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技術マネジメント論 [12]  2006年9月5日
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緊張感が知恵を生む…

 企業合併・買収の話で、一寸、寄り道をしてしまった。
   →  技術マネジメント論 [11]  「合併・買収の真の“嬉しさ”」  (2006年8月29日)

 折角だから、言いかったことをまとめておこう。

 企業合併・買収をネガティブに見ている人は、概して緊張感を欠いている。
 今のままでは悪化するとわかっていながら、突破策は提起できない。できることと言えば、皆で頑張ろうと声をかけ続け、今の仕事に精力を傾けるだけ。そして、リスクが高そうな方針は、どうせマイナスと見なして検討を避け続ける。外部から見れば、危機感ゼロ。

 一方、ポジティブに見る人は、このまま同じことを続けていても、じり貧だから、企業合併・買収も一案と語る。しかし、これ以外に活路は無く、不退転の決意で進もうと主張している訳ではない。

 一見、両者の発想は大きく違うように見えるが、たいした差は無い。考えに考え抜いて、困難でも、この道しかあるまいと腹をくくって動いている訳ではないのだ。

 実は、ここが一番の問題なのだ。

 ところが、この説明が難しい。

 当事者は、どのようなメリットやデメリットがあるか、それこそ徹夜で徹底的に分析している。従って、“検討を避け続けている”とか、“腹をくくって動いている訳ではない”などと言われると、実態を知らない外部の輩のけしからん発言と考えてしまうからである。

 そんなことを言っている訳ではないのだ。
 いくら本気になって、様々な観点から分析を進めたところで、そんなやり方で対策を考えている限り、成果は望み薄と言っているのだ。
 この真意はなかなか伝わらない。全力投球していれば、そのうち活路は開けると考えてしまうのかも知れぬ。

 この姿勢のどこが問題かといえば、“徹底的な検討”から脱せ無い点。緻密な推論以上のことはできないのだ。
 「推論」といえば聞こえはよいが、やっていることは「人真似」でしかない。様々な例を調べ、どうして成功したのか調べ、その教訓を生かすだけのこと。色々調べ、ベストな方法を組み合わせて、そのストーリーの推敲に神経を使っているだけのこと。

 そんなやり方で、解が見つかるレベルの問題ではないのである。
 もしその程度で成果が得られるなら、とうの昔に動いていておかしくない。今迄怠慢だったというに過ぎない。
 企業合併・買収の話とは、たいていは、怠慢のツケということである。

 それはさておき、簡単に解が見つかりそうもない時に、どうすべきか考えて欲しい。

 先ずは、真似では勝てないことを、認識する必要があろう。良い点を真似するのは悪いことではないが、それだけでは何時までも後追いである。
 そんなことで生きていける時代は終わったのである。

 事例から学ぶべきは、どうして素晴らしい方策を考え付いたのか、そして、それを、どうして上手く進めることができたのか、である。
 但し、手法をそのまま真似たのでは、いつまでたっても、後追いだ。これでは生き残りも難しいかも知れぬ。従って、とのようにして知恵を生み出したのかを知り、それを参考にして、自社で知恵を生み出す方策を考えればよいのである。
 知恵があれば、誰もやっていなかった方策に気付く可能性がある。もし成功すれば、一躍先進企業となれるではないか。

 要するに、生き残るためには、何をすべきか、本質的な問題とは何なのか、深く考えるということである。
 これは、簡単なことではない。答えがすぐに出る訳がないし、際限なき議論に落ち込むことになるかもしれないからだ。

 しかし、この答えが出なければ、生き残れないのである。
 このように考えるかどうかが、分水嶺なのである。答えがでるかわからないが、懸命に考えるしかないのだ。しかも、残り時間は少ない。答えが出なければ、自滅。
 緊張感が満ち溢れてこない筈がなかろう。
 この緊張感が重要なのである。

 技術マネジメントの真髄は、こうした緊張化を生み出すこと、と言っても過言ではない。
 この緊張感こそ、知恵を生み出す前提条件だからである。

  →続く 技術マネジメント論 [13]  (2006年9月12日予定)


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