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2010年3月9日
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【古都散策方法 京都-その26】
京菓子を賞味する。

〜京都の和菓子〜
[網羅を目指した訳ではない.]
-菓子舗--商品例-
葵家やきもち総本舗やきもち
青山豆十本舗豆十の豆菓子
朝日餅菓舗融通餅
あべやわらび餅
粟餅所澤屋粟餅
伊勢源六たちばなや丹波黒豆まんじゅう
本家磯田式部
一和あぶり餅
伊藤軒老舗太夫最中
井筒八ツ橋本舗八ツ橋
植村義次洲浜
鱗屋製菓衛生ボーロ
栄春堂ふくさ
永楽屋大福餅
老松夏柑糖
大森製菓焼栗松露
於多福菓舗岩清水
お婦久軒梅餅
大原女家わすれ傘(最中)
本家 尾張屋蕎麦板
親玉堂そば大福
雅苑抹茶煎餅
加賀屋清和洛月
かぎ源菓舗きび餅
鍵甚良房えびす焼き
かぎや延弘水牡丹
かぎや政秋ときわ木
鍵善良房あられ(砂糖菓子)
鍵長おきな餅
鎰隆三雲遊
鎰良光加茂松風
花月蓬餅
かざりやあぶりもち
柏庵すはま さんぽみち
柏家宏之菓舗千種の季彩
柏屋光貞行者餅
桂飴本家養老亭桂飴
金谷正廣真盛豆
かま八老舗西陣どらやき
龜末廣京のよすが
亀廣永したたり
亀廣光廣光最中
亀廣宗烏羽玉
亀廣保貝づくし
亀廣脇四季の茶心
亀屋粟義加茂みたらし
亀屋伊織雀、附子
亀屋光洋やぶ里
亀屋重久衣笠
亀屋清永清浄歓喜団
亀屋則克浜土産
亀屋友永岩ごろも
亀屋廣和青梅
亀屋良永御池煎餅
亀屋良長烏羽玉
亀屋陸奥松風
賀茂公家芋本舗公家芋
烏丸鳴海餅萩もち
総本家 河道蕎麦ほうる
御ちまき司 川端道喜道喜粽
甘春堂茶寿器
柑泉堂栗きんつば
祇園辻利抹茶菓子
祇園小石(京飴)
北大路吉廼家ちまき
金谷正廣菓舗真盛豆
きぬかけ菓舗水鏡
旧二条鳴海餅大日さん
京阿月三笠
京あめ処 豊松堂三色飴
京絵巻総本舗京絵巻
京おもと栗まどか
京華堂利保濤々
京煎堂 愛菜菓
京橘京乃茶々
(京とうふ 藤野)とうふ落雁
京都くりや栗おはぎ
京都鶴屋鶴寿庵屯所餅
京の飴いしざき御所の石
金閣寺日栄軒白玉ぜんざい
(キンシ正宗)酒かすていら
金時松茸
源水ときわ木
光悦堂御土居餅
格子家どろぼう
幸福堂金つば
幸楽屋金魚鉢
鼓月
嘯月上用まんじゅう
御所飴本舗御所飴
御殿八ッ橋本舗おぼこ
寿菓舗月見草
五建外郎屋五條坂
小松屋八方焼
笹屋伊織どら焼き
笹屋湖月出世餅
笹屋昌園庭の石
笹屋守栄うぶ餅
総本家澤正そば短冊
三昇堂小倉練り羊羹
三條駿河屋おだんご家族
三條若狭屋祇園ちご餅
三光堂松壽千年翠
塩治軒きび餅
塩芳軒ふきよせ
紫竹庵雲水
下河原阿月三笠
実盛堂製菓味噌松葉
嘯月常盤饅頭
聚洸わらび餅
聖護院八ツ橋総本店八ツ橋
聖光堂八ツ橋本舗八ツ橋
松樂奥嵯峨(よもぎ餅)
白井長豊堂餡入り落雁
神馬堂葵餅
新大宮吉廼家かぼちゃ饅頭
末廣菓舗わらびもち
末廣軒お火焚饅頭
末富うすべに
総本家駿河屋伏見羊羹
するがや 祇園下里祇園豆平糖
菓匠 清閑院浮島菓子
関製菓本舗招福干支煎餅
銭幸餅本店銭幸餅
仙太郎栗きり
千本玉壽軒かがみ石
仙寿堂とち餅
双鳩堂鳩餅
大極殿本舗春庭良
大黒屋鎌餅本舗おかまもち
大徳寺ふたばしきぶ日記
大徳屋本舗須賀多餅
大福餅老舗あんころ餅
大文字飴本舗大文字飴
