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技術マネジメント論 [4]  2006年8月1日
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未来を切り拓く時代…

 前回は、10年毎の社会の大きな変化の話をした。
   →  技術マネジメント論 [3]  「知恵で競争する時代」  (2006年7月26日)

 70年代は産業構造が安定していた。
 ところが、80年代に入ると、発展のスピードが加速してくる。
 そして、グローバル化が始まり、産業構造が動揺し始めたのである。

 その結果、企業経営は変わらざるを得なくなった訳だ。
 安定した状況で、将来を考えながら、タイミングを見計らって投資するだけでよかったが、そんなことを続けていると、足をすくわれかねないからだ。どのように社会のなかで生き抜いていくか、どのように社会を変えるか、といった「思想」なくしては、どうやって生き抜くべきか方針も定まらなくなってきたとも言えよう。
 知恵を駆使するしかない、ということである。

 こうした10年毎の変化を頭に入れれば、将来に向けた研究開発のスタイルが大きく変わった理由が納得できると思う。
 スローガンの違いで見るとわかり易い。

 70年代は、先が読めた。
 先進的な研究を進める機関にヒヤリングし、識者/権威者の意見を集めれば、だいたいのことはわかった。
 真似と揶揄されようが、バスに乗り遅れなければ、発展は約束されたも同然だった。他社との同質な競争で十分だったのである。

 80年代に入り、変化のスピードが増し、波に乗ることがさらに重要になってきた。
 皆の動きについていく体質はさらに強まる。この流れから外れた企業は成長スピードでは敗者にならざるを得なかった。

 これが、90年代に一変する。流れが変わったからである。産業構造安定の時代は終わった。
 金融では、インフレからデフレに変わった。俗に言う、イケイケどんどん型が破綻した訳だ。
 変化は抜本的なものだし、その動きも速いから、迅速に対応しないと沈没しかねない。
 計画を作成したら、後は粛々と進めるだけというやり方から、迅速な変身が要求されることになる。
 と言っても、変身を真似していたのでは間に合わない。自ら考えて動くしかない。従って、戦略発想が必要になってきた訳である。

 しかし、環境変化に、いつまでも受身で動いていたのでは、とても勝てる気がしない。そうなると、自ら挑戦するしかあるまい。リスクは高いが、それ以外の道はないということである。
 これが21世紀の流れと言えよう。
 換言すれば、本格的なイノベーション競争が始まったということに他ならない。

 このように描くと、10年毎にマネジメントの焦点が変化してきており、方針が大きく変わるのも当然ということがわかろう。

 こうした、全体の流れを、技術マネジメント上でとらえかえせば、“先が読める時代”が終わったということになる。

 但し、“先が読める時代”から、“先は読めない時代”になったとの表現は避けた方がよかろう。
 と言うのは、全く読めない訳ではないからだ。様々な読みが存在していても、どうなるか意見を聴取すれば、だいたい当たった時代は終わったというにすぎない。

 要するに、調べて“先を読む”のではなく、自らの知恵で“先を描く”時代になったのである。
 企業経営の立場からみれば、自らのビジネス展開で、どのように社会を変えるかという議論が重要になってきたということに他ならない。

  →続く 技術マネジメント論 [5]  (2006年8月2日予定)


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