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2010.4.7
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適当な京風料理…

豆腐百珍は確か江戸。今でも笹の雪で豆腐づくしを楽しめる。
創業者は京都出身。水の違いで軟い豆腐作りに苦労したとか。
京都の豆腐は味噌田楽でわかると言われていたとか。
もちろん、南禅寺湯豆腐も有名だったが。

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はじめに、・・・。
 京都料理なるものを試してみようか。
 雑誌が売れなくなったら、犬猫モノか京都モノにすると持ち直すそうだが、読者を呼ぼうという気がある訳ではないので念のため。書いている目的を正直には言わないが、まあご想像におまかせしよう。たまに、怒りを呼ぶようなガツンを持ってくるからなんとなくおわかりだとは思うが。
 ただ、商売人ではないので、校正どころか読み直しもしなかったりするから、ミスや間違いは少なくない。そのつもりで。
 もっとも、売文業者の本のように、内容的にいい加減なものを書く必要はないから、そこだけは安心してお読みいただければと思う。

 つまらぬ話をしたのは、予めお断りしておく必要があると思ったから。
 はっきり言えば、ガイドブックの説明が、小生には今ひとつピンとこないので、勝手な見方で書きますぜということ。
  [例えば]→ 「京料理異論 」 (2005年5月2日)

 それは、日本料理が何かと言う話とウリ。 小生は、スシとは下町屋台料理、スキヤキは開化料理、粥と梅干は修業料理と見ている。それとは違う茶懐石のようなものもある。どれもかなりの独自性を持っているのは間違いないが、日本料理とはその一つに特徴があるというより、こうした様々なものが雑炊的に同居しているところ。同じ人が、日を変えれば、様々な食を楽しむという柔軟性こそが一大特徴と見ているわけ。
  → 「日本の独特な食文化 」 (2009年11月5日)

京料理の特徴は素材を楽しむことにあるのでは。
 とはいえ、やはり京都の特徴というものはある。  なんといっても、違いが目立つのはお雑煮。京都内でも微妙に違うようだが、基本ははっきりしているようだ。それは、甘い白味噌と、どろどろした茹で丸餅を用いる点。このこだわりは捨てられないようである。
 清汁に焼いた切り餅しか食べたことがないと、これは苦手の部類に属す食べ物となる。

 この執着ぶりを見ていると、京都の味は薄口とされているが、多少の疑問を感じざるを得ない。京都は濃厚なマッタリ感で、東京は軽い鳥出汁か、それも無しの昆布か煮干の出汁だけのサッパリ感という対比にならざるを得ないからである。
 ただ、寺社・公家の行事料理や茶事に係わる“食”は、微妙な素材の味を感じ取ることに意義があるだろうし、それが愉しみでもあるからサッパリした薄味になるのはわかる。それは確かに京都の味だろう。
 しかし、町衆の普段の料理は結構しっかりした味付けでは、と思わざるを得ないのである。

 そんなことに気付くと、庶民的な食べ物である、饂飩・蕎麦での対比話が浅薄なものに見えてくる。違いは歴然としているが、その意味を取り違えているものばかりでは。
 江戸前とは、セイロに盛った蕎麦を濃いつけ汁を入れた猪口につけて食べる流儀。丼に入れたタネものは、暖かくするための延長版で、基本形ではない。ここを間違えているものが多い。
 ご存知、セイロの美味しさの決め手は食感。特に、喉越し。挽き立て蕎麦、汁の醤油、そして鰹節の香りがそれを引き立たせる。ここに欠かせないのが、白葱と山葵からくる刺激。しっかりした濃い味付けを目指している訳ではなかろう。
 そこでだが、京都の前に、同じ関西の大阪を引き合いにだしておこう。こちらは、庶民文化をウリにする風土だからわかり易い。蕎麦ではなく、饂飩文化だ。この基本形はザルではない。そのため麺は軟らかい。汁は薄い色にもかかわらず結構塩辛い。東京の蕎麦しか食べていないと、最初はどうにも苦手な食。だが、食べ慣れると、その美味しさが違うことがわかってくる。塩と出汁の旨みが決め手なのである。出汁の旨みを堪能したいとなれば、醤油や鰹節の香りは邪魔。刺激性の薬味も避けたいところ。従って、弱い香りで刺激が少ない青葱となる。香りも、おそらく好まれるのは胡麻。さらに、旨み強化のために、削り節をかけるのも手だ。
 もしも、タネものにしたければ、揚げ玉(“天カス”)や油揚(“刻み”)のような少量の油分を加えるのが王道。