高野屋貞広花の宵
たから餅老舗あん豆腐
多賀良屋窓の月
竹濱義春老舗真盛豆
田中実盛堂(京せんべい)
たまだけん栗蒸し羊羹
本家玉壽軒紫野
田丸弥白川路
俵屋吉冨雲龍
長栄軒ほおずき
長久堂きぬた
長五郎餅本舗長五郎餅
本家月餅家直正月餅
鶴寿庵京都鶴屋屯所餅
鶴屋寿嵐山 さ久ら餅
鶴屋鶴寿庵鶏卵素麺
鶴屋吉則福ハ内
鶴屋吉信柚餅
鶴屋長生京風情
出町ふたば豆餅
十六五五色豆
富英堂えがお
友恵堂本店そば上用
とらや夜の梅
中村軒鉾ちまき
鳴海餅本舗菱餅
本家西尾八ツ橋あんなま
西谷堂でっちようかん
二条駿河屋引千切
二條若狭屋しだれ桜
日栄軒紫野
野田製菓所おこた
梅花堂栗納豆
梅泉堂五色椿
萩屋菓子舗さわらぎ
八勘本店雪うさぎ
畑野軒老舗麩饅頭
濱長本店ところてん
林重製菓本舗意匠松風
菱屋(あられ・おかき)
日乃出亥の子餅
平野玉壽軒福俵
平野屋志んこ
(麩太)
(麩藤)
(半兵衛麩)
(麩饅頭)
麩嘉麩嘉饅頭
船はしや総本店錦豆
本家船はしや万歳豆
船屋秋月五都瓦
文の助茶屋わらび餅
平安殿粟田焼
宝玉堂いなり煎餅
豊松堂千歳飴
宝泉堂丹波黒
布袋餅菓舗木ノ芽上用
先斗町駿河屋ひと口わらび
松川屋田舎饅頭
松本製菓寒氷
松彌金魚
松屋藤兵衛紫野味噌松風
松屋常盤味噌松風
松屋長アカステーラ
豆政夷川五色豆
丸太町かわみち屋そばぼうろ
満月阿闍梨餅
三浦屋紅白饅頭
御倉屋旅奴
水田玉雲堂唐板
みなとや 幽霊子育飴
名月堂セッペイもち
望月本舗望月
紫野源水涼一滴
紫野和久傳西湖(れんこん菓子)
山もとごま餅
遊月ゆうづき
総本家 よし廣京の三大祭り
養老軒嘉祥菓子
吉水園京おんな
米満軒くず桜
六方屋(六方焼)
緑庵みどり
緑寿庵清水(金平糖)
柳苑楽石
若菜屋栗阿彌
【参考サイト---創設の目的が違う。】
YOU1: 「京のお菓子味見録」(リンク集)
 http://www.geocities.jp/kyo_gasi/
  index.html
京菓子協同組合 組合員名簿
 http://www.kyogashi.or.jp/
  list/index.html
京都府菓子工業組合 会員一覧
 http://www.kyokakouso.jp/
  kasikougyou.html
京都名産品協同組合 お菓子
 http://www.japan-kyoto.net/
  meisanhin/
萩谷尚子: 「京の和菓子」
   http://kyoto-wagasi.com/
京都新聞: 「京菓子小町」
 http://kyogashi.kyoto-np.co.jp/
京都検定: 「京菓子めぐり」
 http://www.kyotabi.com/
  kyogasi/kyogasi.html
鶴巻郁夫: 「和菓子の頁」(店商品リスト)
 http://homepage2.nifty.com/
  tzuru/newhp/wagasi/wagasi.html
京で食を楽しみたいなら努力が必要である。
 散歩の話にしては理屈っぽいとお叱りがあったので嗜好をかえて食べる方にふってみた。歩けばお腹も減るし、ちょっと一服したくもなる。散歩ついでに、お店に立ち寄るのは自然なこと。どうせ休むなら、気分のよいお店に入りたいから、たまにしか京都に行かないから、ガイドブックやウエブ検索に頼るしかない。

