表紙 目次 | 水母の話 2018年3月8日 水母全体について+淡水ヒドラ"鉢虫(=鉢クラゲ)"は3グループに整理されているが、そのうちの2グループをまとめてみた。一つは、いかにもクラゲという風情を醸し出す水水母を代表とし、色付きの赤水母を含み、超巨大な大王水母や北幽霊水母もお仲間とみなす"旗口水母"[→]。 もう一つは、備前水母を代表とし、逆水母や蛸水母という特徴的な種を含む"根口水母"[→]。 素人的に言えば、この2つの集団は、海で漂泳している、傘とひらひらする触手からなるクラゲの"真正"主流派である。つまり小型とか異型ではないクラゲということ。 クラゲとは肉食動物であるから、当然ながら餌が豊富な海域に進出するのが当たり前で、寒流系や深海に進出したのが前者で、もともとの暖かい海でノウノウとしてお気楽に様々な場所で食えそうな場所を見つけたのが後者というイメージが強い。 この主流派たる"鉢虫"の、残る一つは、代表種の名前そのものの"冠水母"グループだが、苛藻[イラモ][→]を含むなど、それなりの大きさになるとはいえ、異型臭を感じさせるタイプだ。出自的に一応は主流派に属しているといった感じを与える。この集団は、別途とりあげてみたい。 この"鉢虫"=クラゲの主流派には分派が存在する。 それが、"箱虫"と"十文字水母"。 前者は強毒性で鳴らす箱型のクラゲと言えば誰でも知るタイプだし、後者は漂流を嫌う定着性嗜好のクラゲで形が╋型とかなり異質なタイプ。 マ、主流派から叩きだされた右翼分子と左翼分子といったところ。どちらが、どうとは言わないが。 当然ながら、反主流派というか、半主流派が存在する。"ヒドロ虫"と呼ばれる集団だ。 言わば、小さなクラゲ種の寄せ集め。 ・・・と、書くと大いなる誤解を与えるかも知れない。 ここがクラゲ概念の厄介なところ。 素人からすると、学者の説明が錯綜しているようにしか聴こえない理由でもあるが、クラゲの形にならないタイプも入っているからである。 つまり、「孵化卵→プラヌラ→"ポリプ体"→エフィラ→"クラゲ体"→受精卵」という典型的ライフサイクルのうち、"クラゲ体"で分類した"ヒドロ虫"と、"ポリプ体"で分類した"ヒドロ虫"が一緒くたにされているということ。たいていは、これがクラゲの一生として学ぶから、このサイクルに合わぬタイプは例外と思ってしまうが実は逆。つまり、"クラゲ体"にならない"ヒドロ虫"つまり、"ポリプ体"だけの種など五万といる。言うまでもないが、もともと、"ヒドロ虫"とは"ポリプ体"の生物を指す言葉。当たり前と言えば当たり前の話ではあるが、素人にとっては、そんな状態で両者をゴチャ混ぜにされたのではなにがなんだかわからなくなるゼと言わざるを得ない。しかし、どうにもならないのである。 要するに、"ヒドロ虫"と名付けられた一群には、"ポリプ体"として同定された種と、"クラゲ体"として同定された種が混在していることになる。生物的には同一であるにもかかわらず、2つの種とされていてもおかしくないのが現実。 "クラゲ体"種には"ポリプ体"未発見のものはいくらでもあるが、すでに確定している"ポリプ体"の"ヒドロ虫"種に、本当に"クラゲ体"は無いと言えるのかは、素人からすれば、なんとも言い難しである。ポリプ体無しの「クラゲ体→クラゲ体」しか観察できない種であっても、特殊な条件下では、「クラゲ体→卵→ポリプ体」のプロセスが突然始まったりしかねないのが刺胞動物の特徴に思えるからだ。要するに、全身が万能細胞がらできており、なにがおきても不思議ではないのである。「クラゲ体→ポリプ体」という、前代未聞の若返り現象さえ観察されているのだから。 と言うことで、"ヒドロ虫"には、どうしても、"ポリプ体"的様相が強い集団が含まれてしまう。 「花水母」など、ヒドラ名称だらけである。と言っても、"クラゲ体"的な種も多数含まれる訳である。「軟水母」もヒドラ的様相は抜け落ちていない。「淡水水母」は、淡水棲息"クラゲ体"があるだけでなく、特徴的な"ポリプ体"の種があり、まさにヒドラ虫といったところ。 せっかくだから、ご参考に、花水母に所属する淡水棲息のヒドラ類だけ末尾に並べておこう。[↓] 尚、"ヒドロ虫"の花水母、軟水母、淡水水母以外は4グループに整理することができる。そのうち、「菅水母」は、"ポリプ体"が群生して漂泳しているタイプ。役割によっては"クラゲ体"的な形になったりはするが。 "ポリプ体"が無いのが、外洋で漂泳している「硬水母」。「剛水母」も目立たない。 残る、「アクチヌラ」だが、"ポリプ体"のヒドラでもなく、"クラゲ体"の水母でもなく、形態は違うがプラヌラの幼生成熟種的な位置付け。この"アクチヌラ体"が原初だったりすれば、ヒドロ虫、鉢虫、アクチヌラ虫が3代表になってもおかしくないが、素人からみればヒドロ虫の変形に映る。 ついでながらと言いたいところなのだが、上記の"クラゲ"以外で、必ず触れておかねばならぬ種類がある。 クラゲ本では、必ず、刺胞を持たない櫛水母も並んで掲載されている。こちらは、クラゲとは全く異なるボディプラン。触手を持つ種もあるが、写真からすると格納可能なようで、生活方針が根本的なレベルで違っているのは間違いない。 刺すクラゲは、珊瑚礁のサンゴやイソギンチャクの花虫と同類だが、櫛水母とは縁もゆかりもないのである。実際、"ヒドロ虫"の菅水母と名付けられたグループの種は、サンゴの"ポリプ体"を連結させて漂泳させたもの以外のなにものでもない。