 東京と大阪を眺めた後で、京都となる。ここの典型的なもは鰊蕎麦。おそらく、東京では人気は出まい。嬉しさの元が違うからだ。
 この料理の主体は蕎麦ではなく、煮込んだ鰊なのではないか。蕎麦の食感や、醤油や鰹節といった香りにはほとんど気をかけていないとしか思えないものが多い。鰊の味が口に残るから、蕎麦を食べている気がしないということ。
 薬味としては、鰊の味を殺すものでなく、蕎麦食が進むためのものならなんでもよいということではないか。全く、違う蕎麦文化だと思う。
 そして、なんといっても特徴的なのが、鰊の味付けがしっかりしている点。鰊を堪能したいのである。

 こんな話では納得できない方が多かろう。
 庶民の食べ物の王者、ラーメンで食べ比べると、もっとよくわかる。小生は、余り食べない方だから偏見もあるかも知れぬが。
 まず、東京だが、ここにはそれこそ全国のどんなものでも集まってくる。多種多様というより雑多。そのなかで流行しているのは、コッテリ系のようだ。これは現代の風潮だから間違い易いが、もともとの東京のラーメンとは“支那そば”。今でも、目立たないが人気がある。普通は鶏ガラ出汁の薄い醤油味。実にアッサリしたものである。これを白の粉胡椒で頂く。
 ところが、これに類似した“京風ラーメン”なるものがある。出汁に昆布を入れたものらしい。注意して欲しいのは、“札幌”や“博多”のように“京都”となっていない点。これは東京の嗜好に合わせたもので、“京都”の嗜好ではないのである。
 “京都ラーメン”は、スープは澄んでいるが、豚骨を使っており、当然味も濃い。“支那そば”からすれば、十分コッテリ系である。もちろん、これとは別に、東京でも人気の本格的コッテリ味もある。  当たり前だが、コッテリすると薄味は難しい。しっかりした味付けになる。薄味好みではないことがよくわかる。
 そして、なによりも面白いのは、京都のラーメン点は薬味が豊富なこと。

 ふ〜む。これぞ京都。
 おわかりだろうか。
 薄味な料理に、各自、勝手な調味料を好きな量をつけて食べるというのが、もともとの公家料理だったと思われるが、その感覚が色濃くでているではないか。

好きな京風料理を企画したら如何。
 前書きが長すぎたか。要は素材を重視したイメージ的な“京風”な料理を作ろうということ。
 ただ、素人にできるそうなものにしよう。

 例えば、冬の料理で、小生が好きな京風料理と言えば、こんなところ。
 難しいもの。・・・ 「甘鯛に卵白おろし蕪の蒸料理+上質の山葵」
 同じ蒸し物でも、百合根はそれほどの感激はないが、蕪の素材感がたまらぬ。ただ、プロでも仕上がりはピンキリである。従って、アマチュアが自製するのはよした方がよさそう。問題は、この手のものを外食すれば、財布には厳しい点。従って、本来なら挑戦も悪くはないのだが。
 それでは、易しいもの。もちろん懐にもえらく易しい。・・・「壬生菜と京油揚の鍋+ポン酢」  上質の出汁にするとことのほか美味しい。出汁などなくてもという人もいるらしいが、それは一寸。  もっとも、京都では普通は水菜鍋だと聞いたことがある。だが、その水菜は京都でなくとも年中手に入る。京の風情を感じさせる野菜とはいえなくなってしまった。
  → 「水菜の話 」 (2007年12月25日)

 しかし、壬生鍋で“京風”料理と称するのも気がひける。もう少し立派なものにしたいところ。多種の皿が登場するコースらしきものが楽しかろう。先付、八寸、椀、焼、煮、強肴、酢、蒸、油、飯、止椀、香の物、漬物をできるだけ揃えようという訳。間違えてもらってはこまるが、あくまでの素人の料理だから、それほどのものを作る気はない。
 先ず、ままごとのような先付・八寸だが、これを揃えるのは厄介だから手抜きで。だが、蒲鉾のようなものになると、江戸風。ここは、冷凍の【枝豆】と【出汁巻卵】でどうか。時期なら、枝豆を茹でればよい。【零余子(ムカゴ)】があったら、それにもとびつきたい。
  → 「卵焼のお勉強 」 (2008年2月7日)
 そうそう、食べ物では無い季節の飾り葉をつけよう。ご近所で調達できないのなら、大葉で。それから、豆は莢から出した状態にすること。手を使わず、箸でそのまま食べれるようにしておくのが礼儀。
 椀は面倒な上に力量が必要そうなので割愛。
 あとは、軽く刺身的な向付を盛り付け、酒肴的に6種(焼、煮、強肴、酢、蒸、油)を作るだけ。
 もちろん、最後に御飯+漬物+お椀がでて、果物で〆ることになる。立派ではないか。尚、ご飯は時期ものの炊き込みにしたくなる人がよいが避けたい。香の物のよさが失われるからだ。

