古事記の「神生み」は熟考すべし 【第１期】 [→] ・・・日本列島に未だヒトの影無し。 しかしながら、胎動あり。 「天地初発之時」「別神五柱」「成りまする。」 【第２期】 [→] ・・・ついに、日本列島にヒトの営み始まる。 海人そこかしこ渡来。 海人先端文化勢力も本格的進出決定。 「天ッ神」、「神代七代」目に「国生み」を命ず。 先ずは、瀬戸内海の小さな孤島を拠点化。 「天ノ沼矛」で「淤能碁呂島」。 「八尋殿」と「天之御柱を見立て」。 【第３期】 [→] ・・・日本列島に海人文化圏ができあがる。 当初、進出で、様々な文化的齟齬も生じた。 「水蛭子」「葦船で流しすてつ。」 瀬戸内から日本側へと影響力を広げた。 先進勢力主導で交流が進み、領域が定まった。 「大八島國と謂う。」 さて、ここから【第４期】だが、社会が徐々に発展した時期であり、時間的にはかなり長いと思われる。 要するに、「既に國を生み竟へて、更に神を生みます。」に当たる箇所である。様々な神の名称が延々と紹介されるので、どうしても軽視しがちだが、古事記を歴史書として読むなら、どのように社会が発展してきたのか太安万侶の見立てをじっくり眺めるべきだと思う。社会生活に無関係に自然景観の「神」が登場することは無いということ。登場の順番はおそらく、社会の発展の筋道を示しているのだと思う。 ○先ずは住居建造で大きな進歩があった。 大事忍男ノ神(大いなる事業)、石土毘古ノ神(住居の土台)、石巣比賣ノ神(土台の石砂)、大戸日別ノ神(出入口の扉)、天之吹男ノ神(屋根葺)、大屋毘古ノ神(大屋根)、 ○同時に、海の経済も大いに発展した。 風木津別之忍男ノ神(風と木)、大綿津見ノ神(大海)、速秋津日子ノ神/速秋津比賣ノ神(河口、あるいは、瀬や湊) ○河や海に関係する水文化としての社会的規範も次第にできあがる。 沫那藝ノ神/沫那美ノ神(泡の波/凪)、頬那藝ノ神/頬那美ノ神(水面の波/凪)、天之水分ノ神/國之水分ノ神(水の配分)、天之久比奢母ノ神/國之久比奢母ノ神(柄杓で小口配分) ○山野生活圏が組み込まれる。 志那都比古ノ神(風)、久久能智ノ神(木)、大山津見ノ神(山)、鹿屋野比賣ノ神/野椎ノ神(野：屋根葺用萱) ○山野生活文化も高度化。 天之狭土ノ神/國之狭土ノ神、天之狭霧ノ神/國之狭霧ノ神、天之闇戸ノ神/國之闇戸ノ神、大戸惑子ノ神/大戸惑女ノ神 ○ 水上交通技術も進展。 鳥之石楠船ノ神/天ノ鳥船(後に高天原に伝授) ○食文化が大きく変わる。 大宜都比賣ノ神(食：粟国名と同じ。後に高天原でも活動。) ○火力を用いた生産技術が広がる。 火之夜藝速男ノ神/火之炫毘古ノ神/火之迦具土ノ神 ○転換期 火力の応用は、生活の質を高めたが、それが社会の不安定化を招いたのは間違いない。生産性を桁違いに高めたため、階層構造が揺らいだし、威力ある武器の大量生産も可能になったため、戦乱による甚大な被害も発生するようになったからである。 それが、イザナミノミコトの「病臥」として描かれる訳だ。 ○イノベーション発生 注目すべきは、嘔吐物が鉱山の産出物に摸されること。「金山毘古ノ神/金山比賣ノ神」である。ところが、神は"成る"のではなく、本来は母体からの筈である"生りませる"神なのだ。一方、粘土を模した屎や液体を示す尿の、「波邇夜須毘古ノ神/波邇夜須比賣ノ神」と「彌都波能賣ノ神及び和久産巣毘ノ神」は理屈通り"成りませる"である。鉱山からの金属生産が歴史を変えるような出来事だったと評価していると見るのが自然だろう。・・・些細なことに見えるかも知れぬが、こうしたの見方、太安万侶史観を読み取る上では鍵を握っているかも。 そして、イザナミノミコトは「神避りましぬ。」 しかし、その最後は、力を喪失するということではなく、若々しい霊力を発揮し次世代を作る土台を用意したということのようだ。和久産巣毘ノ神の御子は「豊宇気比賣ノ神」だというのだから。 (使用テキスト) 旧版岩波文庫 校注:幸田成友 1951---底本は「古訓古事記」(本居宣長) 新編日本古典文学全集 小学館 校注:山口佳紀/神野志隆光 1997 古事記を読んで－INDEX >>> HOME＞＞＞ (C) 2014 RandDManagement.com |