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海胆の話  2017年8月20日

かしパン の話

🍪 見て愉し 菓子パン並ぶ ディスプレイ
       透菓子パンが一番人気らしい。

五放射相称型は植物の花ビラでお馴染み。理由のほどは定かではないが、生物が持つ基本ルールかも知れない。
  → 「五放射相称型海底棲生物を巡る分類"感"」[2015.4.11]
動物だと、ヒトデが単純な五芒星形ということで一番目立つが、ウニ類にもはっきりわかるものがいる。

卵海胆[→]同様に殻拾いのターゲットになっている類で、"菓子パン型"、あるいは"ビスケット形"とか"楯形"といった外形をしている菓子パン/餅乾海膽のグループ。
要するに、潰れた球形とは言い難く、円盤状ということ。
その表面は長さ1ミリメートルぐらいの短い棘で一面に覆われている。

こんな記述だと、眺めてみたいと思う人はいないだろうが、結構な人気が。殻に、5弁の花びらを刻んだような模様があるからだ。

なかでも凝っているのが、
  透菓子麺麭/沙錢/Sand dollar or Sea cookie

殻は直径10cmを越し、中心部がかなり盛り上がってはいるが、見かけ扁平。
茶褐色で、表面には1mm未満の繊細な棘があり、5個の細長い鍵穴状の"透孔"というか、窓が開いている。
こうなると飾っておきたくなるではないか。

類縁には和風名もあり、その名称は
  富士山[Mt. fudsiyama}菓子麺麭
この場合、確かに形状は円盤ではなく、コニーデ型。尤も、浅海棲ではなく水深数100m辺りの底棲。
何時頃のネーミングがわからぬが、菓子パンなのだから、"甘食"[→]と付けて欲しかったがそんなパンは知らなかったか。(今でもスーパーに並んでいるから、高齢者にはこれ無しにはいられぬというファンがいそう。)
そんなこともあって、昔は、砂浜を歩くと、壊れているものがほとんどだが、必ず1つは落ちていたもの。ところが、最近は滅多に見かけなくなったようだ。集めている業者がいるのかも。
これは上面で、下面の中央部に口がある。
生殖孔の数は、5ではなく、4との記載も。えらく半端だが、本当かネ。均整がとれた富士山の方は5ッのようだし。

これらの近縁でよく見かけるとされるのがこちら。・・・
  四穴菓子麺麭@本州中部〜九州 浅海砂泥底
  蓮葉菓子麺麭@北海道南部〜九州,朝鮮半島 内湾浅海砂泥底

尚、この類で、書籍でよく取り上げられるのは、透菓子パンではない。名前がユニークなのでコラム的に一筆付け加えるのにえらく便利ということだと思われる。
ただ、中国語も英語も、この類を表現する語彙としては一番適切であるから、こちらをこのグループの代表とするのが普通の感覚だと思う。・・・
  蛸の枕/盾海膽/Sea biscuit

それに、なんと言っても、いかにも花紋をつけているという風情だし。
こちらの近縁には、5というより10本指の、放射相称が崩れきった異形種も。将に、ナンダカね〜である。・・・
  歯車菓子麺麭

蛸の枕の仲間の多くは数ミリだったりして、矢鱈に小さい。おそらく世界最小の海胆というキャッチフレーズがつきそうな種もいる。・・・
  豆海胆/豆海膽
殻が丸みを帯びているから、豆との名称はピッタリ。・・・
  米粒海胆 or 長豆海胆/卵豆海膽
  南豆海胆
  日本豆海胆
一方、北海沿岸域に棲む卵石海膽/Pea urchinの仲間だが、どういう加減か平たくなっているのは、・・・
  ボタン海胆/卷卵石海膽

この手の小さな五放射相称型生物は化石展示でよく見かける。見易いからであろう。
と言うことは、卵海胆や豆海胆辺りの種が、元祖ウニ族の特徴を今もしっかりと抱えていると見てよかろう。

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