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2009.3.11
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浅漬・調味液漬での学び…

   昆布の旨みと薄塩味で食べる野菜が一番人気のようである。
   癖なき野菜の浅漬が好まれているということ。


 以前、漬物の話をしたが、“漬け床”タイプの話でおわってしまった。
  → 「夏向きのお漬け物 」 (2008年7月23日)

 今回は、“浅漬”と“調味液漬”を検討してみたい。
 軽い話題に映るかもしれないが重要な話。従って、ご自分の頭で考えながらお読みいただければ幸。
 ・・・と言うのは、こうした漬物の自作をする人が多いし、真似をすればソコソコのものになるから、どうしても安易に学びがちだからだ。実にもったいない話である。折角の“学び”のチャンスをみすみす逃しているのでは。
 前段話が一寸長いが、我慢してお読み頂きたい。

 まず、“浅漬”と“調味液漬”の現実を直視してみよう。
 スーパーに行けば、このジャンルの漬物は沢山並んでいる。それこそピンからキリまで。なかには、加工の手間がかかっているにもかかわらず、ただの野菜を買うより安かったりする。
 それに、即席の調味液も販売されている。
 要するに、そんなものと競争して作ったところで、たいした意味はないということ。

 にもかかわらず、自作したがっている自分の存在。もしそうなら、ドグマ信奉があるかも。これを捨てないと勉強になるまい。
 ココがポイント。

 つまり、初心者が“浅漬”と“調味液漬”を学ぶ時は、以下の点を注意すべきということ。(独断と偏見の塊だから、ご注意されたし。)
  ・野菜酵素や乳酸菌醗酵で生まれる有効成分の摂取を目的にすべきではなかろう。
    ----低温短時間の浅漬けに大きな効果があるとは思えない。
    ----その気なら、本格的な醗酵が必要な漬物の勉強をお勧めしたい。
  ・野菜盛り沢山の和風サラダと考えるべきでない。
    ----付けダレで生野菜を食べる和風料理は別にある。
    ----野菜摂取量を多くしたいなら、“お浸し”をお勧めしたい。
  ・新鮮な野菜を利用するための料理とは思えない。
    ----もともと、漬物とは保存性向上を図った料理。
  ・余った野菜の有効利用法として、優れているとは言い難い。
    ----屑野菜なら“スープ”が優れているし、圧倒的に美味しい。
    ----良質な部分があるなら“蒸し”か“炒め”で食べることができる。
  ・漬物にすれば、野菜の持ちがよくなるという訳ではない。
    ----軽い塩味の漬物は日持ちしない。
    ----野菜は乾燥すればいくらでも日持ちする。
  ・昆布などの旨みが効いている漬物を有難がるのは疑問。
    ----出汁を愉しみたいなら“煮物”をお勧めしたい。
  ・塩分控えめになるかは、なんとも言いがたし。
    ----古漬け沢庵数切れと浅漬けドッサリのどちらが塩分摂取量が多くなるかはわからぬ。

 いろいろ御託を並べたが、それなら、何なんだということになるかも知れない。しかし、その解答はご自分でお考えになるしかない。
 上記で言いたいことは、“浅漬”と“調味液漬”は、本格的な醗酵がからんでいないから、漬物の旨みに係わる味は堪能できる筈がないといいうこと。

 しかし、それがかえってよい点がある。野菜が本来持っている微妙で独特な味を知ることができるのだ。
 実は、これは簡単そうでな結構難しい。
 生野菜だと、様々な味が入り組み、複雑そのもの。それがよいのだが、食感も気になるし、香りも高く、特定の味わいに集中しにくいのである。
 ところが、出汁の旨みを全く加えないタイプの浅漬けや調味液漬けだと、それが可能となる。
 漬物の食感は単純であるし、添加物を醤油や味噌に限るなら、野菜が持つ本来の独特な風味が目立つからだ。
 まあ、醗酵させないのだから、漬物というより、お浸しあるいはヌタもどきとも言えるが。

 それでは、どうしたらよいかといえば、2段階に分けて試してみるだけ。簡単至極。
 【第1段階】 乾燥野菜を使って野菜独特の風味を知る。
 【第2段階】 野菜の微妙な辛味や苦味を知る。
 尚、この順番は守る必要がある。第1段で、味がわからないと、第2段に入っても、表層的な味の学びになってしまうからである。

