■ヒジキ入りおから煮■
豆腐店のできたておからを購入して作ろう。
・干しシイタケは前日から水で戻し、傘の部分だけ細切りする。
 (戻し汁は使わない。)
 (彩り用途でしかない、人参は入れない。)
・乾燥ヒジキは最低1時間水で戻し、よく水切りして、数回洗う。
・油揚を縦2等分し、細切りする。
 (流石に、この程度の油分がないと美味しさが感じられなくなる。)
・鍋に、シイタケ、ヒジキ、油揚を入れ昆布出汁でよく煮る。  (ひたひた状態で弱火。醤油、味醂、砂糖で調味。)
・オカラをフライパンで乾煎りする。
 (油は使わない。オカラが焦げないように注意。)
・オカラにパサパサ感がでたら、鍋から汁ごと具を加えて混ぜ、温める。
  (参考) 「九州編 ひじきおから―熊本県水俣市 西生院―」 浄土宗 “かるな”  http://www.jodo.or.jp/cuisine/23.html
■煎茶■

 --- 参照 ---
(1) 「伝承される福井の食文化 報恩講料理」 福井県農林水産部
   http://info.pref.fukui.jp/hanbai/syunfile/syun10/densyo_01.htm
(2) http://www.shin.gr.jp/kyodan/103.html
(3) 「2007.11.24. −2007年報恩講4日目− 「お斎」接待が始まりました」 東本願寺
   http://higashihonganji.jp/news/pdf_2007/071124bnews.pdf
(4) 「2008年親鸞聖人御正忌報恩講」西本願寺
   http://www.hongwanji.or.jp/2008/011_houonkou/index.html
(親鸞の絵) [Wikipedia] http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%BB%E5%83%8F:ShinranShonin.png


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