トップ頁へ>>>
技術マネジメント論 [5]  2006年8月2日
「研究開発」の目次へ>>>
 


ナンバー1を狙う時代…

 前回は、自らの知恵で“先を描く”時代になったとの話をした。
   →  技術マネジメント論 [4]  「未来を切り拓く時代」  (2006年8月1日)

 簡単に言えば、以下のようになろう。
 先が読めた70年代。
 変化のスピードが増した80年代。
 産業構造が動揺し始めた90年代。
 そして、自ら新しいビジネス構造を考え出す21世紀。

 それぞれの状況を考えれば、課題は自然に見えてくる。

 先ずは、70年代。
 この時代は、真面目にモノ作りに励んでいれば、生きていけた。競争力をあげるためには、QCDの質を高めるだけで十分だったのである。
 結果的には、この力の差が収益力の大きな差に繋がった。QCDこそ、まさに最重要課題だったと言えよう。
 そして、将来に備え、同時並行的に、成長分野への足がかりも作っていた訳である。

 次が、80年代。
 変化のスピードが加速してきたから、モノ作りのQCDだけでなく、モノそのものを開発するプロセスが重要になってきた。QCDもさることながら、開発力強化なくしては勝てないとの認識が広まった。

 要するに、的確な新モデルを先に上市できるかで、収益が左右されるようになったから、開発スピードの向上に向けた取り組みが進んだ。
 一方、次世代を支える事業創出も必要と認識されたから、革新技術に取り組むことになった。後発で、QCDの力量で競争するスタイルでは勝てない時代に入ってきたから、先行するために、先端技術に早くから手を染める必要があると考えた訳である。

 そして、激動の90年代に突入。
 垣根が壊れ始め、産業構造が動揺し始めたのである。収益源が変わることも多く、産業構造の変化に合わせて、競争力の源泉を押さえるために柔軟に動くことが必要になってきた。
 特に、バリューチェーン上の要所を他企業に牛耳られると、水呑百姓に落としこめられかねないから、変化の兆候を感じたら迅速に対処せざるを得なくなった。ともかく、何時でもすぐに変身するつもりで、動いているしかないのである。力が発揮できそうなら、すかさずそこに入り込むしかない。しいて言えば、染み出し型の展開ということになろうか。

 要するに、弱い部分や、効率が悪い部分は、できる限り切捨てながら、競争力を強化しないと低収益企業に落ち込みかねなくなったのである。
 このことは、将来への布石の仕方も変えることになる。革新技術に唾をつけるといったやり方は無くなる。
 競争力が生まれるような形で、次世代事業の創出が図られるようになったのである。
 自社が得意とする技術を活かせるような展開を追求することになる。

 それでは、21世紀はどうなるのか。
 最大の課題は、ナンバー1になることと言えよう。それ以外の地位は不安定そのものである。
 間違ってはいけないが、産業構造が安定していた時代の話ではない。当該産業のシェア1位がナンバー1とは限らないのである。コストリーダーかもしれないし、限られた顧客に関しては、対応力ナンバー1かもしれない。
 どのような視点でもかまわないが、他社を凌駕できる力がなければ勝負にならないのである。その力を武器にして、高収益事業にできる方策を磨くことが最重要になってきたのである。

 将来の事業についても、同じ発想で考えることになる。
 何を武器にして、どのようなビジネス構造にすると、力が発揮できるか、構想を練ることが肝要なのだ。

 技術が強いとか、類稀なるQCDの力を保有するといった、強みがあるというだけでは、勝てるかはよくわからない。こうした強みが、現実の事業で競争力発揮の武器になる根拠がはっきりと語れないなら、意味がないからだ。
 技術が弱かったり、QCDでも今一歩という状態でも、他社には無い能力があるなら、これを武器にして勝てる方法があるかもしれない、ということである。
 つまり、勝てる武器がはっきりしていない新事業は即刻中止の時代に突入したということである。

 繰り返すが、21世紀は、知恵を駆使する経営に変わらざるを得ないのである。

  →続く 技術マネジメント論 [6]  (2006年8月3日予定)


 「研究開発」の目次へ>>>     トップ頁へ>>>
 
    (C) 1999-2006 RandDManagement.com