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■■■ 今昔物語集の由来 [2020.1.30] ■■■
[214] 黄金の毘沙門天
すでに、毘沙門天はとりあげてはいる。
  【本朝世俗部】巻十七本朝 付仏法(地蔵菩薩霊験譚+諸菩薩/諸天霊験譚)
  [巻十七#42]於但馬国古寺毘沙門伏牛頭鬼助僧語 [→牛鬼]
  [巻十七#43]籠鞍馬寺遁羅刹鬼難僧語 [→羅刹鬼]

しかし、まとめて眺める気にはならなかった。鞍馬寺の本尊毘沙門天の霊験は、結構色々あって、有名だったのではないかと思うが、「今昔物語集」所収の話は一風変わっているからである。・・・
  [巻十七#44]僧依毘沙門助令産金得便語
 極めて貧しい比叡山の修行僧がいたが、
 パトロンもいないので、山から京に下り
 雲林院
@紫野に住した。 (雲林院:[→迎講創始者]
 父母や関係する人もいないので、
 鞍馬参詣を行っていた。
 9月20日頃だったが、鞍馬参詣を終え、
 帰路の出雲路で日が暮れてしまった。


ここからが実に怪しい。

16〜17才の美しい童というか、要するに、"稚児的"少年に出会うのである。
 色白く、顔福らかにて愛敬付き、気高かき、
ということで嬉しくなって、房に連れて行き、物語などして一晩過ごす仲に。少年愛に目覚めてしまったと見てよかろう。
翌朝、隣の房の僧が見て褒めるほどの可愛い美少年だったようで、以後、隠すように大事に。

ここで終わればよいが、そうはならない。

この童が女性であることに気付いてしまう。
母以外の女性の肌に触れたこともなかったが、どうにもならず、睦んでしまい、ついには妊娠と、行きつくところまで行ってしまう。
童は、僧に、大騒ぎするなと言い、壺屋に畳を敷かせ出産。すると、赤ん坊を残して消え去ってしまった。ところが、柔らかな衣に包まれていたのは赤ん坊ではなく石。よく見るとそれは黄金だったというのである。

僧は童の面影を抱いたままであり、恋しくは思ったものの「鞍馬の毘沙門天が謀ったお助け事。」と考えた。そこで、その黄金を少しずつ破っては売り、裕福に過ごすことができた、ということでお話は終わる。

ビックリさせられるのは、このお話が、黄金/キガネを、子金/コガネと言うようになった由来とされていること。冗談とも思えない書き方で。
毘沙門天の出自は財宝神だから、突拍子もない見方とは言えないものの。
う〜む。

どこからこのような話を見つけてきたのかわからぬが、「今昔物語集」編纂者が仕掛けてみたかったのだろう。

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