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2003.1.29 |
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小売業不振の元凶(2:都市化の影響)…
しかも、地域によっては、小売業の不振がさらなる人口減少を生み出しており、小売業不振問題は、思った以上に深刻だ。 右表は、2001年と(直近)、その後2010年迄の(将来)推定人口変化率(年率%)だ。都道府県のバラツキを見るための予測である。(2010年まで総人口がほぼ横ばいと仮定し、過去の流れから外挿した推定値) 結果では、直近/将来ともに、減少しない県は、宮城、関東地区、愛知、滋賀/兵庫、福岡、沖縄県だけだ。 この試算が妥当なら、都市圏以外では、すでに人口減少が始まっていることになる。 地方の商店街が極端な売上減少に見まわれているのは、よく知られているが、その底流には、このような人口変動による市場縮小があると思われる。 さらに、この流れを加速する動きが発生している。都市回帰現象である。 すでに、東京では、高齢者層の郊外脱出が顕著である。この流れを、東京固有とか、高齢者に限られたものと見ると、見誤る。都市圏への人口移動は、今や、全国規模で始まっている。 要するに、「喧騒の都会」と「豊かな郊外」幻想が破綻したのである。「喧騒の都会」は、実は、住めば便利だし、物価は高いといっても、メリットを考えると、トータルでは低コスト、と理解され始めたのだ。 例えば、都会のマンションに住み、階下にエレベーターで降りれば、そこにはコンビニエンス・ストアがあり、一通りのモノが揃う。調理が面倒なら、お手軽に弁当購入や外食ができる。 ところが、都会から一歩外に出ると、お菓子ひとつ購入するのにも、車で数十分かかる。人が提供するサービスに至っては、購入者の数が少な過ぎるとサービス業自体が成立しない。たとえ財政的支援があっても、労働力不足で運営が極めて難しい。人口密集地から離れると、まともなサービスがなくなりかねない。必要な商品やサービスの入手が困難な地域に住みたい人がいる訳がない。 この現象で、はっきりしたのが、「購買」簡便性の威力だ。人口集中の原動力は小売業の隆盛なのである。 人口密集地帯には、市場を求めて小売業が集まって競争を繰り広げる。購買簡便性が高まり、地域の魅力度が高まる。魅力的な地域になると、外部からの人口流入が増え、密集度はさらに高まる。魅力度が高まり続ける好循環が生まれる。 好循環が始まれば、起業が活発化するし、SOHOも増える。そのため、様々な小売業やサービス業が誕生し、地域経済は一気に活性化する。 ところが、都市圏を離れれば、流れは逆になる。人口減で、市場縮小が始まる。小売業の撤退が増え、地域の魅力度が下がる。このため、人口流出がさらに進む。完璧な悪循環である。 一旦、悪循環が始まったら、止めるのは至難の技といえよう。 従って、小売業の再興を考える場合、魅力度向上の好循環が始まっている地域と、逆の悪循環地域を峻別する必要がある。 前者での小売業は、様々な戦略展開が可能であり、イノベーティブな試みも奏効する可能性が高い。 これに対して、後者では、支援したところで、衰退を止めるのは極めて難しい。商圏広域化や、過剰商店数削減を狙ったところで、市場縮小の波が加速するだけで、焼け石に水だ。 従って、小売業不振打開の決め手は、都会における飛躍的発展策といえる。都会の魅力を高める小売業態の開発支援を急ぐべきである。 同時に、「地場」型小売業への支援は、できる限り中止すべきである。効果が疑わしいからだ。支援すべきは、小売業そのものではなく、「その地域に住みたい」と感じさせるインフラ構築プロジェクトだ。 過去記載の ・「小売業不振の元凶(1:人口問題)」へ (20030129) 「政治経済学」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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