トップ頁へ>>> オジサンのための料理講座
←イラスト (C) SweetRoom
2010.4.14
「料理講座」の目次へ>>>

 


大豆風味の菓子を作ってみようか。…


 州浜文様は波打際の美しい曲線の造形。
 家紋のように象徴的にすると、それがよくわからなくなるが、
 水の波紋のようなものか。(1)
 祝儀の饗宴の飾り物を載せる雲形の台も州浜を表しているそうだ。
 そんな名称の由緒あるお菓子もある。


はじめに、・・・。
 京風料理の話をしてしまったので、京風のお菓子を作ってみるかという気になった。
  → 「適当な京風料理」 (2010年4月7日)

 考えてみれば、京都の和菓子屋さんのバラエティぶりは凄い。素人がそこから学ぶのは無理な感じはするが、自製ならではの楽しみもあろう。
  → 「京菓子を賞味する。」 【古都散策方法 京都-その26】 (2010年3月9日)

 〜 なにはともあれ、スハマから。
  「洲濱」は外せないから、ここらあたりから挑戦してみてはどうか。
  州浜は家紋にもなっているが、浄土を表現する日本庭園で用いられることで、名称だけはよく知られている。と言っても、その大元である海岸の風景を知る人は、ほとんどいないのではなかろうか。
 なにせ、河口や海辺は、どここもかしこも護岸工事で風景が一変してしまったから。
 といっても、波に洗われて、浜の形が変わるところをのんびり眺めて楽しむ時代でもないが。
 それに肝心の庭にしたところで、そのデザインは単なる砂浜以上ではなかろう。州浜と言うのだから、本来は、水面に砂地が延びてこその美しさを誇張すべきだと思うが、そんなものを見たことはない。
 それでも、切り出した石を積み上げた護岸でなければまあよし。そうでないと、中国皇帝のお庭や、船着場の感覚が出てしまい、気分が削がれること間違いなし。

 前置きはこの辺りにして、菓子の話を始めよう。
 この情景をイメージした、縁起が良いお菓子がスハマである。
 似た名称の餅系菓子にスアマがある。こちらも縁起物に近いようで、紅白に染めた棹形態が普通。多分、丸餅形態にして鳥の子餅と呼びたいところだが、乾燥しにくい棒状にしたので、スハマを真似した言葉遊びで、素甘としたのでは。当然ながら、スハマとは系譜が異なる。
 それはともかく、スハマも棒状で、切って供されると、切り口の形が州浜文様になるもののようだ。本来は、ここが一番の嬉しさだろう。
 ただ、この菓子の一大特徴は米粉を使わず、大豆粉を使うという点。大豆は独特の臭みがあるが、それを逆手にとって香ばしさを感じさせることで、磯臭さの象徴としたのかも。
 素人考えだから違っている可能性もあるが。
 なにせ、その風味、色、形は色々らしいから。
  → 「京のお菓子味見録 洲濱(植村義次)」 (C) YOU1

 色から言えば、緑と黄土色の粉を使って、海と土地の色彩を出すとよさそうにも思うが、素人が作るのならそこまで凝ることもなかろう。大豆粉の菓子を作ると言う点に集中するのが無難。
 それだけでも結構難しいから。

 本当は煎りたて大豆を石臼で挽くと香ばしくておいしいが、それは大変なので焦がし黄な粉を購入して使うことにしよう。生豆を購入して自家製を作ってもよいのだが、面倒だし。尚、余り焙煎していない「州浜粉」があるとされるが、香ばしい焦がし黄な粉でさえ、どこにでもある訳ではないから、そこまですることもなかろう。
 ただ、青大豆のうぐいす黄な粉や、少し茶色系の黒豆黄な粉は並んでいるので、こちらが好みの人はわざわざ焦がしにする必要はない。
 もっとも、「州浜粉」を見かけても、飛びつくべきかよく考えた方がよい。そうそう売れるものではないだろうから。(余り熱を通していないと劣化しやすい筈。)