 オイオイこんなものオジサンにできるのかと言われそうだが、それほどのモノではない。

■漬け物■
〜 勝手に選んだ京風漬物〜
-季節- -漬物-
初冬 日の菜(大根型株)
茎大根糠漬
すぐき
千枚漬
菜の花(蕾)
柚子大根
梅雨・初夏 泉州水茄子糠漬
青瓜漬
小茄子漬
奈良漬
長芋紫蘇漬
白しば漬
無季節 しば漬
 美味しい炊き立て御飯にすること。京都らしさを味わうなら、漬け物が肝心。従って、季節の混ぜ御飯は駄目。止椀は、太白おぼろ昆布と美しい手毬麩に熱い出汁汁。
 小生は、京都の甘酢漬け系は好みではないが、好き好き。
 様々なものが並ぶ漬け物専門店で“京風”のものを選ぼう。表は小生の感覚で選んでみたもの。奈良漬でもよいのでは。
 糠漬や浅漬なら自家製という手もあるが、素材調達が難しいから、購入するしかあるまい。
  → 「夏向きのお漬け物 」 (2008年7月23日)
  → 「浅漬・調味液漬での学び 」 (2009年3月11日)
  → 「半漬かりの自家製糠漬け 」 (2009年12月16日)

■向付■
 春なら鯛の昆布〆お造りとか、夏なら鱧湯引きを梅肉でというところが向付や強肴に向くが、これらは出来合いモノを購入することになるだけだから遠慮しよう。と言って、サクを購入して盛りつけるたのでは、江戸の刺身料理になってしまい、“京風”感は感じられまい。もっとも、それが現代の京料理かも知れぬが。ここは京の水で作った、生湯葉を購入して刺身で供するのはどうだろうか。今や、どこでも売っているようだし。新しいものなら生麩の刺身という手も。

■焼■
 これは、鰆の西京漬に限る。自家製でもよいし、購入でも。売っているものは大きな切り身が多いので、小振りに分けたい。
 自家製ならガーゼで包むいと本格的。ロースターで焼くだけだから簡単で、滅多なことで失敗は無い。

■煮■
 京都らしい煮物というと、鰊昆布巻、棒鱈煮、魚卵(鯛/助惣鱈)煮物といったものが頭に浮かぶ。正直のところ、それほど食指は動かない。と言って、野菜の焚き合わせだと“京風”とは言い難い。春なら、筍と若布の煮物に山椒の若芽が最高だが、これは時期もあるが初心者には簡単ではない料理である。ここは“おばんざい”的なものでどうか。里芋鰹節煮なら、難しくないだろう。削り節をふんだんに入れると気分。
 煮物の説明は不要だと思うが、出汁に、さらに削り節をいれた“追い出汁”にして、醤油、酒、を加えて、必要なら塩少々を入れて味を調える。この液でじっくりと煮るだけ。味醂はある程度煮えたたて適当量加える。すべて、自分の舌で加減を判断する。薄味にしたら美味しいかは、ご自分の判断で。

■酢■
 上質な若布でいきたいが、胡瓜や雑魚では面白くなかろう。ここは山芋の千切りといこう。できれば、千鳥酢から三杯酢を作ろう。
 京風らしさは、この合わせ酢の妙味ではないかと睨んでいるのだが。
 山芋は、“鄙びた山里の食”ではないので、念のため。
  → 「山芋の話」 (2007年9月4日)

■蒸■
 鶏肉と適当な野菜を軽く蒸して、霙酢(三杯酢に大根おろし)で頂こう。鶏肉は嫌いでなければ、脂分無しのササミが望ましいが、蒸しすぎぬこと。水菜のようにシャキシャキ感が命のものは難しいので避けた方がよい。

■油■
 生麩(粟)を菜種油(カノーラ)を引いたフライパンで焼き、山椒の粉をかける。

■強肴■
 京豆腐の田楽。柚子味噌と練り雲丹。

■果物■
 季節の果物を少量。食べれない部分をすべて取り去ること。余計な味はつけないこと。
 香ばしい、焙じ茶をつけるのがよかろう。


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