そこでの個虫は役割分担をしているから一見専門器官化しているように見えるが、どの細胞もどのような役割の細胞にもなれるのだから、分化している訳ではない。そのような生物と一緒に取り上げるのは、マンボウとナマケモノをブラブしている生物として眺めるようなものである。 この他に、クラゲと呼ばれる生物として、巻貝に分類されている「象水母」がある。刺すクラゲのどこに似ているのかわからない。 (ご注意:手元の図鑑とは分類が違うし、ソースによって名称が異なったりすることが多い。素人判断で整理したものなので、そのおつもりで。) ┼┌──ヒドロ虫/Hydrozoa ┼│┼【Leptolinae】 ┼│┼┼◆花水母[無鞘]Anthomedusae(=Athecatae or Stylasterinae) ┼│┼┼◆軟水母[有鞘]Leptomedusae (=Thecaphorae or Thecatae) ┼│┼┼◆管水母Siphonophora ┼│┼【Trachylinae】 ┼│┼┼◆アクチヌラActinulidae ┼│┼┼◆淡水水母Limnomedusae ┼│┼┼◆剛水母Narcomedusae ┼│┼┼◆硬水母Trachymedusae ┼├──ポリポディウム/Polypodiozoa ┼│ ┌┤【水母/Jellyfish/Medusozoa】 ││ ││┼┌箱虫/Box jellyfish/Cubozoa ││┼│◆立方水母(Cubomedusae) ││┼│◆Chirodropida ││┌┤ │││└十文字水母/Staurozoa │││┼◆Stalked jellyfish(Stauromedusae) │└┤ │┼└─鉢虫(Scyphozoa) │┼┼┼◆旗口水母(ミズクラゲ類) (Semaeostomeae) │┼┼┼◆根口水母(ビゼンクラゲ類) (Rhizostomeae) │┼┼┼◆冠水母(カムリクラゲ類) (Coronatae) │ ┤【刺胞動物/Cnidaria】 │ │→固着(珊瑚礁/Coral形成, 等) ├───花虫/Anthozoa …ポリプ型(珊瑚、磯巾着) │ │↓寄生虫/parasite │ミクソゾア/Myxozoa │┼┼┌軟胞子虫/Malacosporea └──┤ ┼┼┼└粘液胞子虫/Myxosporea ─【有櫛動物/Ctenophora】=【櫛水母/Comb jellies】 ┼┼┼┼無触手Nuda ┼┼┼┼◆瓜水母Beroida[↓] ┼┼┼┼有触手Tentaculata ┼┼┼┼◆帯水母Cestida ┼┼┼┼◆風船水母Cydippida ┼┼┼┼◆南冑水母Ganeshida ┼┼┼┼◆冑水母Lobata ┼┼┼┼◆櫛扁虫Platyctenida ┼┼┼┼◆仮面母Thalassocalycida ─【軟体動物/Mollusca】 ┼┼腹足/Gastropoda…"巻貝" ┼┼┼┼◆吸腔Sorbeoconcha ┼┼┼┼-Thalassocalycidae, Pterotracheidae…象水母の仲間 ─【担子菌/asidiomycota】 ┼┼真正担子菌/Homobasidiomycetes ┼┼┼┼◆木耳Auriculariales ┼┼┼┼-Auricularaceae ┼┼┼┼┼○Auriculariaキクラゲ類 ┼┼┼┼┼木クラゲ[木耳](auricula-judae) ─【藍色細菌/Cyanobacteria】 ┼┼藍色細菌/Cyanophyceae ┼┼┼┼◆念珠藻Nostocales ┼┼┼┼-Nostocaceae ┼┼┼┼┼○Nostocネンジュモ類 ┼┼┼┼┼石クラゲ or 岩木耳(commune)…陸棲シアノバクテリア ---淡水ヒドラ--- ┼┼-Hydridae ┼┼┼○Hydra・・・ヒドラ類[淡水棲"ポリプ体"] ┼┼┼┼大和ヒドラ(japonica) ┼┼┼┼姫ヒドラ(parva) ┼┼┼┼沼ヒドラ(paludicola) ┼┼┼┼乳首ヒドラ(magnipapillata)σ ┼┼┼┼柄ヒドラ(robusta)…日本列島北方 ┼┼┼┼┼┼[or Pelmatohydra robusta]σ ┼┼┼┼クロロヒドラ/Greeb hydra ┼┼┼┼┼┼(viridis or viridissima)@欧州…緑藻共生 ┼┼┼┼Brown hydra(oligactis)…水棲植物固着σ ┼┼┼┼Fresh-water polyp(vulgaris)σ σ:分譲種@国立遺伝学研究所発生遺伝研究部門ヒドラ研究グループ 上記以外のHydra:(baikalensis)(beijingensis)(canadensis)(cauliculata)(circumcincta)(daqingensis)(ethiopiae)(hadleyi)(harbinensis)(hymanae)(iheringi)(intaba)(intermedia)(javanica)(liriosoma)(madagascariensis)(magellanica)(mariana)(minima)(mohensis)(oregona)(oxycnida)(paranensis)(plagiodesmica)(polymorpha)(rutgersensis)(salmacidis)(shenzhensis)(sinensis)(thomseni)(umfula)(utahensis)(zeylandica)(zhujiangensis) 「魚」の目次へ>>> トップ頁へ>>> (C) 2018 RandDManagement.com |