 そうすると、例えば、南禅寺の湯豆腐とか、高瀬川沿いの鶏の水炊のお店を選ぶことになる。豆腐や鶏の料理は全国至るところにあり珍しくはないが、慣れているから疲れていても胃には優しいから選定としては悪くないと思う。もっとも、懐にも優しいと言えるかはよくわからない。原材料費が、ぼたん、牛、すっぽん、ほどにはなるまいというだけで、加工/調理費用や、サービス料はピンキリだろうから。

 ただ、小生の場合、観光客が大挙しておしかけそうな場所は、煩わしいので避ける。創業の古さや、歴史的に有名とされるお店には行かないようにしている。と言って、散財間違いなさそうなお店に入ろうとは思わないし、一見さんおことわりのお店になんとかもぐりこむ気もない。
 そうなると、結構、よさそうなお店を探すのは手間である。しかも、自分好みのお店でも人気店になることもある。お蔭で、五条駅から少し歩いたところのお麩屋さんにはだいぶ前から行かなくなった。
 愉しみたいなら、努力するしかないのだが、食事の好みは人それぞれだから体験話は必ずしも役に立つとは限らない。実に厄介だ。

菓子選びはファッション選定のようなもの。
 と言うことで、余りに難しい食事ではなく、お菓子の購入話でいこうか。こちらは、購入時の雰囲気もあるが、サービスではなく、商品で決まるから、少し頑張って調べておけば先ず外れることはない。
 小生のお勧めは、購入当日に宿泊している部屋でゆっくりした気分で頂く方式。日持ちするものなら、残ったら土産として持ち帰ればよいのである。従って、海外旅行同様、3種の用具(楊枝、懐紙、お茶)は持参した方がよいと思う。

 当然ながら、夕食は京のお番采で、できるだけ軽くすませる必要がある。デザート付の京料理など食べてしまえば、折角のお菓子が台無し。本格的な京料理を堪能したいなら、お昼に。

 さあそれで、何を買うかだ。
 これが、実は簡単ではない。創作菓子からむかし菓子まで種類は多岐に渡るし、老舗からきたてほやほやの店まであるから、そうするかそう簡単に決断できまい。実際、右表に示すように百花繚乱状態なのだ。  それに、わざわざお菓子を買うためだけに菓子舗に行く気もしまい。

 それは若者のファッション選択のようなものかも知れぬ。ブランドは山ほどあるので、リストにしたところでなんの役にもたたないのである。
 スイーツ族が現れるのも無理はない。京菓子もそんな状況になっておかしくないかも。
この用語をご存知ないオジサン族はWikipediaで。尚、宝島社発行の月刊誌「Sweet」は2010年2月号は100万部発行と言われているらしい。

東京で入手できるも京菓子も多いし。
 それに、東京に住んでいれば、京都の老舗菓子と言っても珍しい商品とは言いがたい。デパートの名店街に出店している有名店があるし、特別取り寄せコーナーには直送生菓子が並ぶからだ。しかも、東京駅前には京都の銘菓が並ぶアンテナショップもあるし。おまけに、出張した人が、新幹線の駅で土産ものを買ってくることも少なくない。その手の菓子は見慣れているから、いまさら京都で食べる気にはなるまい。
 そもそも、「とらや」にしてから、感覚的には赤坂のお店。わざわざ京都でその手の和菓子でもなかろうとなる。

