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■■■ 「古事記」解釈 [2021.2.25] ■■■
[55] 高速船"枯野"の記載遊び
16代 大雀命仁徳天皇の箇所の構成を眺めてみたが📖一応は善政天皇としてはいるものの、鴈産卵譚という遊びが見られる。"聖帝"としたから、アハハもよいだろうということか。
 ①【小見出し】【系譜】 ③④【事績】【祭祀】【"善政"】
 ⑦〜⑩【大后"嫉妬"譚】
   (突然話題転換)
 ⑪【鴈産卵譚(遊興@女嶋)📖 鴈産卵の戯歌も収載
 ⑫【高木枯野船譚】
 ⑬【クロージング】

この見方だと、枯野船のお話も半分冗談として読んだ方がよさそう。ただ、息抜きコラムとして入れ込む筈もないから、鴈産卵譚と同じように、この時代の特徴を示す話だろう。もともと、直接的に喋ってはならぬ情報を、暗喩的に伝承していた話を取り込んだと見てよいだろう。

ここでは、そんな目線で枯野船を検討してみたい。

先ずは確認だが、このような高速船が存在することはありえない。
  📖葦船・鳥船・石船・楠船記載の意味

それに、いかに高台に生える巨大な高木であろうが、その陰が本州から淡路島に届くこともあり得ない。
しかし、当時の人々からすれば、この天皇代は神話の時代との認識は無いから、これらはなんらかの情報を伝えるための誇張表現であるとして聞いていたに違いない。しかも、口誦伝承であるから、耳にしてから考えるような込み入った高度な比喩であるとは考えられないから、すぐにピンとくる内容なのだ。ただ、現代人の感性ではナンノこっちゃ、難波の話はさっぱりわからぬとなるだけのこと。

 その巨木伝承はこのような記載。
 免寸河の西に超高木有り。
 その陰は、
  朝日は淡道嶋に至り
  夕日は高安山を越す。
 "そんな訳で"、この樹木から船を作った。

聞きなれぬし、見掛けそうに無い表記の河名だ。どのような考証か調べる気力は持ち合わせないが、免(=免[メン]:まぬがれる)寸という地名なのであろう。しかし、書籍を見ると、兔(=兎:うさぎ)となっている。素人からすれば、大いに気になるところだが、理由はわからない。
ただ、兔寸とすれば、地名については出典が辿れる。「播磨国風土記」讃容郡中川里の地名譚のなかに、話の筋とは無関係に、唐突にも、意味不明な話が記載されているが、そこに地名として兔寸村が出てくるからだ。・・・
天智天皇代、仲川里に住む孝昭天皇子孫が河内国兔寸村の人から賷の劔を買い家が滅亡したとの話。

この地が該当するとすれば、和泉大鳥/高石富木。ここには、殿来連の社とされる等乃伎神社@和泉大鳥/高石取石(富木)(御祭神:天児屋根命)が存在している。古くから中臣の高木神系刀剣神が祀られていたのだろうか。

一方、高安山は地元では眺望で知られている山[488m]。八尾服部川と生駒平群久安寺の境に在る。
注目すべきは、「続日本紀」和銅5年正月の"廃河内国高安烽"との記載。時代と地勢から見て、廃止理由は自明。高安烽⇔飛鳥地域は不要となり、生駒山高見烽⇔平城京春日烽に代替されたから。
高安山とは、警備用通信システムの拠点だったことがわかる。仁徳天皇代は、あくまでも難波宮警備用だから、大阪湾の広域警備通信システムと繋がっていたと考えるのが自然であろう。
つまり、淡路に影が伸びるとは、そこと通信していたことを意味していると考えるべきだろう。
当然ながら、播磨や吉備辺りにも拠点があった筈。それこそ、そこから島々や安芸・長門を経由し、対馬・壱岐・大宰府のシステムと繋がっていた可能性さえ感じさせる。

そうなれば、この話はえらくわかりやすい。

高安山から、免寸にある高木を目印として大阪湾方向を眺めれば、海上かなたの淡路島南東部が見える筈で、そこに烽が設置されていたことを意味していそう。

と言っても、そこらに"枯野"で運んだとされている寒泉がある訳ではない。水を汲んだ地は比定されており、妙見山湧水地"御井の清水"@佐野小井。等乃伎神社からだと西方に当たる地。

・・・こんなところで当たらずしも遠からずでは。もっとも、免寸という地名については、もう少し考える必要はありそうだ。その名称が、船材にピッタリとみなしているのだから。
一応、殿来という言葉が、海上搬送イメージに合うということで、〆ておくことにしたい。

と言いながら、末尾に一言追加。この伝承は扶桑樹と絡んでいる可能性もあろう。国生みの真っ先にあがる淡路島が関係しているからである。
そこらを、瀬戸海誕生という地質学的年代を示唆するような叙事詩と見るなら、大阪地区の巨木譚であるから、そういった時代のトレース的な記憶を反映していてもおかしくない。
【追記】大阪付近では約70万年前に消滅したと見られている、樹高30mに達するメタセコイア/曙杉は日本列島では各地で出土する化石種だが、現存種[@湖北省利川市]である。

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