[→本シリーズ−INDEX] ■■■ 日本の基底文化を考える [2018.5.31] ■■■ クモの語源 中国に於ける蜘蛛の漢字表記については調べた。[→] 色々な表記があったようだが、結局のところ、知性があって、虫を誅するという意味から作られた漢字が定番となったようである。 その結果、生物名称として、その漢字の読みたる"「知」+「朱」"(zhīzhū)が当てられ、もともとの呼び名は抹消されたようだ。 急所に咬み付いて、朱の血を啜るという習性を表現する上では、これ以上素晴らしい表現はなかろうということなのだろう。 ちなみに、漢語ママが多い周辺国は、"「知」+「朱」"発音は避けているようだ。・・・ ベトナム Một con nhện 朝鮮 (geomi) 東南アジアでの呼び方を見てもマチマチ。 中華帝国が共通語としての漢字をそのまま読ませる方式にしたのは当然か。 <東南アジア> タイ (mængmum) クメール (satv pingpeang) ミャンマー (p ng kuu) インドネシア Seekor laba-laba 尚、方言は以下のようになっている。 標準 クモ 日本海側北方 クボ 太平洋側南方 グモ 南九州 コブ 南島 クブ さて、日本語の"くも"だが、その語源は様々な説が提起されているようだ。解説を読んでみると、どれも帯に短し襷に長しといった状況。 簡単に眺めておこう。・・・ ●朝鮮語 生活上重要でもなく、朝鮮半島で特別な扱いを受けていないモノの名称が日本語化される筈がなかろう。半島南部には、百済地域の一部しか稲作可能域は無く、北を除けば、生産力が極めて低い土地柄。そんな土着文化に魅力がある訳がないからだ。中華帝国文化の通り道以外の利用価値は低かったということ。 (古代、半島支配層の読み書きはもちろんだが、話言葉も中華帝国のママ言語だったのは間違いあるまい。ゴチャまぜ乱立OKの日本語とは状況が全く違う。朝鮮語とは被支配者層の話言葉でしかなかった。そんな時代であれば、国家の壁無用の漁民用語、あるいは、倭国への貴族層難民がもたらした特別産品語以外の言葉が日本列島に移入することは考えにくい。) ●巣組虫・巣組守 巣を"組む"という表現は一般的とは思えない。 "守"が当てられる可能性は高そうだが、家守や井守でも"モリ"と呼んでおり、モリにしない理由が思いつかぬし、"ク"を棲む領域表現とするなら、それは何かということになる。 ●籠 必ずしも、籠るタイプだけでもないから、無理があろう。 ●隈・雲 雲と同様に、隈から現れるという語源説だが、姿が雲と似ているならありえようが、どこにもそんな点は見つからない。納得し難い。 ●噛む 音的には、無理筋の気がするが、古代人感覚からすればあり得そう。 古代日本の農耕民は蜘蛛が益虫であることは重々承知していた筈だからだ。 中国の"「知」+「朱」"と似たセンスで眺めていた訳だ。しかも、書き物を大切にしていた上流階級にとっても不可欠なガード役だった。つまり、蜘蛛は、害虫を"噛んで"殺してくれる大切な生物として位置づけられていたということ。 西洋では、もっぱら、糸を紡ぐ虫という見方であり、そこらは全く違う。絹や綿を持たなかった地域としては、素敵な糸を垂涎の面持ちて見入っていたのだと思われる。 <アングロサクソン-プロテスタントの影響大> 英 Spider 独 Spinne 蘭 Spin スウェーデン Spindel <ラテン-カソリックの影響大> 仏 Araignée 西 Arańa ポルトガル Aranha 羅 Aranea 希 Αράχνη(aráchni) 伊 Ragno <スラブ-正教の影響大> マケドニア Пајак(Pajak) クロアチア Pauk スロベニア Pajek ウクライナ Павук(Pavuk) 露 Паук(Pauk) ポーランド Pająk この流れは、中央アジアには入らなかったようである。糸と言えば四川辺りが発祥の蚕だったから、ピンとこなかったかも。 アラビア (eankabut) カザフ Өрмекші(örmekşi) タジク Тортанак(tortanak) キルギス жөргөмуш(jörgömuş) モンゴル Аалз(aalz) 本シリーズ−INDEX> 超日本語大研究−INDEX> 表紙> (C) 2018 RandDManagement.com |