 まあ、地元の和菓子屋さん満足しているということでもあるが。(鮮度が命の商品だし。)
 そうそう、菓子作りも結構楽しいものである。
   → 「和菓子の話でもしてみよう」 (2005年5月19日)
   → 「和菓子を作ってみよう」 (2008年5月28日)
   → 「如月の和菓子作り」 (2009年2月18日)
   → 「南蛮菓子を試そう」 (2009年12月2日)

 こうなると、一体、京都でどんなお菓子を食べるのか、ということになる。 (もっとも、菓子にそれほど考える必要があるのかと言われると答に窮するが。)

街歩きでお菓子屋さんに入る散歩はいかが。
 さて、なににするか、少し考えてみようか。
 先ずは分類だが、以下のように分けてみたらどうだろう。
   (A-1) 京土産菓子
   (A-2) 日常菓子
   (B-1) 寺社門前・お休み処の名物や縁起物
   (B-2) 儀式や大衆行事/祭用の言われ物
   (C-1) 季節の茶事やハレ用途

 土産用(A-1)とは、例えば八ッ橋や五色豆の改良版のようなもの。もちろん、創作もある。要は、京らしさを打ち出しながら、誰の口にでもあいそうにしたもの。この手のお菓子は、どの観光地にもある。製造元が他地方のものさえみかけるから、相当大きな産業かも。
 美味しく仕上がっているとか、いかにもご当地モノの雰囲気を醸し出すことができると、そのうち話題になり定番化する訳だ。旅行に行ったら周囲の人々にお土産を配る人達のニーズに合わせた気配りを感じさせる商品と言ったらよいだろうか。
 そんな用途には向くが、自分が食べるためだけで、わざわざ離れたお店にまで足を伸ばす気にもなるまい。それは、ご近所さん相手のお菓子屋さんのお菓子(A-2)にもいえる。
 こちらは、時々、マスコミで紹介されてブームになったりするが、話のネタ作りには面白いが、多大な労力をかけてまで購入する人のためのお店ではないし、大量生産できる体制でもないから、ご近所さんに迷惑なだけではないかという気もするが。

 しかし、これこそ、観光地の実態であるから、お菓子に関心があるなら手をつけてみたい気はする。それなら、散策を兼ねて“ご当地”御菓子舗にお邪魔するというのも面白いかも。ただ、上記分類の(B)や(C)ではないことにご注意あれ。

 この場合、お勧めは街歩きを兼ね、そのついでに立ち寄るというパターン。お店がその地に続いている理由がなんとなく感じられ、なかなかの情緒。もしかすると、これぞ京都という気になるかも。
 何を言っているのかわかりにくいか。
 東京で言えば、吉祥寺で羊羹を買うとか、根津で煎餅屋さんにふらりと入るようなもの。お菓子のために遊びに行くのではなく、あくまでも街歩き。そういう点では、いままでご提案しているコースでもあり得る。
 典型は、商店街歩き(第2回)。古川町商店街で「おまんやさん」。別に饅頭屋という意味ではなく、庶民御用達ということで、「上菓子」ではないというだけの話。  注意を要するのは、門前菓子ではないと言う点。参詣者相手の特徴ある菓子とは違いどこにでもありそうな日常的なものであり、廉価でなければなんの意味もない。

 それを、土産(A-1)と一緒にするのは滅茶苦茶な話だが、それが面白さ。街のなかにポツンと土産屋的菓子店があるから、そこでお菓子と買おうというだけのこと。あくまでも焦点は街歩き。

