↑ トップ頁へ

2002.11.9
 
 


CNC業界における胎動…

 CNC(Computerlized Numerical Control)業界に変化の兆しが見える。

 この業界は、長い間、ファナックが圧倒的な競争力を誇ってきた。ソフト側が統一され、工作機械メーカーはハード開発に注力可能となり、高品質・高精度な製品で世界を席巻したのである。メインユーザーの日本の自動車産業は強いから、今後もこの状況が続くと見る人がほとんどだ。
 ところが、90年代後半、変化の兆しが現われた。

 一つ目は、生命線の工作精度競争である。2000年頃から、海外機械メーカーも先端数値を実現し始めた。制御技術で、日本との差がなくなってきたのである。日本国内市場が低迷し、欧州市場が伸びたため、海外勢も地力をつけてきたといえよう。

 2つ目はトップ企業数社と専門分野特化企業群への2極分化ががさらに進んだ点だ。統合技術を持つトップ企業が業界を束ねる傾向がはっきりしてきた。当然、トップ企業間の競争激化を招く。
 例えば、シーメンスは、ファナック(GEファナック)、三菱電機との競争を、イベント展示にも持ち込んでいる。 (http://www.sea.siemens.com/machine/imts_report/)

 この状況は、生産工程全自動化の本格的競争が始まったと見ることもできる。
 工作機械稼動システム提供業から、生産全体の最適化ソリューション提供ビジネスへの変身競争の幕開けだ。業界プラットフォームを奪い合うことになる。勝つためには、CNCでの優位が絶対要件になる。当然、熾烈な競争になる。
 ユーザー側も、間違ったプラットフォームを採用すれば、優位性を失いかねない。モノ作り業界全体の競争力を左右する大競争開始だ。

 実際、生産工程全自動化のインパクトは極めて大きい。三菱電機の「FA統合ソリューション」導入事例では、下記のように生産性が一気に向上する。(http://wwwf1.mitsubishielectric.co.jp/e-factory/ja/cfm/concept/new/gaiyou02.htm) 投資効率の問題があるから、すぐには動かないが、モノつくりが大きく変わるのは間違いない。
  ・ 加工時間60%短縮
  ・ 工期40%短縮
  ・ 設備稼動率1.9倍

 こうした仕組みができれば、提携企業や協力工場もネットワークで繋がることになる。ネットワークに入れない企業は淘汰される。業界は一気に変貌する。
 この第一歩は、遠隔故障診断サービス(定期監視、アラーム通知、バックアップ)になろう。少額の投資で、実稼動時間が大幅に向上するからだ。

 こうしたソフト技術組み込みと、将来のプラットフォーム構想に合わせたインターフェース設計が重要になってきた。ところが、こうした技術開発には、体質転換が不可欠となる。個別企業対応型の技術開発から、様々な企業を巻き込んだ開発に変える必要があるからだ。
 これができないと、ユーザーも含めた機械産業全体の地盤沈下を招くことになりかねない。

     過去記載の
      ・「製造用機械産業の研究開発(1)…」へ
      ・「製造用機械産業の研究開発(2)…」へ


 技術力検証の目次へ>>>     トップ頁へ>>>
 
    (C) 1999-2004 RandDManagement.com