 以下、学び方を記載しておいた。ご参考まで。

■■■第1段階: 乾燥野菜を使って野菜独特の風味を知る。■■■
 乾燥野菜は、水で戻し、煮込むのが一番だが、野菜の味とはどんなものか知る上では、調味液漬が優れている。但し、あくまでも、第2段に進むための準備だから、そのつもりで。
 調味液が不味かったらどうにもならないから、味見をしながら少量作ること。
 調味液はまあまあでも、乾燥野菜の「ひなた臭さ」しか感じられないものができることもあるが、それは野菜が悪い。捨てるか、調味液に旨み成分を入れて不味さを隠すしかない。これでは乾燥野菜を味わうどころではないから、勉強にはならない。
 手順は以下の通り。
●乾燥野菜の調達
  [自家製]
   切った野菜を干し網に並べ日に干す。(夜は屋内に。裏返ししたりして数日。)
   大根が無難だが、なんでもよい。硬すぎたり、柔らかすぎる野菜は難しい。
  [購入]
   干し大根はスーパーの定番。よく探すと、他の野菜も並んでいることがある。
   できる限り高品質と思われるものを選ぼう。(素人には難しい。勘である。)
   乾燥野菜が混合されているものは、味がわからなくなるのでやめよう。
   (尚、煮ないと食べれないものは不適。)
●前処理
  乾燥野菜を水に浸し、軟さがでるまで冷蔵庫放置。(普通、一晩は必要。)
●調味処理
  調味液に漬け冷蔵庫で一日放置。
  基本調味液としては、醤油に酒/味醂をいれ煮立て、千切り生姜を入れて冷めたもの。
  味は自分好みにすればよいだけのこと。
  酸っぱさが欲しいなら、味を見ながら、これに酢を加えるだけのこと。
  くどいが、出汁と砂糖はご法度。
  ただ、乾燥野菜の質が今一歩だと、調味液に出汁成分を加えて食べるしかなくなる。

■■■第2段階: 野菜の微妙な辛味や苦味を知る。■■■
 こちらが核心。
 辛味や苦味の味覚は退化一途というのが現実。野菜は癖がなくなる一方で、苦味を感じさせない料理全盛だから、致し方ない。
 その一方で、甘さや刺激感がもてはやされている。
 お蔭で、微妙な辛味や苦味を愉しむことができにくくなってきた。こまったものだ。

 例えば、拙宅では、1本1,000円程度の、3年ものの沢庵を好む。この美味しさとは、うっすらと感じる苦味。この味に慣れない人は、食べた途端に不味いという反応になる。それでかまわぬという人もいるかも知れないが、味覚の喜びが失われていくのは残念至極。
 何故、こんなつまらぬことにこだわるかといえば、苦味や辛味を楽しめる能力こそ、ヒトらしさと考えるから。他の動物が苦手とする植物を食べることで、上手く棲み分け、生き残りの確率を高めてきたと見ているのである。
 つまり、苦味や辛味を楽しめなくなってくると、生命力が落ちてくる気がする訳。
 ただ、苦味や辛味は、たいていは毒。その摂取を減らすのは、進歩の面もあるから、一概に決めつけることは危険。

 それはともかく、微妙な苦味や辛味を賞味するには、どんな漬物を作ったらよいか、例示しておこう。
●辛味/苦味野菜の調達・・・独特な風味を感じる野菜を選ぼう。
   ・芹科の葉野菜[カラシ菜、クレソン、芹、根三つ葉] → 「芹料理のお勧め 」 (2008年10月29日)
     (苦味が薄く不適: 葉三つ葉) (硬過ぎ: 人参葉) (癖がありすぎ: 明日葉、セロリ)
   ・油菜科の葉野菜[菜花、大根葉、蕪葉]
     (苦味が薄く不適: 白菜、水菜、キャベツ)
   ・羊歯科の山菜[わらび/ぜんまい]
     (苦味が薄く不適: コゴミ)
●前処理
   [柔らかい野菜] 食べない部分を捨てて、冷水でよく洗う。
   [多少硬い部分がある野菜] 洗ってから、硬い部分を電子レンジで短時間加熱しすぐ冷水に浸す。
   [かなり硬い野菜] 洗ってから、熱湯をかけてしんなりさせ、すぐ冷水に浸す。
   [灰汁が強い山菜] よく茹で、水に晒してアクを抜く。(市販の処理品もある。)
●調味処理
   野菜似合いそうな自分好みの調味液を作ろう。
   [そのまま塩味で食べたい]
     食べる大きさに切り、塩揉みし、軽く重しをして冷蔵庫で数時間放置。
     尚、辛味を引き立たせるために、トウガラシを入れる。
   [醤油味で食べたい]
     食べる大きさに切り、調味液に漬け冷蔵庫で数時放置。
     辛味を引き立たせるために、調味液にカラシを入れるとよい。例えば、以下のようなもの。
     (1) 粒マスタードと醤油/味噌を混ぜた粘度が高いもの。
     (2) 醤油に酒/味醂をいれ煮立て、冷えてから練り和からしを溶く。

 --- 参照 ---
(お新香のイラスト) (C) Hitoshi Nomura NOM's FOODS iLLUSTRATED http://homepage1.nifty.com/NOM/


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