家具街の雰囲気はいかにも“これぞ京都”。
 その一例をあげれば、夷川通。烏丸から寺町通までは、家具街になっている。端には「亀権」(三味線修理)と夷川児童公園(陽成院跡)。丸太町の駅からすぐだから便利。
 と言えば、京箪笥拝見かと思ってしまうが、それだけではない。驚かされるのは御簾、襖といった商品まで売られている点。古い書院障子まで手に入るのである。こんな商品は滅多に見られるものではない。
 家具と直接関係ない骨董店もあるが、東京のその手のお店とは雰囲気が全く異なる。京都におけるアンティーク考え方が全く違うことを思い知らされる一瞬である。

 このような街がいつまで続くかはなんともいえない。リビングルームの時代にはそぐわないからだ。和家具は産地ブランド化が進んでおり、洋家具は巨大小売業の世界になりつつあるからだ。ただ、祇園祭の鉾も、住民がほとんどいない地区でも廃れないで続いているのだから、この文化を守ろうという力が働けば智恵でなんとかなるのかも知れぬが。
 ただ、知名度という点では今一歩なのが気にかかるところではある。

 小生は、義理の父母の趣味で、たまたま知った。50円の製品としか思えない茶室の戸の留め金を探し続けて、東京のとある住宅街の骨董屋で\4,000で購入したと聞き仰天。皿ならわかるが。
 三味線修理を受けつけるお店も滅多にないのだという。日本は、実に成熟した社会なのである。
 そうそう、肝心な菓子舗の話を忘れるところだった。ここには有名な豆菓子店がある。何故、こんな場所に一軒だけあるのか不思議。調べるよりは、勝手に想像する方が面白いのでは。
 そのついでと言うと失礼だが、そばに「京都ハリストス正教会」[日本正教会の当該頁>>>]がある。建築好きでなくても、その独特な外観に気付けば、近くにいって眺めたくなる筈。

 ついでながら、京都には「饅頭屋町」という地名があるが、松村篤之助氏(京町家友の会会長)のお話によれば、今は名称だけだそうである。[“私の住まいの町名は「骨屋町」、「饅頭屋町」”>>>]

市のついでにお菓子を買うのも一興。
 さて、その次。
 門前菓子(B-1)や祭菓子(B-2)は特徴があり、この手のお菓子は全国色々。ただ、京都は様々な寺社が乱立しているから、お菓子の種類も多そうである。
 だが、興味津々ということで、お菓子だけ購入するというのものもなんだかね。参拝とか、お祭り見物が主体で、それを盛り上げるものだから、買いにいくというのは気がひける。
 その気分を和らげたいのなら、街歩きにしてしまうのがよい。例えば、西本願寺には仏具屋街がある。東京にもあり、珍しいものではないが京風はどんなものか歩いて見るのも乙なもの。
 ここにはお寺御用達の「松風調進所」がある。驚くことに、このお菓子は信長考案。一向宗徒と戦うための兵糧だったということ。実に味わい深き逸品。

 そうそう、「市」に行く手もある。毎月あるから、たまたまスケジュールがあえば楽しめそうだ。
  ・毎月15日 「百万遍の手づくり市」
  ・毎月21日 「弘法さんの市」
  ・毎月25日 「天神さんの市」
 市での屋台でもよいし、そばの菓子舗で買う手もあろう。観光客も来るので賑わう。市は混雑してこそのもの。

古き時代の菓子を買い求めるのは面白いかも。
 京都には由緒書付のお菓子は山のようにありそうだし、老舗が応仁の乱の前か後かなどという話もある位だから、歴史を感じさせるお菓子の選定といっても、そう簡単な話ではない。
 しかし、折角京都に来たのだから、歴史を感じさせるお菓子を食べようとなる。その場合は、菓子の歴史をひもといて、それに該当しそうなお菓子を探すのがよいと思う。ただ、これは上記の分類と次元が違う。ここを間違うと折角の愉しみが半減する。
 その歴史だが、以下のように見るとよいようだ。
〜お菓子から見た時代区分〜
-区分--政治の中心--ポイント-
上古時代飛鳥朝瓜,生果物
焼栗,搗餅,焼米
食膳
唐菓子時代平城京/平安京干/煮果物
粉加工,混ぜ餅/粽,餡
甘葛,醴(甘酒),飴
点心時代鎌倉幕府/南北朝麺/羹/蒸物
醤油/味噌
間食
南蛮菓子時代室町幕府/安土城/聚楽第砂糖
非食膳
京菓子・江戸菓子時代江戸幕府新しい粉,良質の水
上菓子/餅菓子/饅頭
洋菓子輸入時代明治政府
【参考サイト】
お菓子の歴史−時代詳細 全国菓子工業組合連合会
 http://www.zenkaren.net/history/jidai.html
お菓子の歴史年表 製菓衛生師全書(1999年版)
 http://www.zenkaren.net/history/index.html

