表紙 目次 | ■ 分類の考え方 2016.2.28 ■ アンモナイトよりネクトカリス 25の代表的化石解説本の読後感の続き。[→] 先ずは、爬虫類化石の代表選択について書いてみたが、[→] どうでもよさそうな話に映ると思うが、「進化史」全体を俯瞰するためには、極めて重要。素人話なので、間違いもあろうし、極めてわかりにくい文章なので申し訳ないが、これだけは是非書かねばということで。 前回の話とは、要するに、爬虫類分野から7つも選ぶのは多すぎということ。[海]魚竜 [空]翼竜 [陸]恐竜に、始祖鳥と蛇祖[4肢蛇]の5つで十分では。 モンスター草食+肉食 ⇒ 装飾恐竜 祖亀 ⇒ 不要 こういった些細な点に、進化の歴史をどうとらえるかの「思想」が見てとれる。例えていえば、日本の歴史を25のパートに分ける際、室町時代の記述に3割弱もかけるかネというようなもの。ココは、異質な時代で重視すべきと考えるなら、その理由は一体なんなの、ということ。 マ、そんなことを考えさせてくれる点で、この本は貴重である。 と言うのは、本屋に沢山並ぶ化石本は、部外者的人間からみると、ほぼ3種類。多そうな順だとこんな風。 ○ 恐竜本(恐竜以外だとトンデモ型紹介) ○ 地球誕生からの、時代区分解説本 ○ 化石発掘本 その中身は様々とはいえ、どれも、科学本カテゴリーにおける一種の図鑑。 但し、他の分野の図鑑とは違って、内容はピンキリになる。対象範囲が広すぎる上、信頼性レベルも研究の深さがバラバラな状況なのに、網羅的な雰囲気を出さねばならぬのだから、それは致し方ない。 従って、これらの本とは全く異なる風合いの書物を選ぶ手もある。学者達の苦闘を描くドキュメンタリー型の本をもあるからだ。なかには、総説的に仕上げようとしているものもあるから、読むとどうなっているのか全体像がわかってくる場合もあろう。 おわかりになれるだろうか、この感覚。 「25の代表的化石から進化史を読む」というスタンスで考えているということ。 つまり、その選定に違和感を覚えたとすれば、それは自分でとらえている進化史の「概念」が見えてくるということでもある。これは、なかなかの醍醐味といえよう。 一見、25の断片的情報に触れているだけに思うが、実は、網羅的に見える図鑑の方がその程度の本でしかないというパラドックス。 前置きが長くなったが、要するに、脊椎動物が25のうち、19をも占めており、単細胞の藍藻1と植物1を除くと、残りは4つしかない。 <脊椎動物系のパート> 魚類・両生類の代表化石=1(原始)+2+2 爬虫類の代表化石=4+3(恐竜) 哺乳類の代表化石=5+2(ヒト) いくらなんでも、現存生物を考えれば、蝦/蟹や海棲できぬ昆虫、貝/烏賊/蛸、磯巾着や水母といった誰でも知る非脊椎動物のカテゴリーに属する生物について知らん顔はないだろう。 いくら簡略化するといっても、これらの祖先を考える上で最低3つは必要だろう。そうなると残りは1つしかない。 古代の訳のわからぬ生物を1つ選ぶだけ。 実際はこんな具合。 原始多単細胞の代表化石・・・葉状非植物生物 節足動物の代表化石・・・三葉虫 軟体動物の代表化石・・・ピリナ(微小殻) ナンダカネ化石・・・ハルキゲニア この程度を眺めるだけでも、進化の本質を見抜くことができるというのが、この本の思想。 そこで考えさせられることになる。そうすると、面白いもので、自分なりに進化史が見えてきたりするもの。 ・・・ここらの代表化石はこうあるべしと言いたくなる訳だ。 その観点で、軟体動物を取り上げてみたい。 軟体動物の代表的化石を上げろといわれれば、小生のようなド素人でもすぐにアンモナイトとなろう。 ところが、この本では、無機質骨格形成の祖的化石を取り上げている。そこにこそ一大進化の跡ありという主張だ。 一理あり。 と言うか、軟体動物の本質を教えてくれたのである。これは「殻動物」。外套膜はそのためにできたようなもの。 つまり、無機質構造体形成こそが進化のドライビングフォース。不可思議な殻の形が現れたりするのは、先祖が持つ殻設計能力を復活させただけにすぎまい。烏賊や蛸は、運動能力向上のため、それを徹底的に抑えた異端。甲烏賊の甲や鯣烏賊の軟膏甲は名残。 あくまでも、殻設計にこだわる進化の道を歩んだ生物である。だからこそ、足が胴ではなく頭に付く訳だ。考えてみれば当たり前。 そうなると、ピリナ(微小殻)を軟体動物の祖の可能性が高き生物と見て、ここ化石を代表にあげるのはまともな感じがする。 しかし、それは思想的に混乱をまねきかねない。 と言うのは、草食と肉食のモンスター恐竜という、食連鎖の頂点にいそうな生物を選んでいるからだ。それなら、頂点を極めて大繁栄した軟体類のアンモナイトを選ぶのが自然。恐竜以上にポピュラーな化石であるから、しいて外す理由も無いし。 もちろん、小生もアンモナイトは選ばない。草食と肉食のモンスター恐竜を選ばないのと同じ。食物連鎖の頂点だから選ぶ必要があると考えていないからだ。 選ぶべきは、「ネクトカリス」。軟体動物の祖ではなく、その一部の頭足類の祖の方。下記に示すように、「ネクトカリス→エンドセラス→バクトリテス→アンモナイト」という流れで考えるのである。 但し、単純に「祖」がポイントではない。この種が5億3,000万年前に限りなく近い時代に発生している点で注目すべしということ。つまり、一世風靡のアンモナイトの原型は、すでにカンブリア爆発期(5億4,200万年前〜5億3,000万年前)に現れていたということ。 もう一つ付け足せば、烏賊とは、「ネクトカリス」的な先祖還りと見ることもできる点もあげられよう。殻を発展させたのだが、祖先が持つ構造設計能力を使えば、「退化」に向かうことは驚くべきことではないということになろう。 但し、ネクトカリスがDNA上で系譜的に頭足類に繋がっていようがなかろうが、一世風靡したアンモナイトと形質的に似ていれば、代表の要件を満たしている。 長くなってきたので、その辺りの理由は別途。 │┼<無殻蝦烏賊的動物>・・・頭足類祖? │ ▽525〜505Mya ├───ネクトカリス[触腕+吐墨] = │ │┼<頭足原系> │ ▽500〜400Mya ├┬──エンドセラス/Giant Nautiloid[細い尖った直角円錐貝 足10本] │└──カメロケラス[巨大化 10m] │ ├───オルトケラス │ ├───アクチノセラス │ │ ▽390Mya ├┬──バクトリテス[直錐形殻] ││ │├<アンモナイト系> ││ アナルセステス,ゴニアタイト ││ アンモナイト/Ammonite ││ ▲66Mya絶滅 ││ ││<鞘形系> │└┬─ベレムナイト │┼│ ▽▽▽現存▽▽▽ │┼│ │┼└─[十腕形]烏賊・[八腕形]蛸 │ └───鸚鵡貝/Nautilus (C) 2016 RandDManagement.com |