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2004.4.23
 
 


日本酒ラベルの不思議…

 今のままなら、日本酒消費はさらに低迷すると思う。
 といっても、味の問題や、食生活の変化で日本酒がマイナーになるという意味ではない。
 本当のことを伝えず、イメージだけで売ろうとする限り、消費者離れは加速する、という話しである。
 日本酒の販売促進キャンペーンや、新商品創出活動を活発化すれば、するほど、消費者が離れていくと思う。

 焼酎ブームを見れば、わかりそうなものだ。

 乙類焼酎は、見方によっては、地場イメージでヒットしているように見える。しかし、本質はイメージではない。
 原料や蒸留工場の違いで、酒の風味が全く異なることが消費者に知られているから、イメージが仕様として認知されているのだ。

 一方、日本酒が売り込んでいる地場イメージは、このようなものとは違う。アパレルのブランドと同じで、コンセプトを示すものである。アパレルなら、コンセプトがすぐに伝わるが、酒ではせいぜいが壜のデザインと名前である。つまり、日本酒は、商品の特徴をほとんど伝えることをしない、イメージ商品化の道を歩んでいるのだ。
 これで、日本酒離れがおきなかったら不思議である。

 ・・・と語ると、怒る人がいる。
 たいていは、蒸留酒と比較するな、と語る。日本酒は、ワインのようなものだ、と主張したいのである。

 この発想に一番の問題がある。地場品であるワインとは全く違う。
  → 「日本酒の没落」 (2003年9月22日)

 ワインは原則として、地場品である。ブレンドしたところで、あくまでも地場品が基調だ。従って、ブランドで違いがでるのは、消費者にとっては自明である。従って、ワイナリー表示は意味がある。もっとも、ワイナリーだけで味は推定できないから、風味を判定する専門家の意見が珍重されるのは当然のことだ。
 ところが、日本酒はワインとは違うのである。地場品の特徴をウリにできる商品は極く一部なのである。専門家の酒蔵評価に意味があるかは疑問である。
  → 「酒造りのスキルとは」 (2003年11月9日)

 地場の特徴がないにもかかわらず、相変わらず地場イメージで売ろうとする。どう考えても、無理筋である。

 このような場合、最初にすべきことは、商品仕様をはっきり示すことである。グレードがわかるように工夫すべきだろう。
 ところが、グレード感無きまま、生酒、生貯蔵酒、火入れ貯蔵酒、長期貯蔵酒、樽酒、・・・と、これでもかという程、ジャンルを拡大する。消費者から見れば訳のわからぬ商品である。

 日本酒業界は一過性のグレード感で勝負し続けているのだ。これでは、長続きする筈があるまい。
 その最たるものが、大吟醸といったラベル表示だ。
消費者がどうやらわかる日本酒のラベル分類
精米度
〜50% 51〜60% 61〜70% 73〜76%
純米型 純米大吟醸 純米吟醸 純米酒
アルコール添加型
(アルコールl/米t)
大吟醸
(50〜60 稀:30)
吟醸
(50〜60 稀:30)

特別本醸造
(120)
本醸造
(120)
普通の清酒
(120〜280)

3倍モノ
(720)

 この表示は、使用している米の精米度を示すだけにすぎない。ところが、同じ表示でも、様々な仕様が混在している。これでグレード感が生まれる筈がない。ほとんど意味がなくなった表示と言えよう。

 例えば、アルコールが添加されている大吟醸がある。
 (添加アルコールの原料は、普通はさとうきびのようだが、コーンや麦も使われている。なかには、わざわざ米原料のアルコールを使う場合もあるそうだ。ブレンドによる味調整で商品価値を高める商品なのだ。)
 ところが、このようなブレンド品が、地場の酒蔵の特徴を活かした商品として高額で売られる。なかには、吟醸酒でも、風味つけに添加剤が加わっている商品もある。
 ワインでこのような販売ができるだろうか?

 そもそもが、日本酒は商品仕様容が錯綜している。普通なら、如何にわかり易く伝えるべきか、熟考すると思うのだが、この業界は逆である。理由はわからないが、素人にはわかりにくく表示したいのだろう。
 時代の流れに棹差すことは、伝統に生きることとは違うのだが。


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