 例えば、南蛮菓子時代なら、砂糖加工品(金平糖、有平糖、キンカ糖)、卵小麦加工品(カステラ、ボーロ)となる。有平糖はすでに茶菓子(C-1)としてしか使われなくなっているし、金平糖は東京では下町情緒のお菓子(C-1)だが、京都の場合は上質な土産品(A-2)の扱いではないかな。カステラはすでに日常用途の工業製品も少なくないが、その一方で御遣いものの高級品もある。

 餅菓子にしても、京都ではどうもそれを扱う菓子舗は「おまんやさん」と同列に扱われている感じがするが、もともと「搗餅と焼米」の時代を考えれば、本来は上菓子に相当するものの筈。煎餅にしても。
 餅は本来は季節感を現す最高の食材だが、京都の考え方はそうではなさそうである。京都を、日本の精神的古里と呼びたがる人が多いが、実は海外文化色濃厚なのである。
( 葩餅, 椿餅, 鶯餅, 厄払餅, 菱餅, 草餅, 牡丹餅, 桜餅, 柏餅, 索餅, 笹餅, 稚児餅, 名月餅, 栗(大福)餅, 御萩餅, 亥子餅, 鶉餅, 菊花餅, 柚餅, 銀杏餅.・・・これらが庶民の発想で生まれた菓子とは思えまい。
   → 「日本の餅文化起源仮説」
 (2007年10月31日)

 それがわかると、一度は味わっておこうかというお菓子も見つかるかも。例えば、唐板なる煎餅に興味を覚える人もいるだろう。  菱葩餅もよいか。宮中の新年の行事食の一品で非食膳化していないから起源は古い。歯が生えたお祝いにも使うらしいが、東京では茶道系の菓子舗で時々みかけるから、そこまでする気にはなれないか。現代的な求肥だろうから、昔の菓子とも言い難いし。
[11才で相国寺の塔頭で得度し,13才から等持寺の小僧となった水上勉の随筆「失われゆくものの記」(1969年)には,お寺時代に出会った菓子の話が描かれている. 登場するお菓子は,あぶり餅,唐板,味噌松風,ちまき,益寿糖,巾着おだん,洲濱. 〆は,“人は菓子なくして生くるるものに非ず。”との引用文.
---こうしたお供え菓子については,最後にまとめておいたのでご興味がある方は参考にして欲しい.]


結局のところ、干菓子に煎茶が無難なところか。
 ちょっと横道にそれたが、やはり京都の本命は茶席用の菓子(C-1)だろう。圧倒的な力量を持つお店と、それを支えるパトロンあっての話。

 しかし、そんなことがわかっていても、いざ選定となると考えあぐねる。自分の家の近くなら、決まっているが、旅先で、しかも京都らしさを味わえるお店をとなると大いに迷う。
 なにも京都でなくても、という感覚も一方で湧いてくるし。特に、生でなければ、その感は強い。
 例えば、麩焼きなら、拙宅は仙台の賣茶翁が好み。もちろん、買いにいくことなどない。もらいもの。単純な菓子だと、微妙な違いがかえって気になるものだ。こればかりは好き好きなのである。それに、麩焼きにたいした価値を認めない人もいそうだし。

