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2009.11 .18
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焼き塩鮭のお勧め…


 寒き朝 新巻鮭の 塩嬉し
  大辛の塩鮭は絶滅危惧種かも。

← (C) EyesArt, Inc. 「フリー画像素材 EyesPic」


伝統の塩鮭を入手するのは難しい。
 冷凍鮭の料理の話をした。 → 「ムニエル賞味」 (2009年7月1日)

 しかし、日本の鮭といえば「塩鮭」だろう。スーパーには必ず売っている商品だが、どうなっているか、少し考えてみようか。
 「生サケ」と「塩鮭」は昔は全く違う食材として扱われていた。ところが、今は売り場は一緒。(1)

 お陰で、美味しい塩鮭を探すのが難しくなった。名称は「塩鮭」だが、実態は、「生サケ」に塩をふったもの。これが「甘塩」として売られているのである。
 そんなことを言っても、その何が悪いのという調子だと思う。小生の感覚からすれば、こんなものは「塩鮭」のカテゴリーに入らないのだが、おそらくその理由もわかるまい。
 おそらく、スーパーには美味しい「塩鮭」は並んではいまい。残念至極。

売られている鮭がどんなものかわっぱりわからぬ。
 だいたい、鮭・鱒類は、販売する方の都合で、余り細かな説明なく売られている。とんでもない話である。
  → 「さけ 」 (2006年9月1日)

 言うまでもないが、鮭は秋に獲る。最盛期は、一応、十一月十一日とされている。海外には適用できないが。
 何処産が美味しいかといえば答えは自明。できる限り北で、綺麗な水の長い川の産。
 そうそう、ここで言う鮭はシロザケである。紅ではない。ここが重要。スーパーではサケの主流は紅で、白は安価イメージ強し。
 これが困るのである。白の「塩鮭」とはピンキリもの。桐は買いたくないが、上質なものは高価で売りにくいから棚に並ぶことが稀なのである。

 ピンキリがどの位すさまじいかは、“北海道東部の秋鮭のブナ毛度合いの格付基準”を見れば一目瞭然。6段階あり(銀毛S,Aブナ,Bブナ,Cブナ,Dブナ,ホッチャレ)、(2)もちろん、雌より雄。かつての常識はBブナでどうにか食べられると言われたが。
 さあて、スーパーで売っている切り身はどれかネ。何の情報も無いが、国産にしては随分安価。切り身の外見ではよくわからないし。それに、魚体が大きい方が美味しいのは自明だが、切り身では推測不可能。

塩鮭はピンキリ商品である。
 実はそれだけではない。新巻鮭は、塩で漬け込むのに最低1週間かけるのが伝統的作り方。しかも均一な塩漬けなるように、途中で積み直して位置を動かす。さらに、塩を落として、風乾する。おかげで塩辛さはもの凄いが、旨みが生まれ、それが凝縮されるのである。(3)

 ご想像がつくと思うが、このような鮭には滅多にお目にかかれるものではない。並んでいるのは「薄塩」とか「甘塩」ばかりで、あっても「中辛」表示。この作り方は「大辛」しか作りようがない。
 もっとも、申し訳程度に「辛口」も並んでいるが、これが安価ときている。それがたとえ「大辛」だろうが、述べたような新巻鮭とは全く違うものであるのは、ほぼ間違いない。

 安い、一本物を作るのは簡単である。漬け込みを2〜3日で完了し、すぐに冷凍して出荷すればよいだけだからだ。当然ながら廉価。塩分の浸透度合いはなんともいえぬ。ただ、一般的に塩辛いのは表面だけのことが多いから短時間の塩抜きで相当な効果が期待できる。

 スーパーで売られているのは、どうもこれでもなさそうである。と言うのは、塩加減を保証したりするからだ。要するに、新巻ではなく、三枚おろしにした鮭を塩水漬け込みしたもの。これなら、確実に濃度コントロール可能。
 それでは、多少価格が上のスーパーに並ぶのは、この手の切り身でははなかろう。この手の鮭を喜ぶ人は多い。身を高級にすれば、それなりの味になるからだ。

伝統製法の塩鮭は皮も美味しい。
 ここまでお読み頂ければおわかりだと思うが、よく食べている「塩鮭」の切り身と、本物の新巻の切り身は全く異なる商品である。
 伝統品は、どうしても大辛になるから、それが気になる人は、美味しく感じることはないが、炊きたてご飯をこの塩分で食べると塩鮭の風味がわかるかも。たまには、そんな味を知る試みも有意義では。

 尚、この場合、皮も必ず食べよう。嫌いに人もいるが、本来は美味しいものである。雑味のもととなる脂が落ちているからだ。乾燥させているものなら、油の酸化臭は感じないのが普通。

 高級ブランドに目が眩むタイプで、超浪費家を自称する文筆業者、中村うさぎ氏(1958年生まれ)も、皮の美味しさにほれ込んでいるお一人。高級料理にも惹かれるらしいが、本当に好きなのは、安物である、シャケの皮だとか。
 “特に香ばしく焼いた塩ジャケなんてぇのは、ありゃあ、ほどよく脂の乗った「皮」の部分が一番美味しい”(4)とのこと。小学校3年生の頃から好物だそうだ。

 そうそう、今や本物は安物ではなく、高級品なのですぜ。残念なことに、それがブランド化していないから、誰もわからないが。

高価でも、是非、“本物”をご賞味あれ。
 お読み頂いて、“本物”に魅力を感じたらお食べになったら如何かな。脂ののった輸入紅鮭の焼鮭定食の味に慣らされていると、塩辛いだけで、美味しく感じることはないから、そのつもりで。

 本気で料理に取り組もうというのなら、一本丸々の上質の新巻鮭を料理するのが筋だが、これはお金もかかるし、初心者にはアラ料理は無理である。
 信頼のおける専門店で「大辛」の本物の新巻の切り身を購入することにしよう。言うまでもないが、折角食べるのだから、伝統製法の上級品であることを確かめよう。

 昔は、現在の高級品が普通の商品だったから、“塩抜き”(5)して使うことも多かったろう。従って、塩辛い料理がお嫌いな方はそんな手もない訳ではない。旨みが抜けないようにするなら、1〜2日でどうやら効果があがるという程度ではないか。 そんなことをする位なら、生鮭を使った方がよかろう。安くて美味しい。

 言うまでもないが、料理は、単なる焼鮭に限る。これに炊きたてご飯。漬け物不要。
 これだけでは寂しいから、2品と汁をつけよう。
  ・根菜等の薄味の煮物(大根、人参、牛蒡、蓮根、里芋)
  ・小松菜のお浸し
  ・お豆腐の味噌汁(香り高い良質な味噌を使うこと。)

 --- 参照 ---
(1) 「塩鮭と生サケ」 魚河岸北田 [2001年4月7日]
   http://www.salmon.co.jp/Topics/Topics61-ShioNama.htm
(2) 「鮭のブナ化」 佐須一商店
   http://www.h3.dion.ne.jp/~shu1/bunaka.html
(3) 「新巻サケのつくりかた」 岩手県水産技術センター
   http://www.pref.iwate.jp/~suisan/sake/sake-recipe/aramaki.pdf
(4) 中村うさぎ: 「中村家の食卓」 フィールドワイ 2004年
(5) 「秋鮭 料理の基本と裏技」 北海道漁連
   http://www.gyoren.or.jp/seafood/sake4.html#q3
(鮭の切り身の写真) (C) EyesArt, Inc. 「フリー画像素材 EyesPic」
  http://eyes-art.com/pic/


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