 作り方は単純だが美味しいものができるか腕次第。
  (1) 焦がし黄な粉を適量ボウルに入れる。
     -フライパンに入れて軽く炒って水分をとばし香ばしさを出すとよい。
     -単なる黄な粉の場合は、オーブンで軽く暖めて湿気を取るとよい。
     -要するに、失せた香りを復活させた方が美味しいというだけのこと。
  (2) 三盆糖を好みの量だけ加えよく混ぜる。
     -細い箸で。(ケーキ作りに慣れた人は泡立て道具.)
     -三盆糖以外はお勧めしない。
  (3) 水飴を加えて練る。
     -量は適当。余り多く加えないこと。

大豆甘納豆も面白い。
 まあ、州浜のなにがよいかといえば、大豆の香りとその独特な風味。素朴な豆の味わいを出しながら、それを“雅”の味にするのだからかなり難しい仕事。
 これだけではつまらぬから、豆の形を留めた菓子も作ってみたら如何かな。

 そうなると、何にするかだ。

 これぞ京都という豆菓子と言えば、おそらく「花供僧」だろう。名前がふるっている。
 煎り豆を砂糖蜜でまぶしただけのもの。五色豆もそうだが、この手の豆は結構好まれているようだ。マメマメしく働くという縁起かつぎもできるし。
 興味は湧くが、この手の豆菓子は豆の質と鮮度、煎る作業の巧拙で相当な違いがでてしまそう。素人の自作には余り向いていない気がする。

 そうなると、甘納豆といきたいところだが、これは日本橋の榮太郎の発案だ。しっとりした、ぬれ甘納豆も新宿の花園饅頭の作品。京都発ではない。
 京都のことだから、それをそのまま真似るのはプライドが許さないだろうから、栗か蓮の実のものは京都発かも知れぬ。もしかすると、豆板もその手のものか。
 京都甘納豆製造協会(2)があるから、京都で結構食されていそうだが。

 折角だから、大豆の甘納豆を作ってみたらどうだろう。そんな見かけないものを作って、奇をてらうつもりかと誤解しないで欲しい。
 挑戦するのは黒大豆。
 皆さんよくご存知な豆としては、丹波黒豆か。
 黒豆甘納豆なら、デパ地下にいけば数種類はあるだろう。どれも結構なお値段であり、むしゃむしゃ食べるようなものではないし、皮の触感が残っていて、他とは一風変わったものである。
 これなら自製も面白かろう。

 作り方は自明。しかし、とんでもなく手間がかかる。
 素人の場合、手間をかけると美味しものができる保証はないが、かけなければ美味しいものができないことだけは保証できる。まあ、暇な時に試すべきである。
  (1) 豆を煮る。(ウエブには様々な解説があるからそちらを参考にされたし。)
     -煮る前に最低1日浸漬すること。
     -落とし蓋は必須。
     -黒さを出すために鉄釘を入れることもある。
     -煮汁から出る灰汁をしっかり捨て、出なくなったらいったん冷ます。
     -グラニュー糖のシロップ液を作っておき、これに数時間浸漬させる。
     -後は弱火でじっくり煮るだけ。
     -餡の場合と同じで、塩を入れるとよい。
     -醤油を隠し味に入れる人もいる。
     -ともかく柔らかくすること。(古豆や外れ品は技術ではどうにもならないが。)
  (2) 煮つまってきたら、冷まして、翌日又シロップを加えて煮る。
     -都合、最低3回は煮るべし。
  (3) 水分を自然蒸発させる。
     -水煮終ったら必ず一晩かけて冷ます。
     -キッチンペーパーの上に豆を並べ、上にもペーパーをかけ放置する。(影干)
     -多少乾燥してきたら、オーブンで熱乾燥。(できる限り低温。)
  (4) 表面に湿気がかなりあるなら、グラニュー糖をふりかける。

 ということで、多少、酔狂的な企画であるが、粋と思って作れば楽しいのでは。

 --- 参照 ---
(1) 「洲浜の作図・描き方」 夏貸文庫 http://dearbooks.cafe.coocan.jp/paint/kamon-p026.html
(2) http://www.kyokakouso.jp/kumiai_page/amanatto_p1.html
(家紋洲浜の画像) イラスト by CREST-JAPAN.NET http://eps.crest-japan.net/


「料理講座」の目次へ>>>     トップ頁へ>>>
 
    (C) 1999-2010 RandDManagement.com