表紙 目次 | ■ 分類の考え方 2015.2.13 ■ 広義のエソの範囲 前にも、書いたのだが、エソははなはだ難しい漢字で、「鱛」。国字だという。 → 「えそ の話」[2008年5月9日] 「魚と貝の事典」によれば鱛の語源は笑壺で、ワライツボとはエソ=笑莟(蕾の意味)とされている。全く要領を得ない解説である。誰が見ても、笑をとるような外見の魚ではないし、小骨だらけでとても笑って食べるどころではない。こじ付けたいなら、舌顎がしゃくれているから、笑っている形の顔とするしかなかろう。日本の辞書から引用したのだと思うが、どうせいい加減な記述である。著名な辞書だからといって、信用しない方がよいと思う。 ただ、もう一つ記載があり、醜悪な感じのする魚とされているが、これはわかる気がする。古代魚の感じがするということでは。それが「曽」。祖魚を粗末に扱えないから、一応は敬意を払うが、自分達の時代感覚からすれば醜悪な姿だと見なされたのでは。 恵曾/恵曽→[魚+ それに、蒲鉾にすれば食せるから恵みある魚でもあるし。 しかしながら、外見からすれば、蝦夷みたいと言われていたかも。つまり、差別的表現でもある。それに合うように、別途作られた漢字も存在している。 [魚+ もともとは、狗母魚 or 九母魚だったようである。こちらはさっぱりわからぬ名称だ。 鱛とは何の関係もなさそう。 "川魳/Pike"のことを狗魚と呼ぶから、牙の形状から名付けたのだろうか。と言うか、紀州犬のような体質の魚ということでは。・・・口を閉じて大人しく休息しているかに見えても、一寸した切欠で突然にして豹変。大口を開け、ガブリ喰いついて絶対に離そうとはしない。 狗母魚は砂地に潜ったり、底の辺りでじっと静かにしているが、側を通りかかったりすると、突如喰いつくことを知っていた訳だ。と言うことは、飼って観察していた人がいたのかも。 棲息域: 熱帯〜亜熱帯海域 水深200mまでの浅海 食性: 貝類,多毛類,頭足類,甲殻類,他の魚類 活動時間: 夜行遊泳 昼間海底休息(伏せるか砂地に潜る) よく、エソは英語ではLizardfishであり、中国語でも蜥蜴魚という呼び名を使っている。見た目からして納得という手の話を目にすることが多いが、よくよく眺めてみるとそう言えるのか疑問が湧く。 と言うのは、"真"とされるエソは蜥蜴ではなく、蛇のような鯔[ボラ]だからだ。しかも、その代替品として食される、ワニエソ、トカゲエソも同じだ。つまり、食するのに適しているタイプは爬虫類の名前を使用しないということでは。 但し、良く知られる"水天狗"こと、"Bombay duck"は並外れた外観なので、一緒にはできない訳だが。 【正真正銘鱛】 真鱛/Brushtooth lizardfish/蛇鯔 鰐鱛/Wanieso lizardfish/鰐蛇鯔 蜥蜴鱛/Slender lizardfish/長條蛇鯔 赤鱛/Red lizardfish/熊野狗母魚 一筋鱛/Variegated lizardfish/縦帯狗母魚 蝶々(?)鱛/Triplecross lizardfish/叉斑狗母魚 砂鱛/Sand lizardfish/背斑狗母魚 沖鱛/Snakefish/大頭狗母魚 水天狗/Bombay duck/龍頭魚 上記が分類学上では「エソ科/Lizardfishes/合歯科」である。狭義の「鱛」に該当する訳だ。 広義で解釈するなら、「エソ科」が属する「ヒメ目」の他の科にも類似の魚がいるだろうから、それを「鱛」と見なすこともアリとなろう。 「ヒメ目ヒメ科」で眺めてみると、純粋なヒメだけは特別視したかったようだ。 【近鱛】 比女 or 姫/flagfin/仙女魚 長青目鱛/Cucumberfishes/副仙女魚 帆立鱛/Sandliving lizardfish/擬毛背魚 「エソ科」「ヒメ科」以外の近縁種には、目が透き通るような水色の魚もいる。それだけでなく、特徴ある魚が多く、蜥蜴魚として括るのには抵抗感が生まれるが、和名や中国語名では余り気にしていないように思える。そのなかで特別扱いされている魚は、"目光"、"三脚魚"、"水魚"、"望遠魚"位か。英語名の場合は、lizardfishにしないものが多い。納得感あり。 【擬似鱛】 青目鱛 or 目光/Greeneye/青眼魚 鬼青目鱛/Pale deepsea lizardfish/深海似蜥魚 筆鱛/Waryfish/大鱗蜥魚 提灯裸/Deep-sea tripod fish/燈眼蜥魚 糸引鰯 or 三脚魚/Attenuated spider fish/深海狗母魚 底鱛/Marion's spiderfish/深海青眼魚 出目鱛/Pearley/珠眼蜥魚 槍鱛/Sabertooth fish/齒口魚 水魚 & 牙裸/Ancetfishes/帆蜥魚 裸鱛/Barracudina/裸蜥魚 深海鱛/Deepwater lizardfish/深海蜥魚 望遠魚/Telescopefish/巨尾魚 上記に、鰯と裸がちらほら入っているのは、現代の分類学上では、全く異なるとされる魚が類似と見なされたからと思われる。ワニトカゲギスとハダカイワシはエソ類縁とされていたのだろう。 後者は鱗が剥げ落ちるから裸という表記はわかり易いし、鰯のように食することもできるから、その名前自体はなんの違和感もないが、"真鱛"と同じようなものと見るのは一寸無理があるように思える。 おそらく、深海魚であれば遊泳するタイプも、浅海の底魚で類似の体系ならそれはエソという発想で見ていたのだろう。 【非鱛-鰐蜥蜴鱚/Deep-sea ray-finned fish/巨口魚】 夢裸/Bristlemouth/雙光魚 横鱛/Bristlemouths/鑽光魚 胸鱛/Deep-sea hatchetfishes/褶胸魚 銀裸/Lightfish/光器魚 鰐蜥蜴鱚/Barbeled dragonfish/巨口魚 【非鱛-裸鰯 or 火傷/Lanternfish/燈籠魚】 → 「はだかいわし の話」[2007年8月3日] 外鰯/Blackchin/新燈籠魚 (C) 2015 RandDManagement.com |