 よくある手は。買いにくいお店に入ろうというもの。
 特に、京都には以下のような独特なお店がある。
   ・人通りが無く、閑散している通りに存在している。
   ・中が見えず、案内もなく、入りにくい店構えになっている。
   ・予約のみの場合がある。
   ・商品の種類が少ない上に、単価や購入単位を明示していない。
   ・質問しない限り、なんの説明もしてくれない。
 東京だとこれはかなり難しい。
 拙宅のご近所に美味しそうな小さなケーキ屋さんが開店したのだが、単価ははっきりしているが、素晴らしいものを売っているという態度。すぐに消滅の憂き目。おそらく、場所が悪かったと考えていることだろう。
 京都は逆。考えてみれば、リスクを嫌う経営に徹するなら、これは至極妥当な方針と言えよう。
 そんなお店に入ってみるのは、確かに面白いかも知れぬが、霍乱分子の闖入みたいなもの。余りお勧めできることではない。そんなことは、本当の「上菓子」好きの人達にまかせておく方がよいのではないか。ファッション業界と違い、浮かんでは消えという世界はこまるからだ。ひっそりと伝統を守ろうとしているなら、それを尊重した方がよかろう。
 菓子舗は観光地では重要なビジネスであり、その心意気が感じられるお店もある訳だし。
   → 「京菓子資料館(ギルドハウス京菓子)」 (C) 俵屋吉富 

 どのお店ということもあるが、当てずっぽうでお店を選んで、「上菓子」をお試しになるのも面白いかも。夏は別だが、濃茶用の季節ものの練り切りを選ふだけのこと。どこまで本当か知らぬが、五感を生かす職人の知恵の結晶だと聞かされた覚えがある。その内容どころか、どこで聞いたかも定かではないが、以下のようなことだろうか。
   ・視覚: 素朴な美しさ(抽象化した形とうっすらとした彩りの綺麗さ)
   ・味覚: 野趣感(淡くて上品な甘さとしっとりした舌触り)
   ・聴覚: 優雅さ(雅な銘)
   ・触覚: 水々しさ(柔軟なきれ方)
   ・嗅覚: 繊細さ(無雑臭で薄い素材の香)
 その辺りをじっくり賞味してみるのも一興。

 ただ、ホテルや旅館の部屋に抹茶茶碗は無いから、どうしても煎茶で頂くことになる。それなら、薄茶に合うような、お洒落な銘の干菓子の方がよいかも。しっかりしたお店なら、落雁や有平糖の美しいものがあるはず。
 これなら、残ってもお持ち帰りできるし、自宅でしばらく楽しめる。

 尚、茶席菓子が(C-1)となっているのは、記載していないが(C-2)があるから。御つかいものである。拙宅では竹皮包みの一棹の大振りの羊羹を頂戴したりすれば大喜びするが、核家族にはどう見ても大きすぎる。と言って、小さいものはさっぱり情緒がない。なかなか難しいものである。
 さて干菓子だが、上質な茶葉を持参すること。これだけで愉しみ倍増間違いなし。ホテルでは余りに味気ないと考えずず、それが現代文化だと割り切り楽しもう。
[茶葉は新鮮で高価なものがお勧め。何杯も飲め、コストパフォーマンスが良い。急須の無いホテルに泊る場合は葉を入れるパックも持っていくとよい。]

【ご参考までに---亀井千歩子: 「日本の菓子」東京書籍 (1996年)より】
・あぶり餅: 994年に紫野の祠にそなえた“勝の餅”が発祥で、“やすらい祭”にお赤飯と一緒に配る風習に。
・稚児餅: 稚児の祇園社参詣の日に神前に捧げ、稚児が食べた。
・清浄歓喜団: 平城京から続く、聖天さまへのお供え。
・みたらし団子: 下鴨神社の夏越の祓に、御手洗の池の水で作水玉を模したお供え。
・洲浜: ブト、マガリとともに、545年に始めた葵祭のお供え。
・唐板: 863年に始まった怨霊鎮めの祭で授与されたものが、上御霊神社の神饌となっている。

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