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魚の話  2007年7月6日
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そうぎょ の話…



 草魚の のんびり顔の おおらかさ
    釣られても なにくわぬ顔 悟りの境地か 鈍いだけなのか


 ソウギョ「草魚」は、草を食べる魚ということ。草だけで、巨大に育つのだからたいしたものだ。
 魚偏の漢字が当てられていないから、そこいらにいる魚、といった感覚で見られているのかも知れぬ。

 この魚、中国の「養魚」システムの核となっている。荒っぽい仕組みだが上手くできている。
 今や、中国は養魚池だらけ。淡水魚養殖の漁獲高の多さは特筆もの。統計に疑問という声もあるようだが、人口を考えれば驚く数字ではない。

 もともと、農村では、池は不可欠のものだったから、施策さえ間違わなければ大増産可能である。
 手間はかかるものの、池さえあれば、特段の技術は不要である。なにせ、餌やりとは、草を刈り取り池に投げ込むだけのこと。ソウギョが、草を食べて育ってくれるのだ。

 と言うことで、日本でも放流された。
 ただ、自然繁殖しているのは、利根川・江戸川水系のみ。(1)
 言うまでもなく、蛋白が絶対的に不足していた時代の話である。急流が多い日本で、卵が上手く孵る筈がないが、背に腹はかえられぬということだったのだろう。
 中華人民共和国も、発足まもなくは、人工繁殖で漁獲量増産を試みた筈だが、人民公社による農地拡大路線で池を潰したりしたから、なんの効果も生まれなかったのは、ご存知の通り。
 ケ小平路線で、責任請負による水産業振興によって、爆発的な増産が始まったのである。

 しかし、システム自体は昔の考え方を踏襲しているようだ。
 昔とは、今から2,500〜3,000年前のこと。
 春秋戦国時代には、すでに、養鯉の仕組みが確立していた。そのビジネス書でもある『養魚経』(2)を著したのは、臥薪嘗胆で有名な国、越の、忠君。まさに“漁父”である。
 鯉以外の魚も投入し、混養が始まったのは、唐代だそうである。(3)

 この混養、なかなか上手くできている。
 ソウギョは、草を食べるといっても、繊維分は利用できないので、それは、糞となって排泄され、底に堆積していく。これが貝の栄養になる。
 その貝を、こんどはアオウオが食べ、すくすくと育っていくのだ。
 この食サイクルが働けば、当然ながら、プランクトンの活動も盛んになる。
 その植物性プランクトンを食べるのが、ハクレン。そして、動物性プランクトン好きなのがコクレンという訳だ。
 ほとんど手がかからないで、養魚ビジネスが成り立つのである。
 それこそ、身に紅色を出すために、色揚げ剤を餌に混ぜたりするような、高度な技術は不要である。

 せいぜい問題となるのは、淡水魚なので、寄生虫がいること位。生で食べさえしなければ、問題は無かろう。

 この4種の魚、「四大家魚」と言われている。
  →  「あおうお」 (2007年6月15日)     「はくれん」 (2007年6月22日)     「こくれん」 (2007年6月29日)

 これに加えて、淡水魚の王者、鯉も加えるのが、養魚の基本と言えよう。
 ビジネスの話ではない。文化である。

 「月は輝き、白馬に乗った秀才が池を過ぎる。池の後ろにニラを植え、花が咲いたら嫁がくる。家の前には池があり、養うコイは八尺の長さ、小さいものは酒煮にし、大きいものはお金に換えて学堂(学び舎)をつくる……」(4)
 そして、「ソウギョのあっさり蒸し」、「レンギョの揚げ物」、「コクレンの頭の煮込み」とくる。
 おっと、お酒も忘れてはなるまい。

 --- 参照 ---
(1) http://www.tonejo.go.jp/chisiki/3-3.htm
(2) 中国水産学会中国漁業史研究会編「陶朱公養魚経」
(3) 伍献文, 鐘麟: 「中国における淡水魚人工繁殖の発展と成果」科学通報 1964年 [邦訳版]
  http://www.salmon.affrc.go.jp/kankobutu/tech_repo/fe06/fishandegg111_p21-24.pdf
(4) http://www.peoplechina.com.cn/maindoc/html/wenhua/kejia/200402.htm


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